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4月から大学生になった兄貴分の近藤さんから、久しぶりに電話がかかってきた。

それが俺の答え


元気にしてたかァって、相変わらずの声で笑う近藤さんは、大学生になってもあんまり変わってないみたいだった。

『なぁ、トシぃ。久しぶりに総悟も入れて3人でメシでも行くかァ』
もちろん俺が断るはずなんてねェ。

「近藤さん、実は今、総悟ここにいるから、代わるわァ」
俺が電話を取ったのは、1人暮らしの俺の部屋。学校に近いから、総悟はしょっちゅう、ここに泊まりに来る。もちろん今日もそう。

「近藤さん、久しぶりでさァ」
総悟も楽しそうに近藤さんと話してる。近藤さんとの付き合いは総悟の方が長ェからな。小学生の時に、近藤さんの実家の剣道場に入門したら、そこにはすでにもう、総悟がいたんだ。

「構いやせんぜィ。じゃあ、2時間後」
(…え?)
通話を終えた総悟が俺の携帯を放り出す。

「そんなわけで今から飯でさァ。セックスは中止」
「えっ、ちょ、総悟っ…!」

実は、だ。俺も総悟も風呂上がりの全裸で、今からコトを始めようか…って瞬間だったんだ。近藤さんからの電話が鳴ったのは。着信鳴り分けのせいで、画面を見るまでもなく、俺も総悟もかけてきたのが近藤さんだってことがわかって、総悟が出ろって言うからさ、俺は床に転がされたまま、平静を装って電話に出たってわけ。

今日は、手首だけ縛って、ケツにバイブ突っ込んで、失神するまで快感耐久…なんて予告されてたから身体が疼いて疼いて仕方ねェ。今、電話してる間に、収まったことは収まったんだが。

「しょーがねェだろィ?『近藤さんが今からどうだ?』って言うんだから」

近藤さんとは、小学生の時からずっと一緒にいたけど、俺が中3で総悟が中2の時に、俺達は付き合い始めたんだってことは、近藤さんには話してなかった。だって、俺ら男同士なわけだし、近藤さんは、普通に女が好きなんだから。

「でもっ、そごっ」
「なんでさァ?」

ちょうど風呂上がりだし出かけるには問題ねェって言いながら立ち上がった総悟に縋り付いたら。思い切り冷たい瞳で見下ろされて、身体が震えた。ああ、ゾクゾクする。どうしよう、余計我慢できなく…。

「蔑まれて勃たせてるなんざ、本当に変態でさァ、十四郎は」
2人きりでも滅多に呼んでもらえない下の名前。もちろん、総悟が今、わざと呼んだんだってことはわかってる。

「抜いてやってもいいけど、どーせお前は、前だけじゃ満足なんかしねェだろうが」
「ぁっ、ごめ、なさっ」

あっという間に大きくなっちまった俺のモノを握りしめながら、総悟は相変わらず冷たい視線で俺を見下ろしてくる。もう、それだけで身体が熱くて熱くてしょうがねェ。

刻一刻となくなっていく時間の中、総悟が突然ニヤリと笑った。これは、何かを思い付いた顔だ。

「とりあえず抜いてあげまさァ。だから」
黒い笑顔を見せながら総悟が取り出したのは小型のローター。

「出かけてる間、これ入れときなせェ」
「ふぇっ?」

変な声を上げてしまった俺に構わず、総悟は舐めて濡らしたローターを俺の身体の中に突っ込んで。

「とりあえず、収めましょーかねィ」
悪魔みたいに優しい顔で、俺の中心を扱き始めた。

「近藤さんの前で、恥ずかしいことはできねェよなァ、十四郎」

***

下着と背中の間にコントローラー部分を挟まれて、総悟の命令通りローター入れっぱなししで家を出てきた。ローターのスイッチは、最弱にされてたから、そんなに辛いことはないんだけど、何食わぬ顔で電車に乗ってる自分の中にはローター入れられてるんだって。そっちの、羞恥心の方が俺を熱くさせていた。

待ち合わせ場所に着いて、近藤さんに会っても、久しぶりの再会を無邪気に喜ぶ総悟とは逆に、俺は、いつこの痴態が近藤さんにバレるんじゃないかって、気が気じゃなかった。

ゆっくりしたいからって、近藤さんが連れて行ってくれたのは、全席個室の居酒屋だった。俺も総悟も高校生なんだけど?近藤さん。…でも、人の多いファミレスなんかじゃなくて良かったかもしれない。

隣合って座った俺と総悟は烏龍茶で、向かいの近藤さんだけビール飲んで。だんだん酔ってきたのか近藤さんが饒舌に話し出す。俺は、一応聞いてるんだけど、半分はローターが気になってしまって、どこか上の空。細かいことは気にしない性格の近藤さんだから、気付かれてはいないと思うんだけど。

「大学は世界が広いぞォ!仲良くなった同じ学部のヤツがいるんだけどさァ」
ボタンを押して呼んだ店員にビールのおかわりを頼みながら近藤さんは続ける。近藤さんって、こんなに酒強い人だったっけ?

「男でも女でもいいらしくてなァ、同じ執行委員会の子に日々迫ってんだわ!」
確かにその子はなァ、この辺まで髪の毛長くて、キレイな顔してんのはしてんだけど、男だぜ?って。自分の二の腕辺りを示しながら近藤さんは笑ってる。

やっぱり、近藤さんみたいな『普通に女が好きな人』にとっては、そいつが同性の男に迫ってるのって、笑い話になっちまうんだろうなァって、どこか遠くで考えてしまっていた。

「で、近藤さんは、その見境いないやつとは仲いいんですかィ?」
「そうだなァ、今一番一緒にいるなァ。なんかいいやつでなァ、ここ教えてくれたのもソイツだし。正直、俺はソイツのお陰で、考えを改めたぞ」

男同士で付き合うとか気持ち悪い、有り得ない!と思っていた考え方が変わったんだそうだ。よっぽど、いいやつなんだろうな、そいつ。近藤さんがここまで変わっちまうなんて。

「だったら近藤さん、今から俺らが何言っても驚かねェですよねェ?」
総悟のヤツ何言ってんだ?オイ、まさか!

「何言ってんだ?お前らのことなんか、今更何聞いたって驚かねェよォ」
大口開けて笑う近藤さんだけど、絶対この人、夢にも思ってねェから、こんなこと言えてるんだって!

「総悟…」
「実は俺と十四郎も付き合ってんでさァ」

俺が止めるより早く、総悟はカミングアウトしちまった。近藤さんの笑い声が一瞬で止まる。引き攣ったような表情を見せた後で。

「総悟、マジで言ってんのか?」
「マジですぜィ。…なァ、十四郎」

総悟はヒドイ。ここぞとばかりに俺の名前を連発しやがる。でも、わざとやってるんだって、わかっていながら名前を呼ばれるのが嬉しい俺がいる。絶対今、俺の顔は赤いはず。

「本当なのか?トシ?」
ここが、全席個室の居酒屋で良かったと思った。俯いたまま頷いた俺の腰に、総悟の左腕が回されて。

(っ…!!)
ローターのスイッチをいきなり半分くらいまで強くされた。唇を噛んで声だけは飲み込んだけど。

「証拠見せてあげやすぜィ、近藤さん」
嫌だ、近藤さんの前で恥ずかしい姿なんか晒したくない…って思うのに、スイッチを強くされたローターのせいで、中からじわじわ沸き上がる快感に頭の中が麻痺したようになって。

総悟の右手が俺の頬に添えられて、右を向かされて。我慢できなくなって、俺から、総悟と唇を重ねていた。

「んっ、…んぅっ」
完全に固まってる近藤さんの視線を感じるけど、見られてるのって、興奮する。ただでさえ総悟とのキスは気持ち良くて仕方ねェってのに。やめらんねェ。

「そう、ごっ…」
唇を離された後は、もう全然頭が回らなくなっちまって、総悟のシャツを掴んで胸に顔を埋めるようにしがみついちまった。

「こんな感じでさァ」
普段絶対ェしてくれないくせに、っていうか、こんな風にしがみつくだけでもお仕置きモンだってのに、優しく俺の頭を抱いて総悟が撫でてくれるもんだから、もうそれだけで意識が飛びそうになっていた。

「そ、そうかっ!そうなのかっ!ま、まァ、いいんじゃないのかっ?」
引き攣った近藤さんの声は聞こえるけど、もはや言葉なんて理解できてねェ。総悟が撫でてくれる手の感覚と、内側からじわじわ押し寄せる快感しか、もう俺にはない。

「近藤さん。俺らのこと、誰かに話したのは初めてなんでさァ」
「そ、そうなのかっ?」
「今ので十四郎。どーやら我慢できなくなっちまったみてェなんでさァ。また誘ってくれやすかィ?」

言いながら総悟は、完全に勃起しちまった俺の中心をパンツの上から握り締めた。

(んっ、んくぅっ…)
喘ぎ声だけは出さねェように、必死で耐えることしか俺にはできない。

「ぁ、ァあ!また連絡するなァ!」
近藤さんがお金を払ってくれて、前を隠すように店の外に出た俺は、別れの挨拶もそこそこに、総悟に引っ張られて。乱暴に転がされたのは、多分ラブホの床。

「ギリギリ合格点でさァ」
話の流れからカミングアウトしちまったけど、あの人なら大丈夫でさァって、俺の顔の前にしゃがみ込んだ総悟が、柔らかい表情を見せていた。

「さァて。声も出さねェで我慢したご褒美やらねェとなァ」
言いながら、総悟はローターのスイッチを全開まで引き上げる。身体の中からの振動に俺はとうとう、声を我慢仕切れなくなった。

「ぁっ、ぅああっ、ァアっ、んぁあ…っ」
総悟が俺の服を全部脱がせて、ベルトで手首をきつく縛り上げる。

「後で遊んでやるから、ちょっとそうしてなァ」
俺の服を全部ソファに持って行って、自分も下着1枚になった総悟は、冷蔵庫からビールを取り出して、ベッドに座って飲み始めた。

「さすがに近藤さんの前では飲めねェからなァ」
床に転がって悶えてる俺を見下ろす総悟と時々視線が合う。気持ちいいのは気持ちいい。だけど俺、これだけじゃイケねェ。
総悟に殴られるの覚悟で縛られた両腕を前に持っていったら、自分のを触る直前で総悟に踏み付けられた。

「俺がビール飲む間も我慢できねェんですかィ?」
「ぁっ、そう、ご、ごめ、なさい…」
泣きそうな俺の腕の上から足を離した総悟は。

「ちゃんと、意識飛ぶまで痛めつけて満足させてやっから、安心しなせェよ」
とびきり綺麗な笑顔で、俺を打ちのめす残酷な言葉を、さらりと言った。

***

フラフラになってまともに歩けもしねェ俺は、早朝にこっそりと人目を忍んで総悟に支えられながら家に帰ってきた。

ロフトに上がる気力もなかったけど、総悟が下から押し上げてくれて、なんとか上がって。そこから5時間くらい爆睡だった。起き上がれなかった。

ふと、なんとなく目覚めた時に、最初に聞こえたのは総悟の話し声。

「…そうですかィ、ありがてェや。……大丈夫でさァ、もう2年なんですぜィ?……アハハ、やっぱアンタ、俺らの兄貴分でさァ」
「……そう、ご?」

姿が見えねェと思ったら、下に降りてたみたいだ。
「あ、十四郎起きたんで、代わりまさァ」

近藤さんって言いながら、梯を昇ってきた総悟に渡された携帯を、寝たままの体勢で耳に当てた。
『ああ、トシかぁ。うん、あのなァ…』

一晩考えたけど、俺はお前らが幸せなんだったらそれでいいわ、って言われて、一瞬何のことだかわからなかった。
『やっぱ昨日はビックリしちまったけどよ…。まァ、誰にも言わねェし、仲良くやれや』

蘇るのは昨日のこと。そうだ、俺達、近藤さんにカミングアウトしちまったんだった。そして、その電話は、近藤さんが俺達を受け入れてくれたんだってことを示していた。

「近藤さん…」
『トシィ!お前も再来年、うちの大学来いよ!お前らだけじゃねェんだぞォ』

電話の向こうで、いつもみたいに近藤さんは大口を開けて笑ってた。梯を半分昇ったところで、ニヤリと笑う総悟の顔は、『だからあの人なら大丈夫って言ったんでさァ』って、言ってるみたいだった。


END



拾萬度第六弾は「近藤にカミングアウトする沖土」です!なんでこうなったのかは良くわかりませぬ…(汗)近藤が言ってた「男も女も見境いない友達」は、もちろん坂本で、「迫られてるロン毛の美形」はもちろん桂です!辰馬は、まだおりょうちゃんに出会ってないんだよ。






















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