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ルベリ×キーラで現パロです。

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いつだって仕事は忙しい。
それはわかっている。父親の跡を継ぐと決めた日から覚悟はできていた。

しかしながら、それでもストレスは溜まる。
部下のミスで書類が増えたり、あちこちに頭を下げて回ったり、意味の分からないクレーマーに捕まって時間を取られたり、自分がやろうとしていることにただただ、反対したいだけの古参役員に会議を長引かされたり。

ただ、今日は金曜日だ。
明日と明後日は休む。なにがなんでも土日は休む、そう、ルベリ・クラクスは決めていた。

「おや、もう帰るんですか?坊っちゃん」
会議から戻ってきてすぐ、山積みの書類を仕分けした。急ぎのものは全て片付け、立ち上がったルベリに声を掛けたのは、父の代からの重役のクォだった。
現在社長であるはずの自分に対して、こんな口を利くのは社内でもこのクォただ一人である。

「一応私は社長なんだ、その言い方はやめてもらいたい」
「ああ、失礼しました。まだ書類、残ってますよ、坊っちゃん」
ルベリはそれ以上訂正させるのを諦めた。

「そこにあるのは全て、来週でもいいものだ」
なるべく目をあわせないように、それだけを言い放ってルベリはコートを羽織る。
ただ古参だからという理由だけでクォが今の地位にいるわけではないことくらい、重々承知だ。
しかし、有能であることを嫌というほど理解していても、クォに頼りたくない、あまり信用しすぎてはいけないと、自分の中に鳴り響く警鐘が消えることはなかった。

「それでは、あとは頼む」
「そういえば、婚約なさったそうですね」
マフラーを巻いて、カバンを掴み、それだけを告げて、社長室を出ようとしたところで、クォがしつこく話し掛けてくる。

どうせ何日も前から知っていたのだろうにこのタイミングでその話を持ち出すクォは、やはり鼻持ちならない。が、一つ言い返せば、百の言葉が返ってくる。
「そうだ。来月発表する予定だ」
「あの厳しいお父様が、よくあんな田舎娘との結婚を許してくれましたねぇ…」
くっくっと喉を鳴らして笑うクォが何を考えているのか、ルベリにはさっぱり理解できなかった

「クォ、私のことを悪く言うのは構わない。だが」
「おっと、これは失礼致しました。お疲れ様です、よい週末を、坊っちゃん」

あくまでも表面上はにこやかに、クォは出ていってしまったからそれ以上言い返しようはなく。
なんだか言い負かされたような気分になったが、気にしないことにした。
そもそも、クォが何を考えているのか、理解しようと思うのが無駄なことなのだ。

今日の仕事は終わった。
クォのことなど忘れてさっさと家に帰ろう。
ルベリは気を取り直して、家路を急いだ。

************

「おかえりなさい」
玄関で靴を脱いでいると、エプロン姿のキーラが姿を見せた。
「今日はシチューにしたの」
床に置いたカバンを黙って抱えるキーラの肩をそっと抱いて、唇を寄せた。

安心する、ほっとする、落ち着く、嫌なことが全部消えていく。
立場上、女はいくらでも寄ってきたけれど、自分をこんな気持にさせてくれたのは、キーラが初めてだった。
一週間の疲れも、いちいち棘のある言葉を投げつけてくるクォ存在も、一瞬で、どうでもよくなっていた。

「お疲れ様。週末は、おやすみ?」
「キーラ、したい」
質問には答えずに、ただその、一言だけを告げた。

「えっ?で、でも、夕飯、食べるでしょ?」
「食べるけど、その前にしたい。…だめ?」
玄関先で。細いキーラの肩を抱いたまま、耳元でもう一度囁いた。

そうっと頬を撫で、額に唇を落とす。
「キーラ、欲しい」
ぎゅっと、細い腰を抱く腕に力を入れると、一瞬困ったように抵抗をみせたものの、キーラはそのまま大人しくルベリに身を預ける。
ダメだ、先にご飯とお風呂…と言っても無駄なことを、キーラが一番よく知っていたからだった。

どうしたらいいのかわからずに、ただ、ルベリに抱きしめられるがままになっているキーラの耳が赤くなっているのがよくわかる。いつまでたっても初々しい、こんなところも、キーラを好きになった理由のひとつ。

嫌だとは言わないキーラの背と膝の裏に腕を回して、ひょいと抱き上げた。
「ルベリ!」
「お鍋の火は止めてある?……だったら問題ないよね」
こくこくとキーラが頷いたのを見届けて。ルベリはそのまま、夕食の準備ができたリビングではなく2人の寝室へと向かった。
ゆっくりとベッドにキーラを下ろし、ずっと持っていた鞄を取って押し倒す。キーラの背が柔らかいベッドにゆっくりと沈む。

「キーラ、すごくいい匂いがする」
返事を待つ間も惜しくて、一秒でも早くキーラを感じたくて、ルベリはキーラに唇を重ねた。
舌を絡めて唇を重ねたままで、コートを脱ぎ捨てキーラのエプロンを外してシャツのボタンを一つずつ外していく。

「んっ、…っ」
吐息がこぼれ、キーラの身体が小さく跳ねた。

「キーラ、好きだよ」
「ルベリ、あの、わたし…」
か細い声で明るいままじゃ恥ずかしいと訴えるキーラに頭が沸騰しそうになった。

今更、だ。
もう何回したか覚えていないくらい肌を重ねているし、一緒にお風呂も入るのに、それでも恥ずかしがるところが、たまらなく好きだった。
本音を言えば、明るいままで反応を見ながら抱きたいところだが嫌われたくない。

照明を半分以下に落として、もう一度キーラの上に覆いかぶさる。服の上からでもわかる豊満な胸に顔を寄せた。
「キーラが見えないのは嫌だから、これくらいで許してくれるかい?」

「ん……」
惚れた弱みとはどちらのことだろう。
そう思いながら、キーラはルベリに身を任せた。

************

くしゅん
寒さとくしゃみで、目が覚めた。
ルベリが仕事から帰ってきて、寝室に直行して。回数なんてわからなくなるほど、お互いを求めあった。
そのまま、どうやら眠ってしまっていたらしい。
あんなに火照っていた身体はすっかり冷えて、手足の先が冷たくなっていて、自分の背中に腕を回したままのルベリは、まだ眠っているようだ。

「風邪ひいちゃうわね…毛布、かけておかなきゃ。……あと、お風呂入ってこよう」
ことを始めてすぐにルベリに外されたメガネはベッド脇の棚の、いつもの場所にちゃんと置いてあった。
ルベリを起こさないように、ゆっくりと起き上がって、ベッドの下に落ちた毛布を拾い上げ、そうっと愛しい人の身体に掛けようとしたとき、突然ぎゅうっと、キーラはその腕を掴まれた。

「どこへ行こうっていうの?」
「起こしちゃったかしら…?」
「それはいいから、おいで」
そのまま抱き寄せられて、ぽすっと再び、キーラの身体はベッドに沈む。

「手足、冷たい」
「それはあなたもよ、ルベリ」
「じゃあ、キーラが温めて」
「…もう!」
ぷくっと頬を膨らませていると、観念したようにルベリは毛布を引っ張り上げて、キーラの身体ごとしっかりと包みこんだ。

「結局夕飯食べてないんだから」
「起きたら食べるよ。今はもう少し、こうさせて」
「先週もそう言って、昼過ぎまで寝てたじゃない」
「……だめ?」

頭から頬のあたりを撫でられながら、真剣な眼差しを向けられて、ダメだなんて言えるはずがなかった。
チュッと音をたてて唇が重なる。

お互い冷え切った身体でも二人くっついていれば温かい。その温かさに包まれて、二人ともまどろみの中に落ちていった。

************

「バロンがポカリ、たくさん買ってきてくれたから、冷蔵庫に入れておけばいい?」
「あ、ありがとうロレッタ。今行くわね」
「寝てなさいって言ってるでしょ?」
起き上がろうとしたところを、オルネに力いっぱい押さえつけられた。

「ふふふ」
その隣で真っ赤な顔のルベリが肩を震わせて笑っている。
「笑い事じゃないですよ?二人揃って風邪だなんて」
ルベリの額の上のタオルを交換しながらたしなめるのはベルナデッタ。

「まったく!鍛え方が足りないからそんなことになるのだ!」
「でも、ドゥーガみたいになるのも嫌だなー」
「なんだとぅ?」
言い合いを始めたドゥーガとアレクを部屋の外へ追い出すオルネ。

「あのね、みんな、ルシェがね、もうすぐごはん、できるって」
「まったく、看病に来たんだかご飯を食べに来たんだかわからないな」
「そ〜言いながらあんたもちゃっかり食べるんでしょ?ティア」
「ボクは連れて来られたんだ」

あのまま寝たせいか、二人揃って風邪を引いて、思い切り熱を出した。
いつもの仲間たちが心配して来てくれたのはいいが、さすがに全員集まるのはどうしたものだろう。

「ごめんなさい、なにもできないけれど、ゆっくりしていって」
「そうね。とりあえず、なにも心配しなくていいから、二人はしっかり治してくださいね」
机の上に残して来た仕事は、クォが片付けたらしいという話はティアから聞いた。
うつされたら困るから、完治するまで出社してくるなという伝言つきで。
布団の中で互いの手を握り合いながら、たまにはこんな休暇もいいかもしれないと思う、ルベリとキーラだった。






















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