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※「大切だよと伝えること」の続きです

辰馬が東城の風邪をもらってきて寝込んで3日後。やっぱり俺も、風邪をひいた。

沖田君合格祝い飲み会


「晋、休んだらどうじゃ?」
「今日行ったら明日明後日休みなんだから平気だ」
玄関に見送りに出てくれている辰馬はひたすら心配そうで、なんとかして休ませたいみたいだけど。

「晋、なんでそこまでしてバイトするんじゃ?」
お金に困ってるわけではないじゃろう?と靴をはいた俺の腕を、それでも掴む辰馬。

「…お前に関係ないだろ」
俺は、ちょっとの罪悪感を感じながら、辰馬の腕を振り切ってマンションを出た。

もう、土方がホームに来てる時間じゃねぇか。
あー、マジでフラフラする。本当は休みたいんだけど。咳はヒドイし頭痛いし熱だってあるし。

「おはよー、土方」
掠れた鼻声で言ったら、土方は待ちくたびれて怒るどころか、呆れたみたいだった。

***

「辰馬ァ、銀さん暇になっちゃったから遊んで〜」
昼前に銀時が訪ねて来た時、まだ坂本は玄関に座り込んでいじけていた。

「うわっ、何お前?なんでこんなトコにいんの?」
「銀時ィ〜!!」
「のわぁっ!!」
涙も鼻水もズルズルで、はっきり言って汚いからっ、辰馬っ!!

「なんだよなんだよ?ついに高杉にフラれたかァ?」
銀さんも、せっかく風邪のヅラの為にバイト休んだって言うのにさァ、そのヅラはまだ治りもしないくせに会社説明会行っちゃってさ、けっこう拗ねてる感じなんだけどっ。

「なんでじゃ銀時。なんで晋は、熱あるのにバイト行くんじゃあ?」
「はァ?」
グズグズ泣いてる辰馬をリビングに引っ張って。話を聞いてやったら、つまりはこういうこと。
辰馬はめちゃくちゃ風邪の高杉を心配してるのに、高杉は『お前には関係ない』ってフラフラのままバイトに行っちゃったと。

「晋は、なんか欲しいもんでもあるんかのぅ?」
全然辰馬は泣き止まない。なんでも買っちゃるのにのー、なんて言いながらズズズっと鼻水をかむ。
なんでも買ってやるとか、銀さんも誰かに言われたいんですけどコノヤロー!

それにしても、だ。これまで、街頭のティッシュ配りくらいしかバイトをしていなかった高杉だけど、生活費のほとんどは辰馬持ちだから、確かに金には困ってないはずだ。

親には、辰馬に家賃を半分入れていることになっていて仕送りをもらってるみたいだけど、それも辰馬が受け取らないから小遣いだし、奨学金も振り込まれるし。そう考えたらアイツ結構裕福だよな〜、今度昼飯タカろうっと。

とにかく、辰馬がここまでいじけてる理由は『お前には関係ない』って高杉に言われてしまったことが一番大きいらしい。
関係ないって、ムキになってフラフラのまま敢えてバイトに行くなんてさァ。

(アイツもしかしてバイトした金で、お前になんか買ってあげたいんじゃねェの?)
そういう、普通は女の子がやるようなこと、しちゃうのが高杉じゃない?

沖田君じゃないけどさ、アイツってホント、性別間違って生まれて来たようなトコあるじゃんよ?女の子らしいってか、カワイイってか。性同一性障害とまでは行かないんだろうけど。

「とりあえずさァ、そんなフラフラでバイト行ったんなら、お前迎えに行ってやれば?」
どうせバイトしてんの、学校の情報処理室なんでしょ?

「それに、高杉なら、本当にダメな時はダメって言うんだからさ、大丈夫だって出て行ったんなら大丈夫なんじゃないの?」
「ほうかのう?晋は、もっとわしに甘えてくれてえいのにのー」
あー、それ銀さんにも言って欲しいわァ。

***

何か食べろと土方には言われたけど。気持ち悪くてしかも咳のたびに胃から何かが込み上げて来る感じがして、全然食べれなくて。
「お前、明日飲むのに大丈夫なのか?」
「たぶん。…ダメだったら寝とく」
明日の土曜日は、夕方から辰馬のマンションで、沖田の合格祝いをする予定になっていた。もちろん、日曜日まで夜通し飲んでる予定で。いつものことながら。

「たぶん俺もすぐ寝るから、あんまり言えねーけどよ」
全く酒が飲めない(らしい)土方は、ビールコップ1杯で真っ赤になって、2〜3杯で寝てしまうのだそうだ。
沖田が、土方とは一緒に飲みに行かない理由はそこにある。飲みたい時に俺を呼び出すのも。って、まだ3月だから沖田は高校生なんだけど。

「とりあえず午後乗り切って、帰って寝るんだな」
「そーする」
午後の分のバイトに行って、なんとかこの日の作業をこなし、土方はフラフラの俺をマンションまで送ってくれた。

「晋!ずいぶん早かったの!?」
「早く終わらせてもらったんだよ」
辰馬は、銀時と一緒にどこかへ出かける用意をしているところだった。

「土方君、寄っていき〜」
「明日も来るんだからいいわ」
俺はさっさと中へ入ってしまったけれど、玄関から辰馬と土方のやり取りが聞こえてくる。

「お前を迎えに行こうって言ってたんだぜ」
そう、銀時に言われたけど。

駄目だ、頭働かない。

「とりあえず寝る」
俺は手洗いとうがいだけを済ませ、着替えもせずにそのままベッドに潜り込んだ。

***

どれくらい寝たんだろう。ぼーっとする頭のまま時計を探そうとしたら、身体が動かなかった。そして首筋に感じる柔らかい感触。

「んアっ…」
辰馬が俺に、抱き着いてるみたいだった。
(…って言うか、俺服着てねェし!)
帰って来てそのまま寝たはずなんだけど。

身体の上を、辰馬のおっきい手が這っていって、ピクンと反応してしまう。
「何やってんだよ、お前っ」

ぐいっと腕を伸ばして辰馬の首に回したら、にっこり微笑まれて、そのまま唇を塞がれた。舌を絡め取られて歯列をなぞられ、強く吸い付かれては柔らかく包まれる。

「んっ…んん、ンぁ…」
ようやく離れたと気付けた頃には、もう俺の意識は半分くらい持って行かれて、気持ち良さに他のことなんか、全部どうでもいいやって気になりかけていた。

「晋の風邪、もらっちゃろ思って」
「ば、馬鹿かお前はっ」
お前が風邪ひくなんてのは、もうたくさんだし、人にうつせば治るなんてのは、ただの迷信だっつうの!

だけど辰馬は、今更行為を止めるつもりなんてさらさらないみたいで。そういう俺も、今ここで止めてほしくなんてない。熱のせいで、下半身には全然元気がないけれど。

首筋に舌を這わされるだけで、もう、わけがわかんないくらい気持ち良くなってくる。
「ぁアっ、たつ、ヤダぁっ…ァん」
首筋から鎖骨、二の腕を通って胸へ、舐められているだけなのに頭がおかしくなりそうなくらい感じて、身体は跳ねて。

「ァ、はっ…、イタっ!」
「あ、すまん!」
慌てて離れた辰馬が顔を覗き込んできた。

「歯当たってもうたぜよ」
辰馬は心配そうに見つめて来る。だけど。

(なんだ?今の?)

痛かったのは痛かったのだけれど。それは間違いないのだけれど。だって、噛まれたんだから。

「辰馬、今の、もっかいして」
「晋っ?」
ほんまにえいがか?と言いながら、辰馬は再び胸の飾りを口の中に含んでいって。

カリッ

「ンあぁっ!」
身体の中を、電流が突き抜けたみたいだった。

「晋、大丈夫がか?」
「なんか、なんかわかんないけど気持ちイイ」

半泣きでしがみついたら、辰馬はぎゅっと抱きしめて頭を撫でてくれて。それでますます、身体の奥がかあっと熱くなった。

「辰馬ァ、なんか、もう我慢できないっ」
「うん、わかったぜよ」
わかったとは言いながらも、辰馬は絶対、焦って攻めてきたりはしないんだけれど。

もう2、3回、辰馬は胸の尖端を噛んでくれて、それだけで俺は、イってしまいそうな、それくらい強い快感を覚えて身体をびくびく震わせていた。

辰馬のセックスは長いんだと思う。時間なんて計ったことはないけれど、俺の全身隅々まで舐めてくれるし、俺が感じ過ぎてワケわかんなくなって泣き出すまで絶対大事なトコには触ってもくれないし。だから、ちょっと触られただけで、まだ前戯だっていうのに達してしまうなんてこともよくある話で。

四つん這いにさせられて背中を舐められて。やっと、辰馬の手が双丘を割って秘部に舌が這わされた。

「ああっ、辰馬っ、も、ぅ、入れてっ!」
「まだ駄目じゃよ、馴らしてないじゃろ」
「いやぁ…っ」
ゆっくりゆっくり、ローションをたっぷりつけた指で俺が苦しくないように、痛くないように馴らしてくれる辰馬。

さんざん前立腺を刺激されて、イキそうな一歩手前まで中をかき回された後、ずるりと指が引き抜かれてふわっと俺は辰馬に抱き抱えられた。

「自分で入れてみぃ」
「ううーっ…」
(イジワルっ!)
ベッドの上にだらんと長い足を伸ばして座った辰馬の背中に左腕を回して膝で体重を支えて。完全に大きくなった辰馬の中心を身体の裾に宛った俺はゆっくり腰を落としていった。

「ぁ、ふっ…、ゃぁっ、アアっ」
「晋はえい子じゃの」
完全に根本まで俺の中に収まったのを見届けてから、辰馬は俺の頭を撫でて深い口づけをくれて。ぎゅっと背中に両腕を回したら、下から激しく突き上げてくれた。

「ァあああっ!…ァっ、はっ、んぁっ、アアっ!」
俺はもう、辰馬の首にしがみついてただ、喘がされているだけだ。膝にも腰にも力なんて入らなくて辰馬が支えてさえくれなければ繋がった箇所に全ての体重が乗っかってしまう。

「ャア…たつ、イキそ…っ」
内側から競り上がってくる絶頂感を必死で訴えると、辰馬は繋がったまま、俺が仰向けになるようにベッドに寝かせてくれて。正常位なんかになったら、間違いなくすぐイっちまうってのに。辰馬は知ってるはずなのに。

「晋の顔、見といちゃるぜよ」
「馬鹿っ、っあ、うあ、っ…、見んなっ」
顔を隠そうとした腕は辰馬の首の後ろに持って行かれて。脚を抱え上げた辰馬はいっそう激しく腰を打ち付けてくる。

「ァああ、あっ、ああっ……!!」
腹の下にズンという強い衝撃がきて。触られてもいない俺の中心からは、白い濁液が次から次へと溢れ出していた。頭が真っ白になって意識が遠退く。

「し、晋…っ!」
舌を絡めながら俺を強く抱きしめた辰馬の中心が、俺の中でどくどく脈打つのだけを、朦朧とした意識の中で感じていた。

***

ぐったりしたまま動けずにいたら、辰馬に抱き抱えられて風呂場に連れて行かれた。

「これだけ汗かいたら、すぐ治るじゃろー」
「なんだよお前、そういうつもりだったのかよっ!」
別にいいんだけど、とは思いながら。

「じゃって、晋があんまりカワイイ顔で寝とるし、脱がしても起きんもんじゃから」
本当は、あまりに汗が凄かったから、着替えさせてあげようと思ったのだと言う辰馬に後ろから抱かれたまま、2人で湯舟に浸かった。さすがに2人で入るとだいぶ狭いのだけれど。

「なぁ、たつ…痛っ!!」
辰馬の顔を見ようとして身体を捻ったら、腕が乳首に当たって。

「大丈夫がか?晋が、『もっともっと』っちゅうから、結構強く噛んだんじゃよ?」
「そんなこと、言ったっけ…?」
あーやべ、気持ち良くなりすぎて、あんまりちゃんと、覚えてない。

「晋が、大丈夫なら、いいんじゃけど…」
わしは、痛いのとか熱いのは好かんぜよって、俺を抱きしめながら辰馬が呟くように言って。

「でも、なんか、噛まれただけでイキそうなくらい、さっきは気持ち良かったんだよ」
辰馬の腕に自分の手を重ねて体重を預けた。

「ほうかァ」
「うん…」
こうやって、終わってからイチャイチャするのが一番幸せだよなァなんて考えながら、のぼせる寸前まで2人で湯舟につかっていた。

風呂から上がると、まだ朝の6時過ぎで。昨日は、夕方帰ってきてすぐ寝たから、俺は10時間くらいは眠りっぱなしだったみたいだった。
「みんな来るの昼過ぎじゃから、まだ眠っとき」
「うん、そーする」

昨日から何にも食べてなかったけど、気にならなかったから。俺はまた、ベッドに潜り込んで眠った。辰馬は、これから訪ねてくる男ばっかり5人のために、ご飯の用意でもするんだろう。今日の主役の、沖田以外はみんな、酒や食べ物は持ち寄ることにはなっているけれど。

***

「それじゃあっ!総悟の大学合格を祝って!」
「乾杯!」
沖田の兄貴分だっていう、近藤の掛け声で宴会が始まった。
それぞれみんな、ビールを1本ずつ持っているけど、土方だけは小さいグラスで。集まったのは俺の右から順に、土方、沖田、銀時、小太郎、近藤に、辰馬と俺の7人。一番大きいテーブルを囲んでそれぞれ勝手に飲み食いを始めている。

辰馬の戦略通りかなんだかわからないけれど、すっかり熱の引いた俺は、昨日はあんまりにもマズくて手を出さなかった煙草に火をつけた。…でも、やっぱりちょっと、まだマズイ。

「高杉、大丈夫かぁ?」
「まだマズイ」
「そーじゃなくてよ」
喫煙者は2人だけだから、必然的に俺と土方は隣り合って座っていて。
灰皿がないわけじゃないんだけど、テーブルの上が料理でいっぱいで、狭くて置けないから、今は1つしか出していない。

「坂本ォ、なんかこの部屋、熱くないかァ?」
早速空になった缶を潰して、東京都指定のゴミ袋に放り込みながら近藤が言った。

「晋が病み上がりじゃからの、我慢してくれんか」
「コレ、脱いでイイ?」
言いながら、近藤はもう、長袖Tシャツを脱いでタンクトップになっている。

「ヅラもォ、着替え持って来てないのー?」
「忘れた」
午前中だけ会社を回って直行した小太郎はスーツだった。
さすがに上着は脱いでネクタイは外しているものの。小太郎がうちに置いている着替えは、俺が熱を出してたせいで、洗濯が終わっていなかった。

まだ風邪が治っていなくて、せっかくの酒も煙草もあんまりおいしくない俺はスローペースだったけど、あとのみんなはいつも通りのガブ飲みで。1時間も経たないうちに1ケースが空になって、すっかり出来上がってきたみたいだ。

「総悟ぉー」
コップ1杯のビールを、ようやく飲み干して真っ赤な顔の土方が沖田の腰に腕を回して擦り寄って行った。

「あはー、土方君本当弱ェのなァ!」
沖田の反対隣の銀時が、甘える土方の額を突いて面白がっている。

「土方、熱苦しいでさァ」
「ひどい総悟っ、ひくっ」
沖田が嫌がってるのは口だけで、なんだか土方に甘えられて、嬉しそうにしか俺には見えないんだけど。

俺がこんなに飲み会で飲んでなくて冷静なのも珍しい話なんだけど、こうやって、観察するのも楽しいかもしれない、なんて思い始めた時。

「だーっ!やっぱり暑い!」
いきなり立ち上がった近藤が、タンクトップと下のジャージも脱ぎ始めた。

「銀さんも脱ぐーっ!
あ、なんかスゲェ、嫌な予感がする。

「ちょっと、見て見て!寄せて上げるヌーブラならぬヌーパン!ゲットしちゃったんだけどォ!」
パンツ1枚になった銀時が履いているのは。あー、なんか雑誌で見たような気がする、トレプンティだったかな。恥ずかしいから、チラっと見ただけで、あんまり見れないんだけど。

「あはーん、これでイケメン食いまくり〜?」
酒のせいか立ち上がってくるっと回って見せる銀時。

「おんしがイケるイケないは顔じゃないじゃろー?」
いつもみたいにあっはっはと笑いながら口を挟んだのは辰馬だ。

「ツッコミが細かいよ辰馬っ!銀さんのタイプなんかお前しか知らないんだから流せよなっ」
「俺も聞いたような気がするぞ?」
「えーっ!忘れて忘れてっ!…ってかヅラも脱げって!」
言いながらしゃがみ込んで小太郎のシャツのボタンを1つずつ外していく銀時。『しょうがないなァ』なんて言いながら、小太郎もベルトを外してスーツのパンツを脱いでしまった。

「へぇ、男同士でも好きなタイプとかあるのかァ?」
いかにもノンケらしい疑問を口にしたのはやっぱり近藤だ。

「当たり前じゃん!銀さん、アンタが攻めてくれるんならイケるけどー」
「攻めるって男役ってことか?無理っ!俺は男は無理だって!坂本ォ〜」
(ちょっと…誰か止めろよ)
隣の辰馬を見上げたけど、楽しそうに小太郎が脱ぐところや銀時と近藤のやり取りを見ているだけだ。

「わしは近藤は無理じゃから安心するんじゃあ」
「辰馬はどうせ、高杉みたいな、小さくてカワイイ子が好きなんだろーが?」
小さいってなんだよ小さいって!と怒鳴りたかったけど、顔を上げたらパンツ一丁の男が3人で言い出せなくて。小太郎1人なら大丈夫なんだけど。

「ほうじゃの、わし、沖田君もイケるんじゃけど」
「じゃあ、万が一そうなった時はアンタが受けでさァ」
土方は、沖田に抱き着いたまま眠ってしまったみたいだ。眠っている土方を気にしながら、それでもしらっと沖田は応えている。

「えっ、無理じゃー、わし、バリタチなんじゃけど」
「俺もでさァ。アンタとは無理ですねィ」
言いながら、ずるずるっと、眠った土方を引きずってテーブルから離れた沖田は、土方の頭を膝の上に乗せてやって、それで2人は完全にカヤの外。

(あ、いいなー。俺もしてほしい…)
「バリタチってなんだ?」
「攻める方しかしないってコトだと思うぞたぶん」
コソコソ話しているのは近藤と小太郎。俺達といると、そういう言葉は普通に出てくるから、小太郎は覚えてしまったみたいだ。

「たーかすぎっ!」
眠ってる土方の頭や顔を撫でてやっている沖田を見つめていたら、反応が遅れてしまった。

「お前も脱いだら?」
「!!」

いつの間にか銀時が真後ろに来ていて、俺のスウェットパンツの裾を引っ張った。
「嫌だっ!!絶対嫌だっ!!」

俺は、左腕でテーブルの脚にしがみついて右手はしっかりスウェットを掴んで。嫌だ嫌だと叫びながら思い切り無茶苦茶な方向に蹴りを繰り出した。

「なんでだよー、高杉ィ」
「嫌だぁっ!!」
当然、酒は零れるし灰皿はひっくり返るし液晶テレビは倒れるし。小太郎が、俺が掴んでいる脚を支点に回すように、テーブルを俺達から離す。

「やめろ銀時、触んなっ!」
「のわっ!」
とうとう俺の足が銀時の顔面にヒットして、銀時は吹っ飛んだ。
なんで助けてくれないんだよって思ったら、近藤とじゃれあうみたいに、辰馬も脱いでるところだった。酔った勢いなのか、パンツまで脱いじゃってるよ、あの2人。

「馬鹿っ!」
近藤はノンケだから関係ないったって、なんでお前まで平気なんだよ辰馬の馬鹿っ!

俺はそのまま、リビングを飛び出して、玄関に近い方の部屋、つまり俺の部屋に篭って鍵をかけた。

さっきまでの話じゃないけど、俺は年上でそこそこ背が高くて、ガッチリまでいかないんだけど、バランスよく筋肉がついた体型(マッチョとデブは無理)が好きで。つまり、辰馬は好きだから当たり前だけど、その辰馬とほとんど同じ体格の近藤にだって反応しちまったんだ。

膝を抱えて座り込んで。涙が止まらない。

「晋助、晋助。出てこい晋助」
鍵がかかったままのノブをガチャガチャ回してから扉を叩き、呼んでいるのは小太郎だ。

「駄目だ、坂本!お前の出番だ」
少しして、ガチャっと鍵が開けられて、辰馬が顔を覗かせた。俺の部屋だって言っても、ここは辰馬のマンションなんだから鍵くらいあって当たり前だった。

「晋…。大丈夫かの?」
「辰馬…」
顔を上げたら、辰馬は裸のまんまで。

「……はいて」
「え?なんじゃ?晋?」
俺の目の前に座り込んで耳を傾ける辰馬。

「だからパンツ履いてって!」
言ってから余計恥ずかしくなってしまって、俺はまた、膝に顔を埋めて表情を隠した。嫌だもう。全然収まんねェじゃん!

「あ…!スマン!!」
そこでようやく、俺が泣いてる理由がわかったらしい辰馬は、慌ててリビングに戻って、下着だけを履いて戻ってきた。

「ごめん、晋。近藤にも銀時にも、パンツ履けって言ってきたからの」
「っく…うん、…っふ」
膝を抱えたままの俺を後ろから辰馬が抱いてくれて。

「収まったら行こうかの」
俺の肩に頭を乗せて辰馬は優しい声で囁く。

「…お前がそーやってくっついてたら収まんねェよ」
「ほうか?…それはわしが好きじゃから、じゃろ?」
わかってんじゃねェかよ馬鹿っ。

***

1時間近くは2人で俺の部屋にいて。ようやくリビングに戻ったら俺が暴れてひっくり返した酒や灰皿もきれいに片付いていて。土方は辰馬のベッドに寝かされたみたいだった。

近藤や銀時、小太郎もパンツの上に辰馬のTシャツを着ていて、他愛のない話をしながら普通に酒を飲んでいる。
「あ、高杉ごめんな」
銀時も近藤も頭を下げてきて、俺はもうそれで十分だった。

「高杉こっち来なせェ」
沖田に呼ばれて隣に座る。その横に辰馬も来て。

「たぶん十四郎も起きてたら同じ反応してるから、気にするんじゃねェ」
ぐしゃぐしゃっと沖田に頭を撫でられて俺はちょっと安心した。

「近藤さんと坂本じゃなかったら俺だって勃ちまさァ」
アハハっと笑いながら酒を煽る沖田。

「なんでっ?なんでだよっ総悟っ?」
近藤はやたらムキになってるんだけど。相当酔ってるのかよコレは?そういえば近藤って、実は酒弱いんじゃなかったっけ。目茶苦茶飲むくせに。

「なんじゃあ?沖田君に反応して欲しいんかァ?近藤」
「そんなことはねェけどっ」
「アンタといつから一緒に風呂入ってると思ってんでさァ?家族みたいんなっちまって反応しやせんぜィ。坂本には興味ねェし」
ああ、そうなんだって思った。俺にとっての小太郎みたいな感じなのかきっと。

「えーっ、じゃあ沖田君、銀さんはァ?」
「十四郎と3Pなら考えまさァ」
「まじでっ?土方君つき?銀さんマジで考えちゃおうかなーっ」
顎に手を当ててニヤニヤ笑いながら、かなり本気で考えている風な銀時。

「銀時、お前最低ッ!」
俺は後ろのソファの上にあったクッションを思い切り銀時に投げ付けた。なんでこう、飲んだら下ネタに走るんだよ。

「恋人いるヤツに言われたって痛くも痒くもありませぇ〜ん!」
銀時がべぇーっと舌を出しながらクッションを投げ返してきた。

「それはテメェの性格に問題あんだろーがよォっ!」
「俺もそう思いまさァ!俺はこの中なら、断然高杉がいいでさァ」
「なっ…」
同時に引き攣った声を上げたのは、俺と銀時と、辰馬。

「駄目じゃあっ!絶対駄目じゃっ!いくら沖田君でも許さんぜよ!」
いきなり顔から笑いが消えて怒鳴りだした辰馬にぎゅうっと抱えられて俺は辰馬の膝の間にちょこんと収まった。

「そんな、本気にするなよ辰馬」
「じゃって」
「俺は本気ですぜィ、高杉」
(あーっ、もうっ!馬鹿沖田っ!辰馬が嫉妬すんの知ってんだろうがお前っ!あ、もしかして沖田も酔っ払ってんのかよ?)

「っつーか、坂本」
沖田が辰馬の首に腕を回してボソボソと何か囁いている。すぐ前に座ってる俺にさえ聞こえない小さい声で。

「……………沖田君、ソレ本気かの?」
ごくっと息を飲んだ辰馬の額から、一筋汗が垂れた。

「俺は本気なんですけどねィ」
じぃーっと、俺と沖田を交互に見つめる辰馬。

「なんだよ?なんなんだよ?」
近藤や小太郎、銀時も、意味がわからずポカンと見つめているだけだ。

「高杉には後で教えまさァ」
それだけ言うと、また沖田は酒を飲み始める。

「ビール飽きてきたんですけどねィ、なんか他の酒ないですかィ?」
まだ高校生のくせに、沖田は俺達大学生に負けないくらいの飲みっぷりだ。俺なんか、この勢いについていけるようになるまでかなり時間がかかったって言うのに。高校生までの飲み方と大学生の飲み方とでは全然違うから。

「焼酎でもブランデーでもウイスキーでも。あとは銀時のカシスがあるぜよ〜」
あ、でも水がなかったかもしれん、と立ち上がる辰馬。

「焼酎は何でさァ?芋じゃなけりゃーロックで構いやせんぜィ」
2人でキッチンに入って行って、あーでもない、こーでもないと酒を選んでいる。病み上がりでさえなかったら、俺も参加するところなんだけど。こんな体調で、これ以上飲んだって、美味しくない。

「辰馬ァ、俺、寝る」
「大丈夫か?まだ具合悪いのか?晋助」
小太郎が心配そうに声をかけてくれたけど。

「大丈夫だから。ありがと小太郎」
もう咳もそんなに出ないし、寝てれば治ると思うって言って、ようやく小太郎は頷いた。

「晋っ!ベッドには土方君がっ!」
思い出したのか、慌てて辰馬がキッチンから飛び出して来るけど、沖田が腕を引いて止めた。

「大丈夫でさァ!トシもバリネコなんだから、あの2人が一緒に寝てたって何にもありやせんぜ」
「ほうかのー?」
「あの2人なら、せいぜい舐めっこ位しかしやせんって」
辰馬よりも沖田の方が、どっちかって言うと俺達をよくわかっていて。

「馬ァ鹿、何にもしねェよ!俺はマジ寝すんだよっ!」
それだけ言い捨てて、俺はさっさと寝室に入ってベッドに潜った。まだ、真っ赤な顔をしたままの土方が、猫みたいに端の方で丸くなって熟睡していた。


END



一応終わりですけど、エロが書きたい気分なので、オマケのエロ話に続きます。続きは「とりかえっこプリーズ」です。坂高と沖土のSM4Pです。






















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