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※「ひとりにならないで」の続きです

さすがに昨日は渡してやった睡眠薬を飲みはしなかったらしくて、銀時は今日も目の下に隈を作って学校に来た。

ずっとそばにいてあげるから


『お前、また寝れなかったのか?』

古典の和歌だけを扱った授業で、履修してる人数が少ないから会話ができない。だから俺は、ノートにそう走り書きして隣に座った銀時に差し出した。

『でも昨日は4時間くらいは寝れたんだよぅ』
『4時間じゃ足りねーだろー?』
『大丈夫大丈夫!パー子の時はいっつもそんなモン』
ノートを取りながら授業を聞きながら、俺と銀時は筆談を続けていた。

『しんちゃんは心配しなくていいからねん』
誰がしんちゃんだ誰が。

ノートの端に書かれていく文字を読んでいる限りは、銀時は大丈夫そうなんだけど、心配するなって言われてもな。ただ、いくら俺が心配したところで、何にもできないんだろうってことは、嫌という程理解していたけれど。

今日は小太郎も辰馬も学校に来る日だし、辰馬が言うように小太郎がついてたら大丈夫かなって。とりあえず俺は、机に突っ伏して眠りだした銀時を横目で見ながら、無理矢理納得することにしたんだ。

***

後期が始まってからほとんど、銀さんはマトモに睡眠を取れていなかった。それでも昨夜はバイトが休みで4時間。途中何度も起きちゃったけど、一晩中ヅラに甘えてずーっと抱いててもらったから眠れた方でさ。

授業が終わった後、文学部棟の喫煙所にいたら辰馬とヅラが迎えに来てくれて。晋ちゃんと辰馬は図書館に行っちゃったから銀さんとヅラは一緒に帰ろうと思った。もちろん今日はバイトがあるからさ、ヅラん家で少し休ませてもらってから行こうと思って。

2限目の時に少し、晋ちゃんがいろいろ聞いてきてたけど、その後は何も言われなかったし、辰馬の前でもいつも通りヘラヘラ笑ってたから、2人共余計な心配はしてない…と思う。

正直、あの2人には心配させたくないんだよね。

本当はヅラにも心配させたくない。ヅラのことが大好きだからこそ、いっつも元気な顔を見せてたいってのが銀さんの本音なんだけど、1人でなにもかも頑張るにはもう、限界のところまで来ちゃってた。
体力的にも精神的にも追い込まれていっぱいいっぱいになってきててさ。ヅラがいてくれなかったら銀さん、もう壊れちゃってたんじゃないかと思う。
いくら銀さんが弱音を吐いても本当は弱いところを見せても、辛くて泣いちゃっても、黙って抱きしめてくれるヅラに感謝とか愛情以上の想いを感じてしまって。もう、この気持ちを、何て言ったらいいのが銀さんにはわからない。言葉でなんか、言い表せない。

ヅラと一緒に学校から駅まで歩いてヅラのマンションのヅラの部屋に辿り着くと、なんだかものすごく、肩の力が抜けた気がして、『やっと落ち着いたー』みたいな気になって。

銀さんの定位置になりつつあるテーブルの前にペタンと座り込んだら、急に猛烈な眠気が襲ってきた。

(あ…ヤバイ…)

バイトに行くのにここを出なきゃならない時間まで、あと3時間あるよね。ちょっとだけ、ちょっとだけなら寝ちゃってもヅラが起こしてくれるかな…?

「ヅラァ…」
キッチンで晩ご飯の用意をしてくれてたヅラを声だけで呼ぶ。もう、眠くて眠くて、立ち上がる気力がないよ。

「銀さん30分だけ寝るからさァ、30分経ったら起こしてェ」
「30分でいいのか?」

上半身を支えていられなくなって、だらしなくテーブルに突っ伏した銀さんの隣に座ったヅラが頭を撫でてくれる。あー、もう気持ち良くてどうにかなっちゃいそう。

「うん、30分でへーき」
あんまり長く眠っちゃったら、また変な夢見そうだし、起きれなくなりそうだし。身体がこんな状態でも、生活かかってるからバイトを休めないってのが銀さんのキツいとこなんだけど、こればっかりは仕方ないんだよね。

「寝るならベッドに行かないか」
心配そうなヅラの声は、どこか遠くの方で響いてるようだった。何か言ったつもりだったけど、何て返事したのか、自分では全くわからなかった。

***

どこまで走っても走っても走っても真っ暗闇。銀さんが全速力で走ってるってのに、後をヒタヒタと追い掛けてくる足音までの距離は、いっこうに離れない。

『…んとき、銀時!』
「た、助けてヅラぁっ!」
「銀時っ!」
突然頬に感じた痛みと共に、視界が開けて明るくなった。

「起きろ銀時っ!」
またもう一発。頬をひっぱたかれたみたいだった。

「……ヅラ?」
「銀時…っ!」

目の前にあったのは、病人みたいに青くなって銀さんを覗き込むヅラの顔。

「すまない、痛かっただろう…?」
いくら揺さ振っても起きなかったからと、今にも泣きそうな表情で、ヅラは銀さんの両頬を両手で包んでくれた。

(なんか俺、変な汗かいてる)

ヅラの両手がやたら冷たく感じる。ひんやりとしたヅラの手のおかげで、少しずつ頭が覚醒してきて。また変な夢を見てしまってうなされていたんだと、だからヅラが、ひっぱたくなんてらしくない乱暴な方法で銀さんを起こしてくれたんだと、そういうことが、じんわりと寝ぼけた頭でもわかってくる。

「ヅラ…」

上半身を起こして、テーブルに突っ伏して寝ちゃったはずなのに、銀さんはちゃんとヅラのベッドに寝かされていることに気付いた。もしかしてヅラがここまで引き上げてくれたのかな。ちょこっとだけど銀さんの方がデカくて重たいはずなのに。

「ヅラ…」

もう一度名前を呼ぶと、ヅラは銀さんの頭をぎゅうっと胸に引き寄せて、抱きしめてくれた。銀さんの額の脂汗が服に着いちゃうけど、そんなことまるっきり気にしていないみたいで。

抱きしめられて安心して落ち着いてくる銀さんとは逆に、ヅラの腕は小刻みに震えていた。

「どうして…」
代われるものなら代わってやるのに、というヅラの低い呟きが聞こえた気がした。

「ヅラ、ごめん。…ごめんね」
銀さんのせいでヅラまでこんなに苦しめている。そう考えたらどうしようもないくらい苦しくて、辛くて。

勝手に涙が溢れてきた。
「ヅラ、ごめ…んっ」

しゃくり上げるくらい本気で泣いちゃってたけど、ヅラはぎゅうっと銀さんを抱いたままで。

「謝る必要はない。俺は…」
もっとお前の側に居てやりたいのに、と。それでお前の負担が少しでも軽くなればと。奮えながら呟くように話すヅラに俺は思い切りしがみついた。

***

相変わらず課題に追われている辰馬が、脇目も振らず勉強している前の席を陣取って、俺は俺で古典を読んでいた。4人掛けの席だけど、今は2人で占領中。

辰馬の前にはノートパソコンと、分厚い本が3冊。大学院の試験はいよいよ来週だから、さすがの辰馬も切羽詰まってる、そんな感じ。

勉強してる時の辰馬の顔はさ、真剣そのもので、いつものヘラヘラした表情なんてまるでなくて、別人みたいで、カッコイイって思えちまう。あんまり顔ばっかり見てたら悪いって、わかってんだけど、ついつい視線がそっちに行っちまう。もう1年以上付き合ってるってのに、俺って相当馬鹿かもしれない。

もちろん、いつもの辰馬の笑った顔が嫌いだとは言わないんだけど、辰馬は人前では絶対こんな顔見せないから、これは俺だけが知ってる辰馬の顔なんだって。俺だけの特権なんだって、そう思えるだけで、なんだか幸せを感じてしまう。

凄い速さでキーボードを叩く辰馬をもう一度チラリと見て。邪魔したくないから、先に帰って、晩ご飯の用意でもしてた方がいいんじゃないのかなァって、俺が思い始めた時、辰馬が思い切り大きく両腕を上に突き上げて身体を伸ばした。

「終わったぜよー!」

開いていた本を全て閉じる辰馬。終わったんだとわかった俺は、それでようやく安心して。

「待たせたのぅ、晋」
いつものように笑った辰馬は、俺が目の前にいるとはかどるなんて言い出した。

「ありがとうの、晋」
邪魔になってないか心配だった俺にはちょっと嬉しい言葉ではあったんだけど。

「これが終わるまで晋に触れん思ったらのー、必死じゃよ、わし」
「なんだそりゃ」

目の前にニンジンをぶら下げられて、必死になって走る馬…そんな姿を想像しちまった。やっぱり辰馬の思考回路って単純なんだよなァ。別に悪くないと思うけどさ。

「晋、帰ったらエッチしよ」

ノートパソコンを閉じて鞄に入れ、本を持った辰馬が立ち上がりながら囁くような小声で言って。小声だったのは図書館だから当たり前だし内容も内容なんだけど、立ち上がった俺の肩を抱いてくる。

「離れろって、馬鹿!」
本当なら殴るくらいしてやらなきゃ離れてくれないのはわかってるんだけど、ここは図書館だ。わかっててますます密着してくる辰馬はズルイ。

「どうせ誰も見ちょらんぜよ」
俺の古典は3階、辰馬が出して来た分厚いのは3冊共地下の書庫だったから、階段まで行けば離れてくれるだろうと思ってたのに。

「……っ」
階段付近に誰もいないって判明した瞬間、辰馬に唇を塞がれていた。

「…おま、っ」
「なんじゃわし、家まで我慢できそうにないんじゃけど」

図書館だろうとなんだろうと、一発殴っておくんだったって、俺が後悔し始めた時にはもう遅くて。あっという間に俺は地下まで引っ張られてトイレの個室で壁に押し付けられててさ。返さなきゃならない本は取り上げられて4冊共洗面台のところに辰馬が置いちまった。

「こんなとこですんのかよっ!」
「じゃってわし、もうこんなんじゃもん」

パンツの上から触らされた辰馬のモノは、もう完全に臨戦体制って感じで。

「晋じゃって、溜まっちょるじゃろー?」
「それとここでするのは別問題だろうがっ!」

所詮俺の口だけの抵抗なんて無駄で。唇を重ねられて下着の中にまで入ってきた辰馬の指に翻弄される。いつの間にか、夢中で辰馬の甘い舌を貧ってしまっていた。

「ァ、はっ、たつ、まっ」
下着まで降ろされて、少し屈んだ辰馬の中心と2本重ねられて。

「晋、声抑えて」
いつもと逆のことを言われて一瞬『?』が頭に浮かんだけど、誰が来るかわからないと言われて身体中の体温が一気に上昇するのがわかった。誰かが来るかもしれない、誰かに見られるかもしれない。
それで興奮を煽られるだなんて、俺って救いようのない変態かもしれない。

…そんなこと、今更か。

***

図書館のトイレで出すだけ出した後は速攻で本を返して2人で家に帰ってきてさ。我慢できなくて鞄を玄関に置いたまま風呂場に直行した。2人共。

「ァっ、ぅあっ、ああっ、ぁっ、ぁっ、あ…」

風呂場の床で、座った辰馬に背中を支えられてぐちゃぐちゃに中を掻き回される。的確に前立腺ばかりを攻められるから、もう気持ち良すぎてわけわかんなくなって壊れちまいそう。

誰が来るかわからない、誰かに見られるかもしれない、ってのは確かに興奮したけどさ、やっぱり声を我慢しなきゃいけないってのは俺には向いてなくて駄目だと思った。辰馬だってホラ、俺の喘ぎ声に興奮してるじゃねェか、明らかに。
「た、つっ、イクっ!イク、イっちゃうっ!」
俺が射精感を訴えた瞬間、ズルリと辰馬の指が俺の中から引き出された。

「な、んで…?」
「さっき出したじゃろ?まだ駄目じゃ」

そう言いながら辰馬は俺の首筋や乳首を容赦なく攻め続けて快感を与えてくる。だから俺は、今日は徹底的に焦らされるんだろうなってことを、熱に犯されてボーっとした頭のどこかで理解して。

辰馬の勉強が忙しくて1週間はヤってなかったんだ、どうせなら縛って痛めつけてくれりゃーいいのに、なんて思いながら、俺は辰馬の成すがままに快楽の底に堕ちていった。


END



すいません、後半は完全にただのオマケです(爆)でもこのシリーズ、次で完結しますからっ!!!






















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