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チョコレートを作ろう!って言い出したのは銀時だった。

マヨ+砂糖=99


2月14日はバレンタインデー。『ヅラに手作りチョコを渡したいから一緒に作ろう』って銀時からのメールを受信した時、俺は土方のところに遊びに来てた。

「銀時がチョコ作ろうだとよ…」
どうやら同じ内容のメールが土方のところにも送られて来たらしい。

「チョコ作んのはいいけどよ、アイツそんな時間あんのか?」
後期が終わって授業のないこの時期だからこそ、銀時は毎日毎日バイトしまくりで、小太郎とのデートの日くらいしか休んでないことを、俺も土方も知っていた。その小太郎も、もうスーツ着て仕事に行ってたりするもんだから、なかなかデートできずにいるらしいってことも。

「お前、チョコ作る暇なんてあんの?」
面倒だったから、銀時に電話したら、12日だけは休みを確保したんだって。あとはもちろん14日の当日も。伯母さんのお店手伝わなきゃならないって理由つけて、全部のバイトで休みを取ったらしい。

『だけどねー、12日の昼間はレッスンがあるからァ、夜しか無理なんだけどォ』
レッスンってのはもちろん、パー子のバイトのショータイムの踊りのレッスンだと思う。

「どっちみち俺も12日は夕方までバイト」
俺の隣で土方が煙草をふかしながらカレンダーを見てる。土方は、昨年俺と一緒にやってた情報処理室のバイトを今年もやっていた。俺も誘われたんだけど、辰馬が勉強に忙しくて、俺がご飯作ったりしなきゃならないことが増えてきてたから、俺は断ったんだ。家事は土方も毎日やってるんだけどさ。俺の場合は、体力がないからアレもコレもこなす自信がなくて。

『じゃあ12日の夜に晋ちゃんとこでいいかなァ?どうせ辰馬遅いでしょお?』
「多分遅いから大丈夫だぜ」

土方もバイトの後で俺ん家なら沖田も何にも言わないからOKだって。とりあえず、12日、各々体が空いたら俺んとこ集合ってことになってさ。チョコ作りの道具やなんかは、とりあえず俺が買っといて後で3で割ることにしたんだ。

***

『今から帰るぜよぉ』
辰馬からのメールを受信したのは夕方の4時。まさか辰馬がこんなに早く帰ってくると思ってなかった俺は、慌てて土方と銀時にメールを打った。

『緊急事態発生!辰馬が帰ってくる!』

レッスン中の銀時からの返事はなかったけど、メールだけは打てるバイト中の土方からはすぐに、『じゃあウチにするか?総悟はまだバイトだぜ』と返信があって。冷蔵庫に隠してあったチョコレートやココアパウダーと、アルミのカップや型やラッピング用品を慌てて俺は鞄に詰め込んで。

『17時半にお前んとこ行くわ』

土方にはそう送り返した。銀時には、『うちじゃなくて土方のところに場所変更な』ってメール入れて。きっとレッスンが終わるまで携帯は見れないだろうから。

時計を見ながら着替えて出かける用意をしているところに辰馬が帰ってきて、『せっかくわしが早よう帰れたのに出かけるがか?』って、めちゃくちゃ拗ねた顔されたんだけど。

「ごめん、ちょっと、土方んとこ行ってくるからさ…」
前から約束してたんだって言っても辰馬は俺に抱き着いたまま、なかなか離してくれなくて。抱きしめられている心地良さに、ついつい時間を忘れてしまいたくなる俺。

「早よう帰ってきての」
「ウン。…ごめん」

帰ってからエッチしようって約束とキスを交わして、ようやく俺が家を出たのは、土方に行くと言っていたはずの17時半だった。

「悪ィ土方!今、家出たからっ!」
『構わねェよ、銀時も今やっと連絡あったしなァ』

土方のマンションへ向かいながら電話したんだけど、『坂本になかなか出させてもらえなかったんだろォ?』って土方に笑われて。その通りだよ、悪かったな!

徒歩で20分先の土方の家で、銀時が来るまでチョコを溶かしながら、俺と土方は煙草を吸い溜めしていた。

「俺思ったんだけどよー、辰馬って、昨年いっぱいもらって来てたんだよなァ、バレンタインチョコ」

そういえば、俺って、ロクな思い出ないんだよな、バレンタインってさ。甘い物嫌いだってのに、やたら渡されたり、なんでか俺が渡したいって思う相手は、この日になるとやたらチョコを貰うようなヤツばっかでさ。本命なんだから、手作りチョコだけじゃなくて、他にもなんかあげた方がいいのかなァって土方相手だからなのか、ついついぼやいてしまう。

「そんなん言ったらお前、総悟だってスゲェぞ?」
貰って来たというよりは貢がれて来たんじゃないかってくらいだって土方も煙を吐き出しながら返す。

「ぶっちゃけ俺、高校くらいからゲーム買ったことないからなァ」

知ってんだろ?あのプレステもPSPも全部総悟が誰かから貰って来たモンだって、って土方が言うからさ、俺は頷いた。だって、沖田がいろいろ貢がれてんの、多分土方より詳しく知ってんもん。

「辰馬が喜びそうなモンってなんだろうなァ…」
誕生日とかも、一緒に買い物行って、辰馬が選んだ洋服を買ってあげただけの俺にはイマイチ、びっくりさせてあげられるようなプレゼントが思い付けない。

「坂本だったらよォ、お前の身体にリボン巻いて差し出すのが一番だと思うけど?」
「なっ…!!馬鹿じゃねェのっ!!」

土方に言われた言葉に焦って、むせ返って煙草の火を揉み消した。俺の身体にリボンって…。想像しちまいかけて、慌てて俺は、その悍(おぞ)ましいとも言える恥ずかしい自分の姿を頭の中から追い出した。確かにそうかもって、一瞬でも思っちまったことが悔しい。

「そういうお前こそ、新しいSMグッズでも沖田に渡して使ってもらえっての!」
土方の場合は、リボン巻きよりもロープでがんじがらめのぐるぐる巻き…の方が、沖田は喜ぶんじゃねェのか?

「ァあ、それいいかも…」

いっそ針とか刺されてェんだけどなー、なんて。ぼぅっと宙を見つめた土方の表情に恍惚の色が浮かんでる。

「おーい土方ァー」
オイオイ、ヤバイってお前!妄想の世界に入り込んでんじゃねェぞ!だいたい針ってなんだ針ってよォ!早く来い銀時!土方を止めてくれっ!

「ごめんお待たせっ!!」
俺の願いが通じたのか、鍵が開いていた玄関からバタバタと駆け込んで来たのは、大荷物を抱えた銀時だった。

「お前、何持ってきたんだよ?」
妄想の世界から帰ってきた土方が立ち上がりながら、銀時の荷物の量を問いただす。

「よく考えたらさァ、晋ちゃんも土方くんも甘いもの嫌いでしょう?ビターチョコしか買ってない気がしてェ!あとはァ、ヅラにあげるプレゼントいろいろ」

ネクタイとベルトと靴まで買っちゃった!銀さん奮発したんだよォと話す銀時の頬は緩みっぱなし。そうか、小太郎って社会人になるんだもんなァ。ネクタイなんて何本あっても困らないもんな、悩まなくてよくて羨ましいぜ、ちょっとだけ。

「お前のだけ砂糖入れたらいいだろーが」
キッチンに3人並ぶとさ、さすがにちょっと狭い感じなんだけど。

「わかってないなァ土方くん!ミルクチョコに砂糖足すのっ!」
「小太郎はそこまで甘い物好きじゃねェだろうがよォ」

溶かしたチョコを型に流し込みながらちょっとだけ味見。中にナッツとか入れてみたり。なかなかいい感じなんじゃねェか?もしかして。

「そういう晋ちゃん程、辰馬は甘い物苦手じゃないと思いますけどォ?」
宣言通り持参したミルクチョコに砂糖を混ぜる銀時を見てるだけで、なんだかお腹いっぱいになってきた気がする。


「ひ、土方っ!なんでチョコにマヨネーズ入れてんだよっ?」

「ウイスキーボンボンみてェなもんだろーがよォ」
「絶対違う!絶対、それは違うっ!」
ああ、やっぱりコイツら2人の味覚にはついていけねェよ、俺。

「まー、きっと沖田なら、吐きながらでも食べるだろうけどよォ」
「吐きながらってなんだよ、吐きながらって!」

お前マヨネーズを馬鹿にすんなよ!銀時の激甘よりはマシだ!って言い張る土方。マジで言ってるからな、コイツ。

「マヨネーズは罰ゲームだと思うけどォ…。ってか晋ちゃんのって、ビターどころじゃなくね?」
一通り激甘チョコを型に流し込んだ銀時が、ごみ箱の前にしゃがみ込んで捨てようとしたミルクチョコの空袋を持ったまま素っ頓狂な声を上げた。

「カカオ99%って、ソレ、そのまんま食べるモンじゃないからっ!」
銀時がごみ箱から拾い上げたのは、俺が最初に捨てたチョコレートの包装紙。

「砂糖菓子入ってるから大丈夫だ!」
これ以上ないくらいわかりやすいハート型の型に流し込んだチョコに混ぜたのはナッツだけじゃなくて、小さくて四角い、色とりどりの砂糖菓子。

「大丈夫じゃないって!それもう、チョコじゃないよ、カカオだよ!」
「99%は食えねェだろー?」
マヨネーズを混ぜてた土方までがそんなことを言う。

「銀さんが固まる前に砂糖足してあげるっ!チョコは甘くてナンボなんだからっ!」
それはテメェだけだっつぅのっ!!

「マヨネーズも入れてみろって…」
作業していたまな板ごと逃げようとした俺に砂糖とマヨネーズが迫る。自分のだけ作ってろってお前らっ!!

「やめろっ、触んなっ!」
慌てた俺は、床に置いてた自分の鞄に足を取られてつまづいて。
(ヤバイ、コケる…)

「うわっ」
「あっ!」

狭いキッチンで脚と脚がぶっかった銀時と土方もバランスを崩したらしい。
(お、オイィィィィっ!)

なんとかチョコを守った体勢で横向きに尻餅をついた俺の上に、ボウルに移された約1本分のマヨネーズを持った土方と、蓋の開いた砂糖のタッパーを持った銀時が、それぞれの持ち物ごと倒れてくる恐ろしい姿が、異常な程のスローモーションで俺の視界に映っていた。

「…………なァにやってんでさァ?」

砂糖とマヨネーズに塗れて重なったまま、動けずにいた俺達3人の上から降って来たのは、最低最悪のタイミングで帰宅した、沖田の声だった。

***

3人並んで砂糖とマヨネーズまみれのまま土下座して、バレンタインのチョコを作ってたんだって事情を話したら沖田は許してくれた。

奇跡的に銀時と土方のチョコは無事で、俺のチョコにも少し砂糖がかかったくらいだったから、冷蔵庫の中に移動(ってか保護だよな)させて。とにかくシャワーを浴びてからキッチンの掃除に取り掛かる。正確には沖田は、きれいに片付けさえすれば許してやるって話だったからさ。面倒だし時間もかかるから、3人一緒にシャワーを浴びようとしたのに、銀時だけ恥ずかしがって断固として脱がねェからさ、俺と土方はさっさと脱いで2人一緒にバスルームに入ってやった。

「お前、髪の毛までマヨネーズついてんじゃねェかっ!」
当然だけど、転んだ時に一番下になった俺が一番ぐっちゃぐちゃ。

「ああー、もったいねェ…」
「お前、ソコ?」

土方が身体を流してる間に俺はシャンプー。ほんっとここが土方ん家で、今日は土方んとこ行くって言って出て来て良かったぜ。余所で風呂なんか入って帰ろうもんなら(それが例えば小太郎や銀時のとこだったとしても)辰馬に何て言われるか、わかったもんじゃない。
アレ?でも今日俺、帰ってから辰馬とエッチする約束してんだよな。普段なら、俺と土方で抜きっこしようと舐めっこしようと文句も言わない辰馬だけど、今日はちょっと、そっちだって誤解されたらややこしいことになりそうだなァ。

「土方ァ、もしかしたら帰ってから電話するかもー」
帰ってからエッチしようって約束してんのにシャワー浴びて帰ったら辰馬が誤解しそうだって説明したら、頭からお湯を被りながら土方は『了解』と返してくれた。

砂糖とマヨネーズまみれの服はビニール袋に詰めて持って帰ることにして、俺は上下に靴下まで沖田のものを借りる。風呂から上がったら、1人まだ砂糖とマヨネーズまみれのまま雑巾がけをしていた銀時がキッチンから声を上げた。

「晋ちゃん晋ちゃん!沖田くん、辰馬んトコ行ったっぽかったよォ」
俺と土方でシャワー浴びてる間に沖田は出掛けたらしい。その前に電話していた相手が、明らかに辰馬だったと。

「それってつまりアレか?」
手作りチョコを渡そうとしてるってことは、もう今頃辰馬にはバレてるってことか?

「…。ま、いっか。土方もバレちまったんだしなァ」
「総悟が驚く顔が見たかったんだけどなァ」

俺だってそうだ。辰馬にいきなり渡して、手作りだって言ってびっくりさせたかったんだけどよ。仕方ねェよな。

「遅めに帰ってきてくれって、沖田に言っとけよ!」
「そんなん言えっかよ!!お前だって言えねーだろうが!」
「そ、そりゃ俺は…」

俺んトコはあくまでも辰馬ん家なんだ、言えるわけないだろうが。でもここはお前、2人で折半で借りてる部屋なんだろうがっ!

「もー、2人とも喧嘩しないでよォ!そんな暇ないでしょー?」
「銀時、テメェはさっさとシャワー浴びてこいっ!」
「ハイハイ」

仲裁に入ろうとした銀時の言う通りだ。喧嘩なんかしてる場合じゃないんだよな。
汚れた服のまんまの銀時が膝をついていた場所には見事にマヨネーズの油で型がついていた。

「土方くーん、上がったらパンツ貸してねェ」
脱衣所から銀時の声が響く。

「パンツまでは汚れてねェだろうがっ!」
「えーっ。まァいいや。でも服は貸してくれるよねェ?」
「貸してやるっつーの!」

キッチンの隅々まで1度軽く拭いてから掃除機で砂糖を吸い込んで、もう一回今度は洗剤を使って床を磨く。気をつけないと、マヨネーズの油のテカりなんだか磨いたから光ってんのかがわかんねェ。

ガス台周りを掃除しながら、明らかに土方はへこんで無口になっていた。マヨネーズをほとんど1本丸々無駄にしちまったんだから無理もないか。

掃除を終えてから、辰馬に帰るって電話して。銀時が言った通りうちにいた沖田も、俺と入れ代わりでこっちに帰ってくることになって。

銀時は14日の朝、俺は夕方、もう一度土方んトコにチョコを取りに行くってことにして。ココアパウダーをまぶしてラッピングするのはその時だ。

驚いたのは、沖田が俺達が集まってチョコを作っていたことは辰馬には黙っててくれたことだった。辰馬の中では、俺は土方と、土方ん家の掃除をしていて、バケツをひっくり返したもんだからシャワーを浴びざるを得なかったんだって話になっていて。

だから、手作りなんだって言って渡したチョコを、辰馬は本気で泣きそうになる程喜んでくれてさ。

やっぱり銀時が撒いた砂糖が入っちまってて少し俺には甘いと感じてしまったけど、それは辰馬から、口移しで食べさせられたせいもあったかもしれない。

あいつらもどうにか上手くやってんのかな?激甘チョコと、マヨネーズチョコの行方や成功度は、明日聞いてみよう。


END



ネコ3人のバレンタインチョコ作りでした。味覚がおかしい子は手作りなんかしちゃいけません!
密かに拾萬度アンケートシリーズです






















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