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※LACRYMOSAの続きです

「そんなわけで撃沈じゃったァ〜」
アッハッハといつものように笑いながら坂本の告白結果報告を受ける昼休み。15号館のテラスに集まっているのは、3人だけ。

What's on your mind?


「それよりの、高杉が昨日泣いとったんじゃが、おんしら、何か知らんかの?」
「アイツ、まだ泣いてたのか?」

桂が、昨夜誰かからの電話の後、長いこと帰って来なかった話と、銀時を送る為に外に出た時に、泣いていた顔を一瞬見た話を坂本に聞かせた。
本当は、すぐに戻ってやるつもりだったことも。

「やっぱりさァ、何かあったんだって、あの女子高生と」
「女子高生?」

まだ坂本には話していなかった銀時が、一昨日の渋谷での目撃談を話す。金髪の女子高生に腕を掴まれ『またそうやって逃げるのか?』と詰め寄られていた高杉。それから、腕を組んで、ファーストキッチンに入って行ったところまで、銀時は隠れて見つめていた。

「いくらヅラが幼なじみでも、高杉より下の学年のことは知らないんでしょ?」

桂は首を振って銀時の言葉を肯定した。

「だがな、坂本。高1までの話限定だが…アイツもなかなか、女遊びの激しい奴だったんだぞ?」

気が向くままに取っ替え引っ替え。来る者拒まず、自分が飽きたら去る前に勝手に捨てる。それでも、高杉の周りから、女が絶えることはなかった。ちょっと悪い男に惹かれる女というものは、案外たくさんいるものなのだ。もちろん、高杉の顔だけに惹かれる女も多かった。

「その話を聞くと、この2ヵ月、アイツに浮いた話の1つもないのって、不思議だよなァ」

頬杖をつきながら、銀時がぼやく。『1人の女に縛られるのってダルくねェ?』と言っていたあれは、高杉の本心なのかもしれないし、実は見えないところで、女がいたのかもしれない、一昨日の女子高生のように。

「辰馬ァ…、高杉がノンケでも、お前は高杉のこと好きだって言えるの?」
「わしは、性別なぞ関係なく、高杉に惹かれとるよ」
「銀時、こいつにそれを聞くだけ無駄だ」

広い意味で男も女も関係ない。相手にその気がなければ、坂本と桂のように、ずっと腐れ縁の友達関係を続けていくことだってできる。それが坂本なのだ。

「それよりお前は、昨日の今日で平気なのか?」

桂はむしろ、そっちの方が気掛かりだった。入学してすぐに知り合った坂本が、何年ごしで先輩を好きだったのか、桂はずっと見てきたのだ。いつもフラフラフワフワ浮気性の坂本だが、本気で惚れた相手にだけは、なかなか手を出せずにいることを、態度が全く違うことを、桂は気付いている。

「わしはもう落ち込んどらんぜよ」

確かにそう。フラれたことは確かに、ショックはショックだった。でも、半分以上は結果がわかっていて、最後の最後に諦めるために、スッパリ振り切るために告白に行ったのだ。

だから、帰って一通り泣いて、高杉に泣かせてもらって。一緒に飲んだその後は、すっかり立ち直ったというのが本当のところだ。これが、残っていたのが桂や銀時が1人だけだったら、こうは行かなかったのかもしれない。
いつまでも引きずらないで、けじめをつけようなんて気になったのも、高杉と知り合ったからだ。高杉に惹かれている自分に気付いたからだ。

「それならいいんだが」

落ち込んでないと言いながら、笑顔の裏では何を思っているかわからない坂本の言葉を、桂は半分信用していない。

「桂ァ…。高杉って、なんでわしらに、相談してくれんのかのう?」

わしなんて、おんしらに何でも話しとるのにのと、らしくない、少し落ち込んだ表情を見せる坂本。

「それは性格だから仕方ないだろう?アイツは昔からそうだ。なんでも1人で抱え込むタイプだぞ?」

だからこそ、それがわかっているからこそ、桂はなるべく、高杉の側にいてやろうと思っているのだ。学年も学部も違うが、幼い頃からずっと、弟みたいに思ってきた高杉に、大学で再会したからこそ。

「何かあったんか?って聞いても何にも言ってくれんのじゃァ」
「坂本、ひとつ言っておくがな」

デカイ身体を縮こませて、ウダウダ悩む坂本に桂が言った。

「アイツはハッキリしているからな、嫌いだったら俺達となんかつるまないぞ」
「へェ。でもまー、アイツそんな感じだよなー」

たまたま授業でよく会うからって声をかけただけの俺と、本当にたまたま気が合うなんてねェと銀時は笑っていた。銀時自身も、4人でウダウダ集まるこの関係を相当気に入っているのは事実だ。あの時、高杉に声をかけたからこそ、高杉の幼なじみとその悪友という2人の仲間を得て、銀時は、それなりに感謝している部分がある。

「だいたい、アイツは高校の時だって…」

言いかけた桂は、何かを思い出したように、押し黙った。

「どした?ヅラァ?」
「桂、何でもいいから教えてくれんかの?おんしだけが、いろいろ知っとるんじゃ」

坂本は真剣だ。

「いや、高校の時だがな…」

桂は、重たい口を開いた。

「晋助と仲のいい、河上という奴がいたんだが…」

河上は桂の1つ下で高杉の1つ上だった。やっぱり高杉同様、どちらかというと悪い方の生徒、つまり不良の生徒で。
きっと一緒にサボっている間に仲良くなったのだろうが、高杉には、河上くらいしか、マトモに話せる友達はいなかったように思う。
自分が卒業した後のことは知らないが、と桂は話す。

「確か…河上とつるむようになってから、晋助の女遊びがなくなったんだ」

自転車に2人乗りで、まだ授業中の学校から帰って行く姿を、何回か桂は目撃している。

「ほえー。なんか、怪しい感じもしなくない話だよなァ?」

テーブルに頭を乗せて坂本を見上げながら、銀時は茶化すように言った。

「なァ、辰馬ァ、もういっそ、言っちゃったら?高杉に」

こんなところで3人でウダウダ悩んでいるよりも、その方が絶対に早いと、銀時は思ってしまう。

「いきなりそんなこと言ってものー、拒絶されて、今の関係が壊れるのは嫌ぜよ」

あー、辰馬らしくねェの!とぼやく銀時の横で、桂は神妙な顔をしていた。
坂本本人以上に、坂本の気持ちが本気であることに、桂が真っ先に気付いていたからだった。

***

昼休みが終わり、坂本は授業に行った。

「ヅラァ、お前3限ないの?」

2人になって、銀時は相変わらず、テーブルに頭を乗せたままぼやいている。

「そうだ。お前は?サボりか?」
「そ。俺2時からバイトだから出れないのよ」
「お前なぁ…」

あと1時間くらいは2人でウダウダしていようと銀時が決め込んだ時だった。テラスになっている食堂の窓から、よく知った顔が走ってくるのが見えた。

「ヅラ、高杉来た」

桂からは背になって見えていない窓の向こう。
すぐに桂の携帯が鳴った。

『お前、今どこ?』

開口一番の、高杉の声は、銀時にまで聞こえる大きなものだった。授業なら桂は電話に出ないとわかっている高杉は、余計なことは全て飛ばして居場所だけを尋ねた。

「いつものテラスだ」
『今から行く』

言いたいことだけ言って電話を切る高杉。そして5分もしないうちに、テラスに駆け込んできた。

「小太郎、今日、ヒマ?」

高杉は、走ってきた勢いそのままに、桂の両肩を掴んで迫った。

「4限の後は空いてるが…」

あまりの勢いに、桂もなにごとかと思って動けずにいる。

「不動産屋つきあって!」
「不動産屋?」
「ってか、お前のマンション、部屋空いてねェの?」

一気に言った高杉は、まだ荒い息のまま、とりあえず桂の隣の椅子に座った。

「お前、ついに1人暮らしすんの?」

黙って桂に差し出されたお茶を一口飲んで、高杉は銀時に答えた。

「そう。やっとOKしやがったよ、うちの親!」

***

1人暮らしに向けて、高杉と桂の不動産屋めぐりが始まった。どうせ週に3回くらいは坂本のマンションで飲み会なんだから、ワンルームでもなんでもいい、とりあえず駅の近くで、学校に近くて、と高杉の出した条件は簡潔だった。

「お前、起きれないからな、朝」
「1限はひとつも入れてねェから大丈夫だよ」

高校時代まで、あんなに悪くてサボってばかりだった息子が、大学にはちゃんと行っているとわかって、ようやく高杉の親は、1人暮らしを認めたのだった。

「とりあえず今日は銀行な」

口座を開設したいからと言われ、学校やこの付近に支店のたくさんある都市銀行に向かった。

「小太郎…、あのさ」
「なんだ?」

番号札を取って、呼ばれるのを待っていた高杉が、隣に座る桂に尋ねた。

「坂本の誕生日、知ってるか?」
「坂本の誕生日?確か、11月15日だ」
「ふぅん。…サンキュー」

いきなり何なのかと桂は思う。そして、あることに気がついてしまった。

(まさか、暗証番号か…?)
「そー言えば、お前もうすぐだよな、誕生日」

6月26日。さすがに幼なじみの誕生日くらいは覚えている。

「お前の誕生日は、いつもどおり4人で飲もうなァ」

尋ねる間もなく、自分の誕生日の話になって、番号が呼ばれ、桂が聞きそびれたまま、高杉はカウンターに行ってしまう。

桂はその時、初めて自分の気持ちに気がついた。弟みたいに思っていた、ずっと。自分が面倒見なければと思ってきた。それは、弟だからという理由だけではなかったのだ、きっと。

だけど、高杉が暗証番号にわざわざ選んだ4桁の数字は、自分の誕生日ではなくて、他の奴のもので。それが、どういう感情なのかは知らないが、高杉が、坂本を気に入っていることは間違いないのだろう。特別に思っていることも。そしてまた、親愛なる悪友の坂本も、自分では気付かないままに、高杉を特別だと意識し始めている。

カウンターで書類を書いている後ろ姿を見つめながら、今更気付いてしまった想いを、どうにもならない感情を桂はそっと押し殺した。もっと、早く、自分の気持ちに気付いていれば、また違う結果が待っていただろうに。

***

これといった収穫もなく、そろそろ帰ろうかと2人で歩いていると、高杉の携帯が鳴った。

「………。出ていい?」

なぜだか桂に確認を取った高杉。電車に乗っているわけでもなんでもないのに、桂が駄目だと言うはずもなく。

『先輩助けてっ!!!』

高杉が通話ボタンを押した瞬間、おもいっきりデカイ女の声が携帯から響いた。

「お前、何やってんだ!」
『何もやってないッス!さっきから変なのに着けられてるッス!…やめろ!蹴るぞ!』

どうやら演技ではなさそうだ。

「お前、今どこだ?」
『道玄坂のあたり』
「ハチ公前で待ってろ!そこまで走れ!」

言い終わるなり通話を切った高杉は桂に向き直った。

「ごめん小太郎、ちょっと行ってくる」
「ああ、行ってこい」

何だか、ただ事ではない雰囲気を、桂も感じ取っていた。

「先帰っていいから、悪ィ」

そのまま高杉は、ダッシュで駅へ向かっていった。

「ハチ公前ね…」

こっそりと、桂が銀時にメールしていたのを、高杉は知らない。

***

渋谷まで2駅。近くにいたからよかったものの、また子の奴、何やってやがんだ。

高杉は、自分が鬼のような形相になっていることに気付いていた。気付いていたが、どうしようもない。ダッシュで改札を抜けると、ミニスカートの女子高生に絡む男が2人。周りの人間は、いわゆるチャラ男の2人を、見て見ぬふりだ。ああ、こういうのって、スゲェむかつく。

「おい、テメェら!!」

1人の肩を掴んで、こっちを向いたところを思い切り殴り付けた。それこそ、全体重をかけて。男はおもいきり、アスファルトに叩きつけられる。

「先輩!!」
「なんだてめえ!」
「それはコッチの台詞だ!」

自分達より、はるかに小さい高杉に仲間を殴り飛ばされて、男の頭にはすっかり血が上っている。がっしりと胸倉を掴んだ手を、高杉は捕まえた。

「汚ねェ手で、俺の女に触んじゃねェ!!」

そのまま、勢いをつけた高杉の腕が男の手首を捻り上げる。

「とっとと消え失せろこの野郎!」

よろけたところへ容赦なく足を振り降ろした。

「また子!走るぞ!」

騒ぎに気付いた警察がやってくる前に。俺は、また子の手を引いてその場から逃げ出した。どう考えてもコレは、過剰防衛以外のなにものでもなかったから。

「何やってたんだお前は!」
「何にもやってないッス!あいつらがしつこくナンパしてきたッスよ!」

2人で駅から離れる方向に走って走って。原宿との中間くらいまで来たあたりでようやく止まった。

「お前がそんなカッコしてるから、援交目的かなんかと間違われたんだろ?」
「晋助先輩ひどいッス!鬼!人で無し!」
「助けてもらっといてソレかよ!」

泣き出しそうなまた子に、ついつい怒鳴ってしまう。

「とにかくお前、このまま歩いて、原宿から電車で帰れ」
「先輩は?」
「俺も帰るからっ」

俺ん家とお前ん家は、そんなに近くないだろうが。

「先輩、さっきのアレは本気ッスか?」

泣きそうな顔も、泣く真似もやめたまた子が腕にしがみつきながら言ってきた。

「さっきのって何だよ?」
「俺の女って言ったッス!」

原宿までの明治通りを歩きながら、やたらとまた子は上機嫌だ。

「そんなもん、言葉のアヤだ」
「先輩ィ、照れなくていいッスよ」
「テメェ、殴んぞ」

でも、俺が女には手をださないとわかっているまた子に言っても、全然脅しにはならなくて。

「先輩…。兄貴と仲直りして欲しいッス」

はァ、と、俺の口からは溜息しか出ない。

「お前もしつこいな。俺ら、喧嘩別れとかじゃないから」
「だったら先輩」

また子が、俺の肩に頭を乗せてきた。

「アタシと付き合ってほしいッス」
「だからな、また子」

俺はゲイなんだっつうの!お前は何にも悪くないけど、女じゃ駄目なんだっつうの。

「でも、晋助先輩、兄貴と付き合う前は女とも付き合ってたッス」
「だから、それはな」

なにかが違うと思いながら、自分自身のことを、自分が受け入れられなかっただけの話だ。

「あたしは先輩が好きッス」
「…ありがとな」

今はただ、俺にはそれしか言ってやることができなかった。

***

「おー、晋助が暴れてるの、久しぶりに見るなァ」

いくら真面目な桂でも、少しくらいはヨコシマな、そんな感情が存在するのだ。下世話なことと知りながら、銀時に電話しながら、高杉を追い掛けていた。

『んで、金髪で、ミニスカで、今時の女子高生か?』
「全くその通りだな。ルーズソックスで、晋助より少し背が低いくらいだ」

−−それはこっちの台詞だ!−−

どうやら高杉がブチ切れている。こんな高杉を見るのは久しぶりで。桂はなぜだか、少し嬉しくなった。長年悪かったせいか、こんな姿の方が『らしい』と思ってしまう。

「…おい、銀時」
『なにィ?』
「銀時、今の聞いたか?俺は聞いてしまったぞ?」
『この電話ごしじゃ、なんにも聞こえねェっつうの!』

銀時が怒るのも当たり前の話ではある。

「今、高杉が『汚ェ手で、俺の女に触んじゃねェ』と」

そう、ハッキリ言ったのだ。容赦なく、チャラ男に蹴りをくらわせながら。

『なんだ、やっぱり彼女なんじゃん?なんでアイツってば、そんな必死に否定すんの?』
「俺にもわからんよ」

そのまま、手を繋いで走って<行った2人を、さすがに追い掛ける気にはならなかった。

『ヅラ、どーすんの?一応、辰馬にも報告?』
「まァな…。あの馬鹿、教えないでいて、後からバレたらうるさいからな」
『りょーかい。俺もバイト終わったら辰馬ん家行くわ〜』

しかし、あの女子高生。どこかで見たことがあるような気がするのは気のせいだろうか。
後輩ではあるのだから、たまたま卒業してから行った時なんかに、見ただけなのかもしれないが。

桂は、胸につかえたモヤモヤが、どうしても思い出せなかった。

***

「マンション探しとるがか?」

いつものように、4人で坂本のマンションに集まって、飲んでいた。

「そ。でもこんな時期だからさ、なかなかねェんだよ」

小太郎のマンション空いてたら即決したのになァと、ビール片手にぼやく高杉。

「お前、起きれねェんだから、もっと大学の近くに住んだ方がいいんじゃね?」

この日は、甘口の日本酒を飲みながら、銀時が茶化す。

「うるせェんだよ!俺はお前より遅刻少ねェよ!」

「しょーがないでしょー!銀さん朝までバイトの日なんて、ベロンベロンのフラフラよ〜」

どうせマトモなところではバイトしてないんだろと高杉は毒づいた。何かにつけいがみ合う2人だが、その割には仲良く、ほとんど一緒の授業を並んで受けているというのだからおかしなものだ。

「しかし、こうも見つからないとなると、困ったものだな」

もう何日も、高杉に付き合って不動産屋を回っている桂もぼやく。

「じゃったら、のう、高杉」

坂本が缶ビールをテーブルに置いて真剣な顔をした。

「ここに、わしと一緒に住んだらどうじゃ?」
「え?」

これには、言われた高杉だけでなく、桂も銀時も驚いた。

「どうせ週に3回はここに泊まっとるんじゃ。部屋も余っとるしの。どこか見つかったら、引っ越せばええし」
「…いいのか?」

坂本の申し出に、戸惑いを隠せない。

「わしは構わんぜよ?その方が集まりやすいしの」

そうは思わんか?と、桂や銀時に同意を求める坂本。
確かに、高杉が帰ってしまった後で、急遽ここに集まったことも何度かあった。絶対に拗ねるという桂の主張のために、そのことは、なるべく高杉にバレないようにはしていたが。

「じゃあ、そーする!ここ、家賃いくら?半分出す!俺もバイト捜す!」

本気で言ったつもりだったのに、坂本に笑い飛ばされた。

「構わんぜよ!どうせ、わしがバイトして払っとるわけじゃないしのぅ」

「このボンボンがァ!」

怒りたくなったのは俺だけじゃないはずだ。

「晋助…、親に説明できるか?」
「あー、そうだなァ」

うちの親、けっこう頭硬いからな。

「週末、俺も一緒にお前ん家行ってやろうか?」

どうせ誕生日だから帰ってこいって言われてるんだ、と桂は笑った。

「お前の話ならウチの親、すんなり信用するからなァ!」
「ずるいぜよ!わしもおんしらの地元行きたいぜよ!」
「なんだよ、…お前も来る?」

なーんにもないけどよ、と俺は言ってやった。

「俺も行きてェっ!!って言いたいとこだけど、朝からバイトだよ〜」
「残念だったなー、って、本当に何にもないんだぜ?」

結局、日曜は3人で、俺と小太郎の地元に帰ることになった。

***

坂本と小太郎と一緒に行ったおかげで、ウチのうるさい親もあっさりとOKした。
なんだかすごく、坂本はうちの親に気に入られて。うちの親が一番気にしていた俺の寝起きの悪さも『もう慣れました』と小太郎と坂本が一緒に言ったもんだから、みんなで吹き出していた。
長期休暇でもないのに、一気に荷物を運ぶわけにもいかないから、最初のうちは、毎週家には帰ることにして。とりあえず今日は、教科書と少しの着替えだけを持った。

その後は、小太郎の家で、2日早い誕生日パーティーに乱入してやった。
久しぶりに顔を出した俺に、小太郎の両親はずいぶん喜んでくれて。

さっそくそのまま、この日は1時間電車に乗って、坂本のマンションに帰った。小太郎は明日は実家から学校に行くと言うから、電車の中は2人きりで。電車の中では、他愛のない、地元の話なんかをしながら帰ったら、あっという間だった。

あまり深く考えずに、一緒に住むことにはなったけど、正直不安もある。だって、俺は、間違いなく、坂本のことが好きだから。

「高杉ィ、ここに時間割貼っときィ」

坂本が、自分の寝室の扉の前のコルクボードを指しながら言った。そんなの昨日まであったっけ?

「ちゃんと、時間割どおりに起こしちゃるきに」

坂本が、ほとんど使っていなかった部屋を俺の部屋として宛ってもらった上に、朝まで起こしてくれるという。本当に、この坂本の優しさが俺にはちょっと痛い。

「高杉が来るからって、いろいろ買っといたんじゃ」

言いながら、氷の入ったお揃いのグラスと焼酎を持ってきた坂本は『飲もうか』と言ってきた。本当に俺達飲んでばっかりだ。

「高杉の新しい生活に乾杯じゃ」
「乾杯」

なんだか、いつも4人でいるのが自然だったから2人きりってことに違和感がある。2人きりなんて、あの夜以来だ。
でも、これからは、これが日常になるんだと、そのうち慣れるんだろうと思う。
「高杉、押し入れの布団とか、本棚とか使っていいからの」

俺や銀時が入学する前から、坂本のマンションはたまり場になっていたらしく、生活に必要な布団やら何やらは揃っていた。

「サンキュ。悪ィな」
「構わんぜよ。…高杉」
「ん?」
「今日からよろしく、の」


END



後書きです。

What's on your mind?=何を考えているの?
です。
坂本と高杉は、本当はお互いに好き合ってることに気付いてないし、それどころか言っちゃいけないと思ってるし。
2人が実は、コイツらお互いにお互いを特別に思ってるんじゃあ?って、唯一気付いた桂は、自分の気持ちにようやく気付いたものの、4人の中で、一番頻繁に連絡取ってる銀時の気持ちに気付いてません(LACRYMOSAで何のために銀時が頑張ってステファン取ってたと思ってんのさ!)

銀時は、坂本が高杉に本気だって気付いてないし、もしかしたらこの時点では、坂本のことも、桂のことと一緒くらい好きかもしれない。

そんな、4人が4人とも、それぞれに「何考えてんの?」って思ってるもどかしい話でした。
書いてて何回「イー」ってなったか(苦笑)
収拾つかなくなったので終わりますが、これも続きます。

LACRYMOSAに引き続き、柳 翔哉様、可愛いまた子になりました!ありがとうございました(タイトルも!いきなりどれがいい?とか聞いてごめんなさい)


「雨のち晴れを待とう」に続きます






















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