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休みの日で2人一緒にいる時に、辰馬の携帯が鳴るなんて珍しいな、と思ったんだ。

願い


2人でソファに並んで座って。何をしてるってわけでもなく、ダラダラテレビに向かっていた夏休みの1日。

辰馬はドラマとか見るんだけど俺は全然興味なくてさ。辰馬が見てるからその横に座ってただけ…って感じで、どっちかというと、テレビに対する辰馬の反応を見て楽しんでる、そんな状態だった。

ドラマの後はニュースになって、ドラマよりは俺も真面目に見てた時、辰馬の携帯が鳴った。

辰馬は、俺と一緒にいるときは必ずマナーモードにしてるんだけど、この時はテーブルの上の携帯から音が鳴っていて。

「辰馬、電話…」

当然音が鳴っているんだから、気づいているはずなのに、辰馬はいっこうに電話を取ろうとはしない。それどころか、身体ごと俺の方を向いて。

「ハッピーバースデートゥユー、ハッピーバースデートゥユー…」
(え?)
そこでようやく、俺は辰馬の携帯から鳴っている音楽の正体に気がついた。

「ハッピーバースデー、ディアしーんー」

1曲最後まで歌い終えた辰馬は、『晋、おめでとう』と、俺の目を見て言った後、チュッと、触れるだけのキスをくれた。珍しく鳴った辰馬の携帯は、日付が変わった瞬間に鳴るようにセットされていたんだって、その頃には俺にもわかっていて。

俺が言葉を失っている間に、すっと立ち上がって一旦部屋に入って行った辰馬は小さな紙袋を持って来た。明らかにアクセサリーとか、そっち系。

「晋、21歳おめでとう。これはわしからじゃ」
「あ、ありがとう…」

どうしたらいいのかわからなくなって、紙袋を受け取ったまま固まっている俺の肩を抱いた辰馬に促されて、俺は綺麗にラッピングが施された箱を開けてゆく。

中から出て来たのは、シンプルな四角い形の、ネックレスだった。

「あ、りがとう、辰馬」
「実はわしも買ってもーてのぅ。お揃いじゃき」

今、このプレゼントの紙袋と一緒に部屋から出してきた箱の正体は辰馬の自身の分だった。全く同じデザインで、唯一違うところと言えば。

「イニシャル入ってる…?」

俺の方にはTS、辰馬の方にはST。Blackletterとか、Oldgermanか、WestminsterGotischか、とにかくそのへんのフォント風というか飾り文字で彫り込まれたイニシャル。こういうのなんて言うんだっけ。あ、カリグラフィーか。

「早速つけるろー」
俺の後ろに回った辰馬がネックレスを着けてくれて、俺も辰馬に着けてあげて。なんだかお揃いって、恥ずかしいような照れくさいような。

「ありがとう、辰馬」
膝の上に乗せられて、唇を重ねたままぎゅうっと抱き締められて、俺は心の底からの幸せを実感した。

しばらくそうやって抱き合った後は、甘いものが嫌いな俺のために、ケーキじゃなくてメロン。なんでメロン?と思ったら、今年も盆休みに帰って来ない辰馬のために実家のお姉さんが送ってくれたらしい。
お姉さんには『一緒に住んでる恋人の誕生日直後だし、交際記念日もあるから盆休みは帰りたくない』って、正直に話したんだって、辰馬は。
なんかそれ、恥ずかしいんですけど。いや、辰馬のお姉さんには、俺は会ったことないけど、辰馬が俺のこと話してるってのは聞いてるけど。

「そのうち、連れて帰ってこいとか言われそうじゃね?」
「ああ、うん。実は、もう何回も言われちょるぜよ」
「あ、そーですか」

どんな顔して辰馬の家族に会えばいいのかわかんないんだけど。お姉さんは俺らのこと知ってるし、もともと辰馬のことも知ってるってのは聞いてるけどさ。親とかは別だろ、多分。うちの親だって、俺のことは知らないはずだしな。長男が連れて来た未来の嫁さんが男だった…って、どんな反応されるんだろう…?

「晋、そんなに悩まんでえいよ」
「悩んでねェよ」
すぐに見抜かれちまうんだよなぁ、辰馬には。

食べ終わったメロンを片付けて、それから一緒にシャワーを浴びて。ベッドの上でお互いを貪るように愛し合った。

俺たちにとって、これは3回目の夏。ここまでずっと、一緒にいられたことに感謝して、それから。来年の夏も、来年の誕生日も辰馬と一緒に過ごしたいと。これからもずっと一緒にいたいと。俺は辰馬の腕の中で、それだけを願っていた。


END



遅れましたが晋ちゃん誕生日です!久しぶりに携帯オンリーで書いた親指小説(汗)感覚が戻らないのでつたない文章で申し訳ありませぬ(泣)
なんでメロン?ってそりゃ、只今高階の家に大量にあるからです(苦笑←当分メロンが主食)これはこれでツラい(笑)






















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