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CC110で出た白黒アンソロ「君がために猫が鳴く!2」に寄稿したSSです。トウマ×キュウマ

湯屋にて


キュウマが都に戻った日。
湯屋の奥の間で互いの情報を交換したあとで、はらりと開いた扇で口元を隠したトウマが小さく囁いた。
「ところで。時間はあるのですか?」
その一言で全てを察するキュウマとフウチ。

「すまない、フウチ」
「わかってるよ、相棒」
身軽な動作で器用に襖を開けたフウチが部屋を出て行く。
「まずは、旅の疲れを癒やしてきたらどうですか?この奥に、一人用の湯船がありますから」
この奥の間は二間続き。トウマに誘われて奥の部屋に入ると、そこには既に褥が用意されており、なるほど言われたとおり、露天風呂があった。

「二人用、の間違いじゃないのか?」
「おや、一緒に入りたいんですか?」
「…あとで、考える」
一緒に入りたがるのはいつもお前の方だろうがと、浮かんだ言葉を飲み込んでキュウマは脱衣所に入った。禊は欠かさないようにしているけれど、温かい風呂に入るのは実際久しぶりだった。こんなこと思っている場合ではないことは重々承知の上だが、それでも嬉しいものは嬉しい。

温かい湯は、緊張感を緩和させてくれる。
赤火を追う身、かつて守れなかった自分の里の代わりに、赤火が奪おうとしているものを守る身。
ふうと、ひとつ大きく息をこぼして、長湯はよくないと思い直した。うっかり目的を忘れてしまいそうになる。

そう、今日だけは特別と、言い聞かせていなければ、トウマの誘いにのったりはしない。事実明日の大晦日は朝から予定が詰まっている。
わかっていて、1日前のこの日に、都に着くよう日程を調整したのは自分だったが。
わざわざ着る意味があるのかどうか、甚だ疑問だが、用意されていた白い湯着を身につけ、キュウマは褥が用意された部屋へ向かう。なにやら難しい表情で、書き物をしていたトウマが驚いて顔を上げた。

「忙しいんだな、当主様は」
「年の瀬ですからね」
手早く、トウマが折り畳んだ紙は、蝶の形に変わり、ひらひらと飛んで、空気に溶けるように消えた。

「だったら帰ろうか?」
「それとこれは別です」
その言葉通りと言うべきなんだろうか。トウマの長い髪はすでに邪魔にならないように結ってあったし、袍や冠も外してあって、これからなにをするつもりなのか、言葉を紡ぐ必要性を感じない。

ぽんぽんと自身の隣の床を叩くトウマに黙って従うとすうっと頬を撫でられて、唇が重ねられた。
「もう少し温まってくれば良かったのでは?風呂上がりとは思えませんよ」
確かに、風呂に入っていたはずのキュウマの頬よりも、トウマの手のひらの方が温かかった。

「どうせ今から汗をかくんだ、構わないだろう?」
「…これは、嬉しいことを言ってくれますね」
少しだけ。予想外だったとでも言いたげな表情を見せたトウマだったが、直ぐに口許に微笑をたたえ、再び口づけを求めてくる。今度は深く、開いたキュウマの唇の間から熱い舌が入ってきて、ねっとりと絡まった。

「んっ…んん、っ」
いつからこんなことをするようになったのか、もう 覚えていない。ただわかるのは、ここのところは会う度にこうして身体を重ねていることと、前回会った時は蝉が鳴いている季節だった気がすること、それから、お互いの身体の相性が、たぶん悪くないのと、その3つだけだった。
都中の女性の憧れ、美形と名高いアマノ家の当主がわざわざ自分のために時間を作り、湯屋の部屋まで取って待っているというのは、なんだか不思議な感じもする。

「んんっ」
されるがままに身を任せていると、トウマの唇が首筋をなぞっていき、キュウマはそのまま、褥の上に押し倒された。
さらさらと、トウマの長い髪の毛が肩からこぼれてキュウマの 肌を撫でる。湯着の胸元はとうにはだけていて、トウマが桜色のつぼみに唇を寄せた。

「っっ…く」
びくんと身体が跳ねて、快感が押し寄せてくる。口許を片手で押さえ、もう片方の手でもはやはだけてしまって役には立たない湯着 を握りしめ、なんとか、耐える。男のこんなところが感じるだなんて、甚だ理解に苦しむが、そんなことを考えている余裕すら奪われる。

「声を出してもいいのですよ?」
「…断る」
気丈にも、そう言い放つキュウマをどろどろに甘やかしてやるのがトウマの密かな楽しみだった。さて、今日はどこまで耐えられるのだろうか。
旅を続けるキュウマの身体は引き締まっていて、それでいて、強くしなやかだ。都には、なかなかこのような体つきの者はいない。もちろん、身体だけが好きでこのような関係を続けているわけではなかったが。

「どうやら、前回近江で会った時以来のようですね」
白い肌に、点々と赤い印が付いた身体を見下ろして、トウマが問う。白い湯着の下で、明らかに熱を持ったキュウマの中心が硬くなっていた。
「あいにく、どこかの眉目秀麗な当主様と違って、そう相手に恵まれてはいないからな」
キュウマにとっては皮肉のつもりだったのかもしれないが、それを聞いたトウマは内心少し、嬉しかった。

「あなたもなかなか、端正な顔立ちをしてますよ」
「お前に言われても、嫌味にしか聞こえない」
「心外ですね、本気なのに」
にこにこ笑いながら、トウマはキュウマの足を高く持ち上げて、舌を伸ばす。
硬く引き締まった尻の奥に潜む入り口をゆっくり慣らすようにほぐしていく。

「アっ、……っく、んっ」
完全にはだけてしまった湯着を噛み締めてキュウマは声を出さないよう耐えていた。
(本当はもっと聞かせて欲しいのですが…)
楽しみは後に取っておいてもいいかと気を取り直し、トウマはゆっくりとキュウマを攻めた。半年ほどしていなかったからといって彼の身体の感度が変わるようなことはなかったのが幸いだ。

「夏以来、なのでしょう?一度出しますか?」
「別に、いい」
「その割には、辛そうですよ」
2本の指を奥まで挿れて、キュウマが最も感じるだろうところを刺激しながら、トウマはそそり立つ裏筋に舌を這わせた。

「や、やめろ!別に、いいから…っ!」
「私がよくないのですよ」
「や、あ、ぁああっ!」
先端から熱い飛沫が飛び出して、キュウマは背中を仰け反らせてびくんびくんと震えていた。
まだ、中に挿れたままだったトウマの指をぎゅうぎゅうに締め付けて、痙攣するほどの強い絶頂感。だが、トウマは、キュウマの絶頂が治まらぬうちから再度、中の指を動かし始めた。

「や、やだ、やめろ、今はダメだっ……!」
腰をくねらせて、逃げようとするキュウマをがっしりと捕まえて中を攻め立ててゆく。
「ふ、う、んん」
逃げようとしていたキュウマが再び、甘い声を漏らし始める。腰が揺れているのも、逃げたいわけではなさそうだ。むしろ、もっと奥へ、もっと奥へと誘っているようにさえ見える。
それでもじっくりと時間をかけて、指が3本入るようになったところで、トウマはずるっと指を引き抜き、身につけていた単を一気に脱ぎ去った。

「もう少し、力を抜いてください」
「それができたら、とっくにやってる」
恐らく本人に自覚はない。そのような憎まれ口は自分を煽る結果にしかなっていないのだが、わざわざ教えてあげるほど、トウマはお人好しでもなかったし、教えたが最後、かわいい憎まれ口が聞けなくなるのも勘弁してほしいところだった。

「そうですか。……では、なるべくゆっくり挿れますよ」
「どっちもそんなに変わらな……あっ!!」
ずんっと大きな衝撃がキュウマの下半身を襲った。
覚悟はしていたけれど、それでも久しぶりのせいか、あれだけじっくり拡げられてもまだ足りなかったのか。激痛が襲って涙でキュウマの視界が滲んだ。
どれだけ丁寧にトウマが慣らしてくれたとしても、いつもその日の一回目はどうやったって痛かった。

「痛くないですか?」
「だ、い、じょうぶだ、」
「強情ですね。……でも、そういうところが好きですよ」
キュウマの腰を抱えたトウマが大きく抜き差しを始める。

「うあっ、あ、んああっ」
「ここ、でしたよね」
「ちがっ、んああっ、あ、はぁっ」
自分でさえ知らない自分の身体の内部をトウマに知られているという事実を、素直に認めるのもなんだか悔しくて、そんな言い方をしてしまうが、勝手に出てくる喘ぎ声を隠すことはもう不可能だった。
そうやって、トウマにいいところを突かれているうちに、痛みはいつの間にか快感へと変わっている。
ぐちゃぐちゃにはだけてしまった湯着を掴んで押し寄せる快感に震えていた腕を取られて、指を絡めてぎゅうっと握りられてそこでようやく、キュウマは自分の上のトウマの眉間にシワが寄っていることに気がついた。

「はぁ………はぁ……」
トウマの熱い吐息がキュウマの肌にかかる。
(すげー気持ちよさそう…)
なんだかんだ、仕事の都合で会うたびに、このようなことを続けているのは、気持ちいいからなのだろう、お互いに。理屈じゃない。

「キュウマ、出しますよ」
繋いでいない方の腕で肩から背中をぎゅうっと抱き寄せられて、唇を貪られ。
頭の中が真っ白になってなにも考えられない上体で、トウマだけを感じていた。熱いトウマの飛沫が、自分の中に吐き出されたのだけを、感じていた。

************

あのまま、お互いがお互いを貪り食うように、数回、続けて抱き合った。
どうせ後で風呂に入ればいいと、処理もせずに体温を求めあったおかげで、ふたりとも汗だくだった。そのせいで、トウマの額に汗で前髪が一房張り付いている。それがなんだか面白かった。

「明日は、早いのですか?」
「そうだな。月の神のご利益をもらいに行かねばならない。大掛かりな普請になるだろう」
「では、そろそろ食事にして、早めに寝たほうがいいでしょうかね」
ぎゅうっと抱きしめられて汗で濡れた額にトウマの唇が押し当てられた。

「おやおや。当主様は、いつからそんな、寡欲になったんだ?」
トウマの肩を押さえたままごろんと転がって、普段とは逆の立場、キュウマが見下ろすような格好になる。
額に張り付いた前髪を払ってやり、それから、覆いかぶさって唇を重ねた。

「口では寝るとか言っておきながら、身体は正直じゃないか」
口づけで再び熱を持ったトウマの中心をゆるゆるとなぞって、自らの内へと誘い込む。

「うっ、ん、……ァア」
ずぶずぶと、全てが自分の内側に収まったところでキュウマはゆっくりと息を吐き出した。

「いい眺めですよ」
ぐっとキュウマの腰を掴んで。

トウマは下から、激しくキュウマの中を突き上げた。
明日なにごともなければいい、無事に新年を迎えられればいい。
そんなことを思いながらトウマはキュウマのしなやかな身体を抱いた。






















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