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※「泣いちゃったっていいよ」の続きです

銀さんがストーカー被害に遭うようになってから、ヘルプ要員だった『ヅラ子』が、準レギュラーになった。

夢でも逢いたい


1人で深夜の街を歩かせるのは危ないからって。夏休みの間だけでも側にいて守ってやるってヅラに言われた時、あんまりにも嬉しくて銀さんは号泣しちゃった。

それから、銀さんがパー子の日は、絶対一緒に出勤して、一緒に帰ってる。本当は手なんかもつないでさ、ベッタベタしながら通勤したいんだけど…誰に見られるかわかんないから、それはできない。だってウチの店、職場恋愛禁止なんだもん。

職場恋愛禁止って言ったって、普通は困らないんだよね。だって、銀さん達みたいな学生バイトの子以外のねェさん達は、みんな手術済み。だから、職場に恋愛対象がいないんだもん。あ、ウチの店、一見オトコに見えるDJもバーテンもフロントも、みんな『オナベ』だから。

「ちょっとパー子来てェ」
「はァい」

呼ばれて更衣室に行ってみたら、なんだか散々飲まされてたっぽいヅラ子が完全に潰れてた。このまま寝せとくからちゃんと連れて帰れって言われたのは営業終了時間の30分前。

「わっかりましたァん」

お得意の甘ったるい声と営業スマイルでネェさんに返事してさ。とりあえず残りの営業時間とお客さんの見送りをこなして、着替えてから、更衣室の床に転がってるヅラ子を揺さ振って、起こす。
…全然起きないんだけどね。

「ヅラ子ォ、起きなさいよォ」

誰に見られっかわかんないからさ、着替え終わってはいるけど、まだパー子のまんまの口調で。
ってか、今日のヅラ子。シックな黒のドレスでさ、めちゃくちゃキレイなんですけど?今すぐにでも、襲いたくなっちゃうんですけど。

「パー子、もう店閉めるからァ、アンタ、ヅラ子担いで帰りなさいよォ」
「ハーイ」

とりあえず銀さんの鞄とヅラの鞄の中にヅラの服を分けて入れて。左肩に鞄2つ、右肩にヅラの左腕を担いで、銀さんはお店を後にしたんだ。

ってかさ、完全に寝てる人間って、めちゃくちゃ重たいのよね。ヅラなんか、銀さんより断然細いんだから、普段なんか乗られたって全然軽いのに(って別に惚気てるわけじゃないからね)、今日は違う。完全に意識ないからさ、銀さんに引きずられるがままなんだけど。

このまま引きずって歩くのが辛いってのも、もちろんあったんだけどさ、こんなに潰れるまで頑張ってくれたヅラを、早くベッドに寝かせてあげたいなァって思って。だって、ヅラは銀さんのためにバイト来てくれてるんだから。

えっと、確か今日チップ貰ったんだよね、お客さんに。そうそう、確かパンツん中に挟みっぱなしだったわ。

ただでさえ髪の毛がこんなに長いヅラがさ、ドレス着てんだよ。どっからどう見ても監視カメラからは男女のカップルにしか見えないと思うからさ、今日はどこでもいいやって。とりあえず一番近いラブホに入ったんだ。

***

とりあえず邪魔だろうからって、ドレスだけ脱がせてあげて。下着一枚にしたヅラをベッドに寝かせてやる。銀さんは先にお風呂入っちゃおうかな。いつまでも酒臭いの嫌だもんね。

風呂から上がっても、ヅラはさっき銀さんが寝かせたまんまの体勢で熟睡してるみたいでさ。銀さんはその隣に、横になって頬にかかるヅラの長い髪の毛を梳いてたんだ。

今でも時々、どうしてヅラが銀さんなんかと付き合う気になってくれたのかな…って、不安になるときがあるんだよね。だってさァ、なんか、幸せ過ぎて恐くない?銀さんはさ、大学で1人くらいはなんでも話せる友達できたらいいなーって、そんなこと思ってたのに、友達何人できた?おまけに、こんな美人の彼氏までできちゃった。
そして、この美人の彼氏は、銀さんの生い立ちや家の事情とか、全部話しても、引くどころか好きだって言ってくれたんだ。

ホント、さ。ヅラってキレイだよねェ。たまーに辰馬と沖田君がさ、高杉と土方君が寝ちゃった後に「晋が一番カワイイ」「何言ってんだ十四郎でさァ」って。馬鹿な言い争いを、酒の勢いだけでやってんだけど。銀さんは絶対、ヅラが一番だと思います!…アレ?作文?

まァいいや。とにかく、なんだかヅラの顔触ってたらムラムラしてきちゃったよって話。今はさ、2人っきりなんだから、キスしちゃおっと。

自分の左腕を枕代わりにして、ヅラの唇を奪ったら。『んっ…』って小さくヅラが呻き声を上げて。ヤバイって、マジでヤバイ!何よ今の声!銀さんの股間直撃!

相手は寝てるのに…って思ったけど、もう我慢なんてできなくて。覆い被さるみたいにして、何回も何回もヅラの唇奪ってた。

好き、好きだよヅラ。お願いだから、このままずっと、側にいてね。お願いだから銀さんを1人にしないで、って思いながら、何回もキスしていたら、急にヅラの両腕が銀さんの首に回された。

「!!……んんっ」

さすがに、こんなにキスしまくったから起こしちゃったんだ…って思った。だけど、怒るどころか頭押さえつけられて。ちょっ、ちょっと、激しいよヅラっ!

息が上がってきてもヅラは全然離してくれなくて。さすがに苦しい、ちょっと力ずくで離しちゃっても…って思い始めた瞬間、いきなりヅラの腕の力が弱くなった。

「っぷは!」

どうしたのさヅラってば!こんなに積極的になるなんて!って、呼吸を整えていたら、右を下に、横向きに体勢を変えたヅラに名前を呼ばれた。

「銀時…」
「…なァに?」
「………………………」

ちょ、ちょっと。この沈黙はなんなんですか?銀さんの名前呼んどいて。だけど、ヅラの様子が、ちょっと、ヘン。

「ねェ、ヅラ?」
「…………」

呼んでみたけど返事がなくて。もしかしてって思って、ヅラの顔に耳を近づけてみたら。

『すー。すー。すー。すー…』

これ、明らかに寝息じゃん!ヅラ、寝てんじゃん!じゃあ、もしかして、さっきのキスって寝ぼけてた?それと、銀さんの名前呼んだのって。

「…もしかして、寝言?」

ヤッベ!寝言で名前呼ばれるって、銀さんどんだけ愛されてんの?もうホント、幸せすぎて死んじゃいそうなんですけど?

とにかく朝になって、ここを出る前にエッチしまくってやろうって思って。本当は今すぐ襲いたいくらいなんだけど、銀さんも疲れてるし?ちゃんと体力回復してからの方がいいよね。

身体の下になってたヅラの右腕を引っ張り出して、銀さんは枕にして。幸せ過ぎてこのまんま目覚めないかもしれない…なんてことを考えながら、ヅラにぴったりくっついて、眠りに落ちていった。


END



拾萬度第三弾は桂銀です!…が、予定していたモノとは大幅に違…。桂を酔わせすぎました(涙)…銀時幸せだからいいよね…?ストーカー話もちょこっと進んだし。






















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