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寝付きは悪い方じゃないし、3時間も寝れば大丈夫なのは体質なのだけれど。

それは朝の光


大学はテスト期間に入っていた。もう3回ともなると、テストは3つ、レポートもたった1本しかなくて、特別大変だということもない。
でも、一緒に住んでいる晋助は、まだ1回で。トイレとお風呂以外の家にいる時間は、自分の部屋から出てこない状態が続くこと今日で3日目。ご飯は、コンビニで買ってきたおにぎりやサンドイッチを食べているらしい。

前期の試験の時もそうだった。既に、一緒に住んでいた自分達だけど、あの時はまだ付き合ってもいなかったから2週間近く、ほとんど顔を合わさなかった。

(前期に我慢できたのは、まだ何にも知らんかったからじゃき…)

晋助が泣きながら告白してくれたのは夏休み、お盆の時。そう、つまり、前期と今とでは、関係が違う。

「なんじゃ、寂しいのぅ」

付き合うことになってからずっと、このベッドで毎晩抱き合って眠った。晋助を抱きしめて、晋助の体温を感じながら眠る心地よさに病み付きになってしまった。今1人でこう横になっていても、左側が物足りなくて寂しくて、なかなか眠くならない自分。

「レポート書くから邪魔すんじゃねーぞ」
そう、言い付けられてはいたけれど、どうしても気になって晋助の部屋をこっそり覗いてみる。

晋助は、パソコンデスクに突っ伏したまま、眠っていた。パソコンの画面が、スタンバイ状態ということは、眠ってしまってからかなり時間が経っている証拠。

「晋、晋。風邪ひくぜよ」
エアコンも電気のヒーターも入っているとは言え、今は1月の末。そんなところで寝ていて風邪なんかひいてしまったら、テストどころじゃない。

パソコンデスクの横には古典や歴史の本が5冊。床に積んである分は、きっともう読み終わってレポートも書けたのだろう。

「晋、ほんに風邪ひくぜよ!」

揺すったくらいじゃ起きないことなんて、毎朝起こしている自分が一番よく知っている。だからといって、晋助を寝室まで運んでベッドに寝かせたら、起きた時にものすごく怒られそうだし。ちょっとだけ寝て、起きてからまたレポートの続きをやるつもりだろうことは間違いないのだから。

結局、あれこれ悩んだ末に、晋助に厚めの毛布をかけてやって、デスクの上に栄養ドリンクを置いてやって。空気が乾燥しないよう、濡らして搾ったバスタオルをハンガーに吊して、お湯を入れたバケツを部屋の隅に。それくらいしか、してあげられないのだ、自分は。

「晋、頑張っての」
静かに上下する背中にそう告げて。自分は晋助の部屋を後にした。

***

翌朝。軽い睡眠不足を感じながら、テレビで朝のニュースをつけ、キッチンでベーコンを焼いてその上に目玉焼き。食べるかどうか、わからないけど、一応晋助の分も2人分。自分は半熟が好きだけれど、晋助は両面しっかり焼いて黄身も固い方が好き。

「辰馬ァ」
晋助が、自分から起きてきたことに、まずは驚いた。でもきっと、起きたのはずっと前で、またレポートの続きをやっていたんだろうなと考える。

「毛布、ありがとな」
お前は寝てて寒くなかったの?なんて、畳んだ毛布を寝室に運びながら言うものだから。

「1人で寝ちょったら、毛布があっても寒いもんじゃよ」
晋助の体温がないと寂しい。晋助のきれいな肌に触れられないのは、むしろ辛い。

「ゴメン」
こんなに素直に晋助が謝るなんて。しかもレポートなんて誰のせいでもないというのに!一瞬、熱でもあるんじゃないか?なんて考えてしまった。エアコンで喉がやられてしまったとか。

けれど晋助は、いたって普通の調子で話し始めて。いつも通りが一番可愛い。

「レポートできたし、ヤバイやつは今日で終わるから、さ」
残りは徹夜で勉強しなくても単位は取れると思うって。

「だから、今日からまた…」
(一緒に寝よう)

一番聞きたい最後の言葉は、恥ずかしがってまず口に出してはくれない。でも、それが、自分が心の底から好きになった晋助らしいから。

「さ、朝ご飯食べて、頑張って行ってくるんじゃよ。送っちゃるからの」
「ありがと」

疲れの抜けない顔ながら、ふにゃっと笑って見せてくれた晋助。晋助のためなら、毎日の送り迎えだって、全く苦にならない。1人で行かせて倒れられるよりは、四六時中でも、自分がついててあげたいと思うのだ。

2人で暮らしているのだと、実感できるこんな。何気ない朝の雰囲気が一番好き。


END






















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