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嫌なことってのは、どうしてこう、立て続けに起こるもんなんだろうなァ。

Twilight・Avenue


なんとなく意見の合わねェ先生ってのはいるもんだ。でも履修しちまった以上仕方ねェ。たまには行かないと…と、思って行ったらいきなり休講になっていた。誰かと暇でも潰そうと、まずは高杉に電話をかけてみたら、坂本が出た。

『すまんのー今、晋起こしちょるとこなんじゃ』
ってことは1時間は無理だよな。俺が諦めて電話を切ろうとしたら。

『ほい、晋。チュウしちゃるから起きィ』
『………抱っこ』
『ほいほい』

朝からイチャついてんじゃねェっての!ってゆーか、こっちからかけてんだぞ!イチャつくなら電話切れよコノヤロー!

とにかく俺は、強制的に通話を終わらせて、次は銀時に電話をかけた。

『ごめーん、銀さん今からバイトよぅ!…え?学校?サボりサボり!』
こいつも駄目だったか。相変わらずバイト三昧で大変なヤツだよな。どうしてそこまでバイトすんのかなんて知らねェけどよ。

仕方なく、喫煙所でボケっと煙草吸ってたら、いきなり同じ学部の女の子に告白された。

「土方先輩、好きです」
嬉しいっちゃ嬉しいけどよ、残念ながら女には興味ねェんだわ。
いやいや、その前に俺には総悟がいるし…って、なんとか言葉を選んで断ってたところを、3回の山崎さんに見られた。
言いふらすような人じゃねェんだけどよ、訳知り顔で去って行ったのが気になる。変な勘違いしてなきゃいいんだけど。

朝からこれだけ続いただけでも相当へこむってのによ、学校の後、バイトの家庭教師派遣元の事務所に行ったんだ。
なんでかってと、先月末に引っ越しをして、総悟と一緒に住み始めたんだけど、今まで教えてた子のところに通うのが遠くなっちまったからだ。教えてる子が中3だからよ、夏休み入る前に、誰かいい人いたら俺と変わってやってほしいなァって。
さすがに片道1時間半かけて通うのは俺も辛いからさ。

さっさと決めてくれって話をつけに行ったらさ、『わかりました来週からなんとかします』って。できるんなら最初っからなんとかしやがれってんだ。

その、事務所のビルで、多分同じような用件で来たんだろう女の子と、エレベーターに乗り合わせた。何回か面識はある子で、確か外大だったはずだ。

「土方君って、モテそうですよね」
「いや、そうでもねェよ」

蘇るのは今朝のこと。今日だけはその話題に触れて欲しくなかった…って、この子に対して思っても仕方ないんだけど。

「そんなこと言って。…で、どういう男がタイプなんですか?」
(…………はい?)

当然だけど、こんな『面識がある程度』の子にカミングアウトするわけなんかない。俺は普通にしてるつもりだから、坂本みたいに『歩くカミングアウト』をやってるって意識もない。

「なーんてね。気に障ったらごめんなさい」

あたししょっちゅう二丁目に飲みに行くの。最近見た目で判断つくようになってきてねェ、土方君もそうかなって思っただけなんだァ、ごめんね。だってさ、トミーなんか着てるしさァ…とかなんとか(途中から聞いてなかった)。

言いたいことだけ言って、女の子はさっさと行ってしまった。いや、当たってんですけど。見た目でわかるようになってきたって言ったか?確かに言うだけのことはあるぜ、ウン。
でもさ俺、トミーヒルフィガー(TommyHilfiger)が俗に『オカマブランド』って呼ばれてるってことなんか、全く知らなかったんですけど?今度服買う時には、ちょっと考えよう。ほかにもオカマブランドってありそうだしな。そうだ、きっと総悟なら知ってるよな、聞いてみよう。

そんなことを思いながら、ビルの外に出たら、猛烈な雨が降っていた。こういう時に限って高いジャケット着てたりするんだよな。駅までダッシュして、急いで帰ろうとしたんだけど。そのせいで水溜まりに思い切り足を突っ込んでしまう。ほらな、また。今日に限って革靴履いてんだ。

電車の中で見た携帯webのニュースで、季節外れの台風4号が、静岡に上陸したことを知る。明日の昼にかけて東京直撃だと。こりゃ明日は学校休みだろうなって、ようやく少しだけ、いいことがあったような気がしながら、引っ越したばかりの新しいマンションを目指す。びしょ濡れになりながらだけど、とにかくこの天気なら総悟も帰ってるだろうと思って。
なんで傘を買わなかったかっつーと、風が強くなってきたから、傘なんか役に立たねェと思ったからだ。

もう、あと少しでマンション到着…って時に、横を通った車に、盛大に泥水をぶっかけられた。
左肩から下の身体半分がビシャビシャのドロドロで。このジャケット、もう駄目かもしれねェ。さっさと家入って、シャワー浴びよう。

「総悟ただいま…」
帰ったら、総悟の姿がなかった。こんな天気だってのに…。総悟から出かけるって話は聞いてなかったけどアイツ、バイトなのかなぁ。

正直、総悟は何も言ってくれないし、高杉も知ってるみたいなんだけど、言葉を濁すって感じでさ。だから余計、俺は総悟のバイトがなんなのか、どんなもんなのか、薄々感づいちまってる。
高杉はさ、俺と総悟は『何でも言い合えて羨ましい』って言うんだけど、実際はそうでもねェんだよな。『どんなバイトしてんだよ?』って、たったその、一言が聞けねェんだから。

ってか総悟も、それくらい話してくれたっていいのになって感じだ。いや、確かに総悟が金目的とは言え、他のヤツとセックスしてるなんて嫌だけどさ。耐えらんねェっちゃ耐えらんねェし、辛いのは辛いんだけど。

でも、あの総悟を俺1人で満足させられるか…って言われたら、そんな自信は俺にはこれっぽっちもねェ。

総悟が高杉と最初に浮気した時だって、元はと言えば喧嘩してて1週間ヤラせなかったのは俺だ。あの総悟に1週間も我慢しろってのが無理な話だなんて、俺は知っていたはずなのに。

だいたい、普通に考えたら5年以上付き合ってて、今まだセックスレスになってないこと自体が奇跡に近いだろ?たまに遊んでリフレッシュして、総悟がまた俺んとこに帰って来てくれるんなら、それでいいって、わかってるはずなんだけど。

(やべ…。さっさとシャワー入ろう)

なんだか、総悟のことばかり考えていたら、泣けてきた。今日は駄目だ、変なことばっかり続いたせいか、めちゃくちゃマイナス思考になってる。

総悟は、どんくらい俺のこと好きでいてくれてるんだろう。今頃どっかの誰かとヤってんのかな。相手はどんなヤツなのかな。総悟って、結構坂本と似てて『ヤルだけなら誰専』っぽいんだよな。

正直、総悟に『一緒に暮らそう』って話した時、OKしてくれるかどうかは五分五分だと思ってた。アイツが姉ちゃん大事にしてんの知ってっからさ、離れたがらないかなって。でも、すごくあっさり『いいでさァ』って言ってくれたから俺は嬉しくて。もちろん、一緒に住みたいなんて思ったのは高杉と坂本の影響なんだけどな。

その高杉に『一緒に住んでたってな、いいことばっかじゃねェんだぜ』って言われて、そんなことはないと思ったけど。アイツの言うことは正しかったよな。一緒に住んでなかったら、こうやって、連絡ナシで帰ってこない総悟がどこに行ったのかって、気を揉む必要はなかったはずなんだ。

だけど、会わないでいられるような想いじゃなかったから、俺は。毎日総悟の顔見ていてェって、思っちまったから、俺は。

ずっとガキの頃から側にいたからさ、会えないってことがどれだけ辛いことなのか俺にはわかってなくて。受験だって理解してたのに、1月から3月の半ばまで会えなかった時はもう地獄だった。ほとんど毎日連絡取ってたって、総悟に会いたくて会いたくて。自分の受験の時は、いっぱいいっぱいでそれどころじゃなかったけど。

(早く帰ってこいよ総悟…)

こんなへこんだ気分の時くらい、側にいて欲しかった。普段なら、どうってことねェって、思うようにしてる総悟のバイトも、今日だけは嫌だった。今日だけは、総悟が他のヤツとヤってることなんか考えたくもなかった。その相手が、たとえば高杉とかだったとしても。 今日だけは、嘘でもいいから『十四郎しかいらねェよ』って、言って欲しかった。

酸性雨と泥水と、涙で汚れた全身をきれいに洗って風呂から上がったら、夏だってのに寒気がしてきた。エアコン効き過ぎだろ。…アレ?待て、俺、エアコンなんか入れてねェぞ。

下着だけ履いて、頭からバスタオルを被ってリビングに行ったら、総悟が俯せに寝転がって本を読んでいた。エアコン直風の当たる場所に。

「総悟…」
「早かったんですねィ」

顔だけをこっちに向けて上げた総悟は、あの暴風雨の中帰って来たはずなのに、そんなに濡れてないみたいで、いつもと同じ表情だった。ボーっと、突っ立ったままの俺を不思議そうに見上げてる。

「事務所行ってきたんじゃねェのかィ?」
「…ァあ、行ってきた」
総悟が投げ掛けた質問に、慌てて答える。

「総悟は…?」
どこ行ってたんだ?とは言いにくくて。

「お前がもっと遅ェと思ってたから、岡田に数学習ってやした」
「すう、がく…?」

そう、大学の数学全くわかんねェって言いながら、読んでた本を見せてくれる総悟。確かに『解析学概論』と、表紙には書かれてた。台風が上陸したってニュースを聞いて、帰ろうとしたら、岡田が車で送ってくれたんだとのんびり話す総悟を俺は、動けないままやっぱり突っ立って見ていることしかできなかった。

「岡田の野郎、絶対変態ですぜィ!こんなモン一発で理解できるなんざ、頭の造りがどっかオカシイに決まってまさァ!だいたい10次元ってなんなんでさァ?そんなもんどうやって…………」

(バイトじゃなかったんだ…)
俺の頭にあるのはそれだけ。さっきまで風呂場であんなに『今頃どっかの誰かと…』って、思ってたのに。違ったんだ。

「…かた。…ひじかた!………十四郎!」
「はいっ」

名前を呼ばれて我に返る。『解析学概論』をテーブルの上に置いて起き上がった総悟は、不思議そうに俺を見つめ返した。

「なんかあったんですかィ?」

さっきから呼んでたのにボーっとして、って言われて。手招きする総悟の側に寄って行って隣に座った。相変わらずバスタオルは頭から被ったままだったから、俯いてしまえば総悟の顔が見えないんだけど。今の俺のヒドイ顔を、総悟には至近距離で見られたくなかった。

「総悟…」
「どうしたんでさァ?」

今日はやたら1日が長かった。今朝、俺が家を出た時間から今まで、12時間くらいしか経ってねェってのに、何日も会えなかったような気になってる俺。とにかく、変なことが立て続けに起こりすぎて、早く、早く総悟に会いたかった。何にもしてくれなくていいんだけど、総悟の側にいたかった。総悟に側にいてほしかった。

「何かあったんですかィ?」

話したら聞いてくれそうだけど、何から話せばいいのかわからないくらい、頭が混乱してる。頭ん中ぐちゃぐちゃで、何て言ったらいいのかわかんねェ。

ただ、さ。何にも聞いてくれなくてもいいから、ただ側にいて欲しいって、それだけは唯一ハッキリとわかっていた。

「総悟。………抱いて」

ほとんど言ったことのねェ、マジで精神的に限界の時しか言えねェ言葉を、言っちまった途端涙が溢れてきた。バスタオルで顔は隠れてるけど、いくらなんでも落ちすぎだ、俺。

「十四郎、来な」

頭の上のバスタオルをふわりと床に落とされて、顔を上げたら僅か10センチ程の距離のところにあった総悟の顔が、きれいに微笑んでいた。

「泣くんじゃねェよ」

頬に手を当てて、親指で涙を拭ってくれた総悟にそのまま抱きしめられて、唇が重なってた。普段セックスしてる時は、当然キスなんてしてもらえねェからさ。柔らかい総悟の唇の感触と、抱きしめられている安心感にますますボロボロ涙が溢れてくる。ゆっくりと口の中を隅々までなぞっていくような甘いキスに身体中の力が抜けた。

髪の毛を梳くように頭を撫でられて、離れたと思った総悟の唇は俺の耳たぶを甘く噛む。

「んっ、ァ…」
耳の中まで舌を突っ込まれて舐められる。くちゅくちゅという音がやたら大きく聞こえて、俺は背中の方までゾクゾクくる感覚に身を震わせた。

「こっちも」
独り言みたいに呟いた総悟が今度は反対の耳を舐め始める。それから、総悟の唇と舌は、首筋をゆっくり這っていった。

「ァっ、んあっ、ぁっ、はっ…」

普段、痛めつけられることで快感を得る俺の身体だけど、こんな風に優しく舐められるのも、本当は嫌いじゃない。なんだか、焦らされてるような気になるからだ。普段は拘束と痛みによって、スイッチが入った瞬間からMAXに引き上げられる身体の快感だけど、今日は違う。ゆっくりと、じわじわ蝕むみたいに、快感は俺の身体を中枢奥深くから痺れさせる。

普段はクリップと重りで千切れるんじゃねェかって程、痛めつけられなきゃ足りない俺の乳首を、ペロンと舐めた総悟が上目づかいに俺の真っ赤になってるだろう顔を見上げていた。

「十四郎、あっち行きやすかィ?」

マトモな思考能力なんかなくなった今の俺でも、それが多分寝室のことを指してるんだってのはなんとなくわかったんだけど。俺は首を横に振った。

「ぃ、ぃゃ…」

移動するために、この行為を中断されるのなんて嫌だった。それに、わざわざ布団の上になんか行かなくても、床に転がされて乱暴に抱かれるのなんて慣れてたから。

「そうですかィ」

物足りないとさえ感じてしまいそうな程に、柔らかく甘く乳首を舐め続ける総悟は、左腕で俺の背中を支えて、右手の指の腹で、もう片方の乳首をコリコリと転がし始める。

「硬くなってきやしたねィ」
「ゃっ、や、そ、ご…っ」
片方は舌で、片方は指で。緩く乳首を弄られてるだけだってのに、俺の中では魔法でもかけられたみたいにどんどん快感がせり上がってくる。

「ァっ、ハっ、ぁあっ、そ、ご、ァ、そう、ごっ」

たっぷり時間をかけて乳首だけを攻められる。気持ちいいのは気持ちいいんだけど、痛めつけてくれないんだったら早く下も触って欲しくて。俺はさっさと下着を脱いでしまいたくて、デカくなるどころか、はしたなく下着を濡らしているだろう俺のモンを見て総悟に蔑んで踏み付けてお仕置きして欲しくて。

「はい、ちょっとこっち来なせェよ」

脇の下に腕を通されて、総悟にもたれ掛かるような体勢を取らされたと思ったら、腰が浮いて、するりとケツの方から下着が脱がされた。

「はい、足抜きなせェ」

ペタンと尻を着いて座った俺から、ガキにするみたいに下着を脱がした総悟にそのまま押し倒される。一瞬視界に入った総悟の金髪。チュッと、触れるだけの口づけを唇に落としたあと、総悟は俺の中心を口の中に入れて舐め始めた。

「そ、そごっ!なにっ、ふぁあっ…」

何やってんだ!って言葉は、喘ぎ声のせいで言葉にはならなかった。俺が総悟に奉仕するのは当たり前だけど、こんな、総悟が俺のなんかを舐めてくれるって、この5年でだって、数えるくらいしかない。
だって、最初ん時と…あと、いつだっけ。っつーか、お前が俺のなんか舐めたら駄目だろうがっ!

とんでもないことになってんのはわかってる。だけど、そのとんでもない状況のせいで、パニックになって思考が追い付かない俺の中の快感はあっという間にてっぺん目指して昇り詰めてゆく。

「ゃっ、総悟っ、出るっ、出る出る…っ」
「いいですぜィ」

裏筋に舌を押し付けて総悟はいっぱいいっぱいの俺の顔を見ながら言うんだけど。とてもじゃねェけど総悟の口ん中になんか出せるはずがねェ。

「ぃゃっ、駄目っ、無理っ、そご…っ」
ぎゅうっと拳を握りしめて、掌にきつく爪を押し当てながら迫ってくる絶頂感に、必死で耐えた。

「イってもいいでさァ」
「ゃだァっ!総悟離してっ、総悟の口ん中ゃだぁっ、許して総悟っ、許してぇっ」

とっくに限界なのに。本当は今にもイってしまいそうなのに、このままじゃ総悟の口の中に入っちまう。縛られてイケない状態より辛い現状に、俺は泣きわめきながら口癖みたいに総悟に許しを乞うていた。

「いいって言ってんのに」
ようやく俺から口を離してくれた総悟が先端を握りしめてぐりぐり上下に扱く。

「ほら十四郎。イっていいですぜィ」
総悟が何を言っているのか、もう俺の頭では理解できなかった。ただ、総悟の口が離れて手に変わったんだってことだけは感触でわかって。

「んあああああ…」
我慢も限界の限界だった俺はあっさりと総悟の手の中に欲望を吐き出していた。

我慢しまくったせいで震える身体をなんとか起こして、肩で呼吸しながら見上げると、総悟は今俺が出したばっかりの精液を自分の指に塗りたくって。

「総悟、何やって…」
「起きなくていいですぜィ」
「んっ、ぁああっ」

するりと俺の身体の裾を撫でたかと思うと、総悟の指がつぷん、と俺の中に入ってきた。

ゆっくりゆっくり慎重って言ってもいいくらいの速度で俺ん中に入ってくる総悟の指。

「そ、ご…っ!なん、でっ、ァっ」

俺ばっかりこんなに気持ち良くしてもらって。総悟はまだ、服すら脱いでねェってのに。当然のことながら、総悟にイカせてもらったんだから、どれだけ後ろが疼こうと、総悟が満足するまで口で奉仕しなきゃいけないんだと思ってた。

「今日の俺はこういう気分なんでさァ」
前立腺を刺激されて身体がピクンと跳ねる。総悟の指が2本から3本に増えて、ゆっくりゆっくり入口が拡げられてゆく。

「ァ、んあっ、そ、ごっ、総悟っ」
「やっぱローション取ってこねェとキツイでさァ」

そんなものどうでもいいのに。俺は切れなきゃそれでいいってんだ。指が3本入ってんだから、もう切れることはねェと思う。だから、さ。お願いだから総悟、早く入れてくれよって思っても、そんなはしたないおねだりできるはずがねェ。

「ま、なんとかなりやすかねィ」
ずるりと俺の中から指を引き抜いた総悟がようやくベルトに手をかけて、下着ごと七分丈のカーゴパンツを脱いだ。

「総悟、俺っ…」
舐めようと思って起き上がった俺を制した総悟は、一瞬動きを止めて。

「あー、やっぱそのまま。十四郎、来な」

いらねェと思ったけど、やっぱり少し舐めてって言われて、俺は喜んで半勃ちになっていた総悟の中心に貧りついた。喉の奥の奥まで使って、舌を這わせて唇で総悟自身を扱き上げる。

「あー、十四郎。やっぱお前にしてもらうのは世界一でさァ」

総悟が言ってくれた言葉が嬉して、また泣けてくる。こんなこと言ってもらえるなら、喉の奥まで突っ込み過ぎていくら苦しくたって、耐えられる。

いつものことだけど、舐めてるだけで身体が熱くなって、さっき一度、達したばかりだってのに、また俺の股間には血液が集まってくる。

「そんなもんでいいでさァ」

顔を上げたら、総悟に抱きしめられてそのまま、またキスされた。手探りみたいな感じで、するする後孔を撫でられたのは、場所を確認してたんだと思う。腰に回した腕で、俺の身体を支えながら、総悟の身体の中心が俺の入口に宛われて。腕の力加減だけで腰を落とすよう命令されたのがわかったから、俺はゆっくり腰を下げて、総悟自身を飲み込んでいった。

「ん、んんっ、んー」

唇は塞がれたままだったから声は出ないけど。一番太い部分が入った後は、もう思い切り腰を降ろして。俺は総悟の首と頭の後ろに腕を回し、唇を重ねたまま激しく自分で上下に動き始めた。さすがにローション無しはちょっと痛かったけど、普段の責めでの痛みに比べたら、どうってことはなかった。

「ァあっ、そう、ごっ、そ、ごっ!!」

動きが激しくて、唇が離れてしまった後は、俺の口からは総悟の名前しか出てこなかった。夢中で腰を振ってる俺の背中や腰を撫でてくれて、時々乳首に甘い快感をくれて。

「総悟っ、噛んで…っ」
「今日はそういう気分じゃねェんでさァ」

めちゃくちゃ勇気振り絞って総悟におねだりしたのに、あっさり却下されちまった。どうしよう、せっかく総悟と繋がってんのに、総悟が入れてくれてんのに、痛みがなくてイケなかったら。

「十四郎、イケそうですかィ?」
「ァ、ぁあ、んっ、んんっ、そう、ごっ?」
ぎゅっと俺の腰を押さえた総悟が、もう片方の手で俺の中心を扱き始めて。

「うはぁぁぁぁ…っ」

直接与えられた刺激に、背中を仰け反らせて喘ぐ俺を総悟は下から突き上げる。痛くないけど気持ちいい。だって、総悟がしてくれてることなんだから。総悟が、縛りもしねェで俺ん中に入れてくれてるなんて、奇跡みてェなことが、実際に起こっちまってるんだから。

そりゃ、泣き叫んじまう程苦しくて痛ェのを我慢した後の快感ってのはさ、もうなにもかもわからなくなっちまうくらいで、頭ん中真っ白になって、そのまんま意識が吹っ飛ぶこともあるくらいのスゲェ強いもんなんだけどよ。今日の気持ち良さはなんか違う。いつもの感じじゃねェ。

なんてェんだろう、幸せすぎて天まで昇っていく感じ。俺、このまま溶けちまうかもしれねェ。

「十四郎、イキやすぜィ」
俺は口をはくはくさせながら頷いた…つもりだったけど、ちゃんと総悟に伝わってるかどうかはわかんねェ。

「十四郎」

名前を呼んだ総悟の唇がエロく半開きになっていて舌が覗いてる。多分キスしろってことだって、勝手に思った俺は総悟にしがみついて唇に貧りついて。

そのまま総悟の手の中に俺は2回目の精を放つ。総悟の中心も、俺の中でどくんどくんと脈打っていた。

「総悟ォ…」
呼吸が落ち着いてから、細い肩をぎゅうっと抱きしめて、顔を埋めていたら、総悟は背中を撫でてくれた。

「まだ泣いてんですかィ?」
「ん、ぅっ…」

今頃、総悟は俺の知らないどっかの誰かとヤってんじゃないかって、そんなことを悩んでいたついさっきまでのことが嘘みたいで。何にも聞いてこないけど、それでもこんなに優しく抱いてくれるのが総悟だったんだって、俺を身体だけじゃなくて心まで満たしてくれるのは総悟だけだったんだって、俺は再確認してしまって。

だいたい、縛ったりすんのも、最初は俺が『して』って言ったんだよな。どうしようもねェ俺の変態体質を満たすためだけに、いろいろ覚えてきてヒデェこといっぱいしてくれるようになったんだよな、総悟は。

自然と総悟の中心が俺ん中から抜け出ても、俺はそのまんま総悟にしがみついて、離れられなかった。

***

ぐしゃぐしゃに泣いたままの俺は、総悟の腰にしがみついてまだ震えていた。

俺がずっと、抱き着いて離れなかったせいで、外れかかったゴム(いつの間につけたんだろう)の中から総悟の出した精液が零れてきて。 「十四郎、1回離れなせェ!」

俺は、床に零れたモノを舐めてきれいにしようと思ったんだけど。総悟が『今日はそんなことしなくていいでさァ』って。

軽くシャワーでお互いにベタベタなところだけ流して(一緒に入っちまった!)、部屋着に着替えた後、総悟がおいでって言ってくれたから俺は総悟よりデカイ身体を縮こませて、総悟の腰にしがみついて。気の済むまで泣いた。その間、総悟はずっと、俺の好きにさせてくれていて、頭や背中を撫でてくれた。

「落ち着きやしたかィ?」
身体の震えが小さくなってきてからやっと、総悟は俺に言葉をかけてくれた。

「そんなになるまで我慢するんじゃねェ」
今俺が泣いてんのは、辛かったことを我慢してたからじゃないんだけど、上手く言葉にならなかった。
俺の脇の下に腕を通して抱え上げた総悟に、ぎゅうっときつく抱きしめられる。

「十四郎、愛してまさァ」
「そ…、ご…。ふっ、ぅっ」

滅多に言ってもらえない言葉を言ってもらえた嬉しさで、俺の瞳からはますます涙が溢れてくる。大量に。今日程、それを聞きたかった日はないかもしれないからだ。

「また泣いてるんですかィ?もう二度と言ってやらねェ」
「ぅっ、ふ、ゃだっ」
「絶対ェ言わねェ」

そう言って、やっぱりきれいな顔で笑いながら、総悟はずっと俺の身体を抱きしめたままでいてくれた。散々泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて。気の済むまで泣かせてもらったら、なんだかすごく、スッキリした感じだった。

案の定、季節外れの台風の影響で、次の日は学校が休みになったから、1日中布団の中で総悟に抱き着いて過ごした。

ただこうやって、相手の体温を感じているだけで幸せな気分を味わえるだなんて、やっぱり総悟は特別なんだって。伊達に5年も付き合ってこれたわけじゃないんだって、ちょっとだけ、自信を持てた日だった。


END



甘々沖土ーっ(笑)季節外れの台風4号とは、則ち「マンニィ」ですよ!あの日の沖土バージョンです!

なんで今更マンニィかっつーと、大学2年7月って、坂高も桂銀もH話があるんで(桂銀は「キスの雨が降る夜」)、沖土もあってもいいかなァと。あとは、「沖土はSM以外のHはしないのか?」って質問が来る度に「時々してます!」って返信してたにも関わらず今まで書いてなかったので。だから前から言ってんじゃん!オッキーはめちゃくちゃ優しいんだって。本当は。でも、泣いてる十四郎の頭撫でたりしてあげられたのは、まさに高杉君で学習したからなんですけどね(笑)

あー、タイトルは、一節が土方君の思考と被っただけさ(この曲頭ん中で出てくるの2回目なんだよな…)ちなみに本家はカタカナ。

あとはトミーヒルフィガーか。トミーが一部で『オカマブランド』と呼ばれているのは事実ですが、トミー=オカマじゃないんで!そういう偏見を持つのはやめましょう!ただ、ゲイでトミー好きな人が多いってだけの話さ。土方君に声をかけた女の子は、安易な言葉で相手を傷つけている(しかも本人には自覚がない)、勘違い馬鹿女の典型ですからね!皆さんはそうならないでください!






















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