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銀さんが18年間生きてきて悟ったことってのは、さ。いつも笑ってれば、そんなに人に嫌われないってことだった。

知らへぬ恋は1


午後の大学、3号館。4月から大学生になった銀さんの、ここは新しい学校。まだ、構内なんて全く覚えてないからさ、独り言を呟きながら教室を探してた。

「えっと、325、325…発見」
あと5分で授業が始まる時間。だから、もう教室の中には結構生徒が座ってて。どこに座ろうかなって、教室内を見回した銀さんは、目立つ赤い髪を見つけて、迷わず隣に行った。

「おはよ、高杉君」
「んー?おはよう」

ヘラヘラ笑いながら声をかけたこの子は2日前に仲良くなった、銀さんと同じ国文学科の高杉晋助君。
仲良くなったきっかけってのは、その日全部の授業が一緒だったんだ。

他にもきっと、3つとも同じ授業取ってた子なんていたと思うんだけど、高杉君は赤い髪で銀さんは銀髪でしょ(生まれつきなんですよ)。
つまり、お互いに目立っちゃって、だから高杉君も銀さんには気付いてたみたいなんだ。『あいつさっきもいたな』ってさ。

それで、4限目の始まる前の時に、銀さんから隣に座って声かけてさ。時間割の見せっこしたら、ほとんど一緒だったんだよ!すごい偶然!

手帳の1ページをさ、細かく区切って几帳面な文字で書かれた時間割見ながら銀さんびっくりしすぎて声上げちゃったもんね。もちろん、その几帳面さにもビックリしたんだけどさ。

「すごいコレ!一緒に時間割作ったみたいに被ってるぅ!」

学部も学科も一緒なんだったらさ、珍しいことじゃなかったのかもしれないんだけどさ、銀さんはあまりの偶然にはしゃいじゃった。だって違うの4つくらいしか取ってないんだよ?

「ねェ、なんで金曜日のBEWなんて取ってんの?」
これって、英文の子が取るような、書き取りの英語の授業じゃないの?

「ァあ、それ。テストもレポートもないらしいぜ」
実は新学期はこの時始まったばかり。まだ1回も開かれてない授業の情報持ってるんだァって感心しちゃった。

高杉君ってさ、見た目がその赤い髪なのに、授業を受ける態度ってめちゃくちゃ真面目でさ。どれもこれもまだ、1回目の授業だから、どの先生も『このクラスはこんなことをやります』って話がほとんどなんだけど、それすら超真面目に聞いてメモ取ってるんだよね。それなのに赤い髪でしょ?そのギャップがね。なんだか気になっちゃう感じ。

でも、多分銀さんが、高杉君に声をかけたのって、ただ単に目立ってたからってだけじゃないんだよね。

高杉君は、長い前髪で、顔の左半分を常に隠してた。もしかして左目見えないのかな?って思ってさ。でもそれ、本人が『聞かれたくない』って思ってるんだったら、銀さんは絶対聞かない。

何が言いたいかってと、この子がもしも、左目のこと『放っとけ、聞くんじゃねェ』って思ってるんだとしたらさ。銀さんが『聞かれたくないな』って思ってるいろんなことも、聞かないまんまで仲良くしてくれるんじゃないのかなァって思ったの。

実はこう見えて、これまではシビアな人生送ってきてたりするんですよ、銀さんは。
そんなわけで、ちょっとの期待も込めて、今日も高杉君の隣に座ってみたんです。

「坂田、お前今日の2限は?」
メールでも打ってるのか、携帯をいじりながら高杉君が聞いてくる。

「実は寝坊しちゃった」
銀さん学校に到着したの、ついさっきだったりして。ギリギリなんとか3限に間に合ったんだから頑張ったんだよ、これでも!

「気ィつけろよー。毎回出席取るってさ」
「マジで言ってんのソレ?」

教養科目なのに出席取るなんてアリですかァ。泣きたくなっちゃうよ。だってさ、銀さん朝の5時までコンビニでバイトしてたんだよぅ。帰ったら6時で6時半に寝て。3時間だけ寝て、2限に来る…予定だったんだけど。

「ついで言うと、説明5分で、いきなり今日からがっつり授業入ったぜ」
「マジでェ?」

うお、銀さん大学生になって、授業始まって3日目で、もはや出遅れたってコトですか?

「ねェ、高杉君〜」
「ァあ?」
「…後で、ノート借りちゃってもいいかなァ?」

一昨日知り合ったばっかりの子に何言ってんだろ!もう、銀さんってば最低!これで嫌われたらどうしよう。

「別にいいぜー」
「え、ホント?」

携帯を触るのをやめた高杉君は、おもいっきり、なんでもないことのように、そう応えて。『ふざけんな』とか言われるかと思ってたのに。

「そのかわり、高杉『君』って、やめてくれねェ?呼び捨てでいいからよ」
「ま、マジ?」

まさか知り合って2日目でそんなこと言われるなんて思ってなくて!うわァ、どうしよう?銀さん、いきなり友達できちゃったかも!!

「じゃあじゃあ、銀さんのことは名前で呼んでくれる?」
「ァあ?…いいけど。銀時、だっけ?」

背の低い高杉君…じゃないじゃない、高杉が首を傾げながら上目づかいで応えてくれた。うわァ、銀さん、ちょっと幸せ。

なんでたったそれだけのことでそんなに喜んでるかって?だから、銀さんの人生は、結構シビアだったんですって。今まで、名前で呼んでくれる人なんて、ほとんどいなかったんだもん。

ちょっと嬉しくなりながら、2人並んで『日本の文学』って授業を受けて。その次の『文章表現法』も一緒だから、一緒に教室移動して、また隣に座って。そんで今日だけ5限があったりするのも高杉と一緒でさ、これは実は何かと言うと、資格関係の授業なんだな。卒業に必要な単位の中にはカウントできないんだけど。

ようやく5限まで終わって、帰ることになるんだけどさ。今日はバイトないし、なんだかこのまま帰るのも寂しいなァって思ってたら、また高杉が教科書やなんかを片付けながら携帯をいじってた。そんなに連絡あって羨ましいなァ。誰と連絡してるのかは知らないけど。

「ァあーっ、面倒臭ェ!」

短いメールを何回もやり取りしてたみたいなんだけどさ。途中で叫んだ高杉が発信ボタンを押したみたいだった。そうだよね、電話した方が早いんじゃないかと、銀さんも思ってました。

「お前、今どこ?………ァあ?わかるかァっ!……俺は1号館の122教室」
高杉って、学内に、もう友達いるんだァって思いながら、黙って電話する横顔を眺めてたんだ。

「お前が迎えにこいよ!法学部棟なんざ場所も知らねェよ!」

へェ、学部の違う子なんかとどこで知り合ったんだろう?だって、普通に授業受けてるだけじゃ、絶対会わないよ?もしかして、速攻どっかのサークル入ったのかなァ?

「ねェ高杉ィ」
電話が終わるのを待って、銀さんは声をかけた。

「この後、どっか行くの?」
銀さんにとっては、せっかく『呼び捨て』で名前呼んでもいいって権利を獲得した最初の子だったからさ、高杉は。空いてるならこれから、2人でどっか行こうって言いたかったんだけど。

「ァあ…。飲み会」
「そっかぁ…」

それなら残念って思ってた銀さんに、高杉はすごーくナチュラルに、とんでもないこと言ってくれたんだ。

「お前も来る?」
「えっ…?」
い、いいの?マジでいいんですか?本気で言ってんのソレ?

「お前人見知りする?…ァあ、しねェよな」
お前から俺に声かけてきたもんな、だって。いやいや、人見知り、するのはするんですけどね。

「酒は?飲めるか?」
「多分大丈夫」
「そーか」
言ってすぐ、高杉はまた携帯を耳元に持っていく。

「あー、小太郎?1人増えたから。あのデカイ馬鹿に言っといて。……ってかお前、早く迎えに来いよ!」
入学前は、予想だにしなかった、…どころか、夢にも思わなかった銀さんの、幸せなキャンパスライフの幕開けだった。

***

誰もいなくなった教室で、高杉と2人で待ってたら、顔を見せたのはすごく髪の毛が長くて、顔もキレイな人で、一瞬女の子かと思っちゃった。

「待たせたな、晋助」
その声を聞いて『あ、男だ』ってわかったんだけど。良かった良かった、高杉の彼女とかだったらどうしよう?って一瞬考えたからさ。って言うか今、普通に高杉のこと、下の名前で呼んだよね、この人。

「えーっとなァ、俺と、ほとんど授業一緒の坂田銀時」
高杉が鞄持って立ち上がりながら銀さんを紹介してくれた。

「ドモ、国文の坂田銀時デス」
いや、こういうのって、全然経験ないから緊張するんですけど。

「こっちは、法学部3年の桂小太郎。俺の幼なじみ」
あ、こんな髪だけどコイツ男れっきとしただから、だって。

「晋助、それは余計だろう」
そうか、幼なじみだから名前で呼べちゃうんだーってわかってさ。
高杉が3年生を平気で、下の名前で呼び捨てしちゃう理由も納得納得。

3人で並んで歩いて、西門から出るって言うからさ、銀さん正門の横に原付停めてるって言って。それだったら3つ向こうの駅で待ち合わせって言われた。学校から駅まで徒歩5分でしょ?3つ向こうだったら、各停しか停まらないから多分銀さんの方が早い。あんまり遅くなりそうだったら電話するからって、銀さんと高杉はここで、ようやく電話番号の交換なんかしちゃったわけ。

「うわァ、大学来て初めて誰かと番号交換したァ!」
銀さんが喜んでたらさ、なんか、桂さんまで交換してくれた。だから桂さんにも『銀時』って呼んでって言って。ってかさァ、密かにずっと観察してるんだけど、桂さんってさァあの髪、地毛だよね…?名前は『かつら』だけど、ヅラだったりなんかしないよね?密かに名前の横に(ヅラ)って入れて登録しちゃお。

「番号交換したかったらなァ、今からいくらでもできんぜ」
高杉が言ってた意味はわからなかったけど、とりあえず銀さんは原付で待ち合わせ場所を目指して。
銀さんが駅に到着したら『急行待ちだったからやっと乗った』って、3分前に送信された高杉からのメールが入ってた。ってことは、あと5分くらいで来るかなぁ。

2人が駅の改札を抜けてきて。今から行くのは経済学部の坂本って人の家らしいんだけど。一人暮らしの部屋に3人も行ったら狭くないのかなァって思っちゃった。ここまで来ちゃったけど、本当に銀さん来て良かったのかな?

もうすぐだって言うから銀さんは原付を押して歩く。ちょっとしんどいけど近いみたいだからさ。あ、『しんどい』って、関西弁だねわかるかな?『疲れる』とか『くたびれる』とか『身体だるい』とか、そんなニュアンスだよ。

***

まず一言目。でっかいマンション!ここって、絶対学生が一人で住むようなマンションじゃないよね?

エレベーターで7階に上がってさ。玄関チャイムを押したら扉が開いたんだけど、開けてくれたおっきい人に目が行くより先に、スゲェうるさい声がガンガン響いてきて、そっちに度肝を抜かれちゃった。

「とーじょーっ!!食い過ぎだァっ!!俺の分なくなっただろうがァっ!」
「一週間分の食いだめしてるんですっ!」
「やかましいわ近藤っ!」
「なんで俺ェ?」
「もぅ、喧嘩しないのっ!」
少なくとも、5人はいるよね、コレ。

「アッハッハー、よう来たのぅ!…おんしが、はじめましての子じゃな?」
扉を開けてくれたのは、身長180くらいはあるだろうなァっていう、方言のキツイ人。ちょっと、銀さんと一緒くらい天パじゃね?って思って、なんだか親近感。この人が、このマンションに住んでる経済学部経営学科3回の坂本辰馬だって、玄関先で桂さんが紹介してくれて。銀さんも慌てて、文学部国文学科1年の坂田銀時ですって名乗った。

「好きで来たんじゃねェよ馬ァー鹿」
ツーンとそっぽを向きながらさっさと中に入ってしまう高杉。お、お前、3年生にその態度はいいんですか?

「……まぁ、遠慮せんと入りィ」
心なしかショボンとしたように見えた坂本さんが、銀さんと桂さんを招き入れてくれる。

「そうだ銀時。ここでは無礼講だからな。晋助以外は全員2回か3回だが、気にしなくていいぞ」
「そ、そうなんですか?」
「どうせみんな酒入ったら目茶苦茶だからな。敬語なんか使わなくていいからな」
「そう、なんだ…」

1年が俺らだけってどういうこと?銀さん、年上好きだからいいんだけどさァ、なんて思いながら足を踏み入れたそこは、想像を絶する世界だった。

ぐるっと見回して、まず思ったのは女の子(いや、先輩だから女の人かな?でも無礼講って…)が3人。
そのうちの一番小柄な子が、坂本さんと同じくらいの体格の、ロン毛(桂さんじゃないよ、金髪だし)とヒゲの短髪を蹴りまくってる。
どうやら、蹴られてる2人は、食べ物の取り合いしてるみたい。蹴られて尚、おにぎりを離さないロン毛とヒゲの短髪が持ってるのは…手羽先かな?窓の近くに少し離れて座ってる人が2人。
なんか、関わりたくないから遠巻きに見てるって感じ。これで7人でしょ?それに銀さんと高杉と桂さんと坂本さん入れて11人だよ?

「おまんら紹介するぜよー!」
手を叩きながら、周りのうるささには全く負けてない一番デカイ声を出した坂本さんにみんなが注目する。

「高杉の友達のォ、文学部1回の坂田銀時君じゃあー」
いきなり紹介されたのは銀さんだった。ってか銀さん、高杉の友達ってことになっちゃってるけどいいの?いつから友達になったんだ?とか、後から高杉に言われない?

変な汗がいっぱい出て来ちゃって、坂本さんが1人ずつ紹介してくれたけど、全然わかんなかった。ってか、それでなくても、一気に7人の名前とバラバラな学部覚えるのなんか無理だって!唯一覚えたのはさっき小柄な女の子に蹴られてた金髪ロン毛の方が、1人だけ違う大学で、外大だったってくらい。

「銀時ィ、お前もこっち来いよ」
とっくに座ってピザをつまんでた高杉に呼ばれて、突っ立ったままだった銀さんはなるべく端の方に座る。桂さんはキッチンの中に入っちゃった。

「お前ビールでいいかァ?」
「うん、なんでも…」
「ビール2本ー!」

座ったまんま高杉が叫んでる。ちょ、ちょっと、銀さん達1年なんだから、自分で取りに行こうよ!

「待たせたぜよォ」
銀さんが冷蔵庫に取りに行こうとしたら、ビールを3本もって来た坂本さんが、1本ずつ渡してくれて。残る1本は自分で開けて『乾杯』って。

「ってかお前、なんで俺の隣来るんだよ?ウゼェんだよ!」
「えいじゃろー?はじめましての乾杯じゃき!」
「だったら銀時の隣座れっつぅの!!」

もしかして、高杉って坂本さんのこと嫌いなわけ?でもここ、坂本さんのマンションでしょ?嫌いだったら普通来ないよね?

ってかさ、これだけの大人数、家に呼んでくれるって、それだけで坂本さんって、相当いい人だと思うんですけど?何が嫌いなの?

「坂田銀時じゃったかのぅ?」
高杉に本気で睨まれても、坂本さんはその場から動くつもりはないみたいだった。

「あ、ハイ。銀時でいいですよ」
無礼講とか言われたって、無理だって、いきなりは。

「ほーかァ。おまん、家どこじゃぁ?」
自然と、高杉を間に挟んで話す形になる。あーなんか、明らかに高杉の眉間にシワ寄ってるよ。ってか、高杉飲むペース早いなコイツ!グビグビいってるよ!

「…じゃったらちっくと遠いのう?いつでもウチ泊まりに来ィ」
(へ…?)
「い、いいんですか?」

泊まりに来いって言わなかった?今。マジで、銀さんなんか泊めてくれるんですか?
泊まりにおいで、だなんて。銀さん人生で初めて言われて本気で涙出そう。ってか、銀さん坂本さんに惚れちゃいそう。あ、実は銀さん、男でもいいんです。

「その敬語やめんかァ!高杉を見習いィ!わしは辰馬でいいきに」
「テメェ馬鹿にしてんのか?」
口と一緒に高杉の手が出た。本気で殴ったよねェ、今?

「もー、痛いのぅ!高杉はいつもコレじゃ」
「テメェがウゼェんだろ」

飲み干したビールの空き缶を潰して、立ち上がった高杉がダイニングテーブルの方に行っちゃった。ちょっと不安だけどさ、坂本さんなら大丈夫そう。…って言うか。

「本当に『辰馬』なんて呼んでいい、の?」
「おー、構わんぜよォ」
やっべ、銀さん泣くっ!!って言うか、銀さん、辰馬が好きです!もう駄目、好きになっちゃいました!

「じゃあさー、早速明日とか来てもいいのォ?」
「んー?でもおんし、今日は泊まるじゃろ?明日も泊まるがかァ?」
不思議そうに見つめてくる辰馬。え、待って?銀さん何も聞いてませんけど?

っていうかさ、マジマジ見られたからこっちも見たんだけど。辰馬、カッコよくない?今まで緊張してたせいかな?よく見たらさ、スラっとしたモデル体型で、なんか身体も鍛えてそうだし、顔には優しさが滲み出てるような気がするし、しかも着てる服PaulSmithなんですけどっ!なんで銀さんと同じ天パでこんなに違うのかなァ?

「ここに来たら、帰れないと思った方がいいですよ、今度から」
窓際から声をかけてくれたのは、さっきからずっと並んで座ってて、そこから動かない2人組のうちの1人。なんてんだろ、ちょっと顎出てる方。

「何にも聞かされないで連れてこられたって感じだねェ」
今度は眼鏡の方。…ってか、もしかしてひょっとしてまさか、この2人って、カップルだったり、しないよね?なんか銀さんと同じニオイがする気がするんですけど?

「この状態だって、聞いてたら来ませんよ、普通」
「それもそうだねェ」
「なんじゃなんじゃ!武市も似蔵も!飲み会が悪いみたいな言い方はやめるろー!」

ビールを煽って、プリプリ怒りながら見せた辰馬の表情が、なんか、かわいい。やばくね?銀さんコレ、完全に恋愛フィルターかかっちゃったんじゃない?

「悪いだなんて言ってませんよ。ねェ、似蔵さん」
「ァあ、俺も、一言も言ってないねェ」

って見つめ合って微笑み会う『たけち』と『にぞう』。やっぱりホラ、この2人きっと、カップルだって!

じゃあ、ひょっとしてもしかして、この中には他にもゲイがいたりするんじゃないの?って思っちゃってさ。って言うより、このカップルを家に呼んでる辰馬が一番怪しいんだけど。でも、なんでかなァ。
辰馬からは全く『ゲイオーラ』みたいなものは感じないんだよね。恋愛フィルターのせいじゃないと思うんだけどさァ…。
一番怪しいのは、さっき蹴られてたあの短髪のヒゲね。イカホモっぽいんですけど。…あー、でも、ああいうのに限ってノンケだったりもするからなァ。

ってか銀さんは、辰馬がいいです。辰馬が男でもいいんなら付き合ってほしいなァ…。って言うか、どっちでもいいんでヤラせて下さい。

うわ、本音出ちゃった。心の声で良かった!

でもさ、見れば見る程、辰馬カッコイイよ。めちゃくちゃモテるんだろうなァ。エッチ、上手いと思うよ、きっと。

ダイニングテーブルの方に行ってた高杉が、ビール2本と皿に山盛にした鶏のから揚げやフライドポテトを持って戻ってきた。

「銀時お前、まだ1本目?…ってかお前、寝坊して昼飯食ってなかったんだろ?食わねェとなくなんぜ?」

ハイって高杉が指でつまんだから揚げを銀さんの口の中に押し込んだ。銀さんは、心の中で『ぎぃゃああああああー!!』って大絶叫。だってそんなのって、カップルでもなきゃしないって!

でも、『食べるかー?』って言いながら、横の『たけち』と『にぞう』にも同じことしてた高杉見て(『たけち』は遠慮したけどさ)、これは普通のことなのねってわかって。叫び声は心の中だけで止めといて良かったと胸を撫で下ろした。

「高杉ィ、わしも…」
「テメェで食えば?」

やっぱり、高杉は辰馬が嫌いなんだと思う。辰馬だけそういう扱いなんだもん。きっとなんかあったんだろうね。だって、勝手に『友達』ってことで紹介されちゃった銀さんにすら優しいのに、辰馬だけ態度違うんだもん。そりゃ辰馬がへこむでしょってくらい冷たい態度連発。さっきなんか殴ってたしね。

「銀時、本気で食わねェとなくなんぜ。あ、コレお前の2本目な」

東城いるだろ?アイツアイツ、って高杉が教えてくれたのは、ロン毛で外大の彼。その東城が、全部食べちゃうんだって。なんか東城って、授業がキツくてバイトできないから極貧で、家では卵かけご飯しか食べれなくて、ここに週1回栄養補給しに来てるらしい。

「うわキッツ…。そっか、だからさっきから、あそこは食べ物の取り合いを…」
「そういうコト。あのヒゲは近藤って言うんだけど、ガタイの分は食うからなァ。だから俺は俺のを確保してきたんだよ」

小太郎が出してくれるからお前も行ってこいって言われて。銀さんもダイニングテーブルのところからキッチンの桂さんに声をかけた。

「ウっゼェって言ってんだろっ!」
高杉の怒鳴り声で振り返ったら、辰馬が蹴られて吹っ飛んでるのが見えた。

痛そう…。銀さんなら絶対辰馬にそんなことしないのになァ…。


つづく



坂←銀ですっ!!まずは出会い篇!!そしていきなり惚れました!ってね。ま、あんな優しくされたら、仕方ないでしょう。辰馬に、この時はまだ特別な意味はあんまりないんですが。ちなみに銀時は、辰馬が晋助を好きだってことにはまだ気付いてません。辰馬から『ゲイオーラ』が出てないのも、またおりょうちゃんを引きずってる部分があるからでしょう。

いやァ、遠慮しまくり敬語使いまくりの銀時ですよ!しかも晋助は辰馬が大嫌いときたもんだ!新鮮〜!と思ったのは最初だけで、だんだん違和感が…(爆)指が勝手に銀時に「晋ちゃーん」と呼ばせたがる(苦笑)

もちろん続きます!






















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