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※「如月サディスティック」の続きです

慌てて風呂場から出て行ったら、辰馬が高杉を抱き起こしているところだった。

この痛みが優しすぎて


「晋、晋!?…銀時?」
裸のまんまで泣いてる高杉と、下着一枚の俺。辰馬じゃなくたって、何があったかなんて一目瞭然で。

「銀時っ、おんし…」
何て罵られても殴られても蹴られても仕方ないって、覚悟は決まってたのに、辰馬の腕を掴んで止めたのは高杉だった。

「お前だって、何回も浮気してんだろ?」
「し、晋、助…」
「俺から誘ったんだよ。いいだろ、俺だって1回くらい」
高杉から手を離した辰馬が俯いて、唇を噛み締めている。

「高杉、お前何言ってんのさ!」
間に入った俺が叫んだけど、2人とも視線を外したまま小刻みに震えていて。

すっと無言のまま立ち上がった辰馬は、くるりと踵を返し、本当に何も言わずに玄関から出て行った。

「高杉、お前っ!なんであんなこと!」
銀さんは覚悟決めてたのに!と、顔を覆ったまま泣き続ける高杉に詰め寄ると、弱々しく言葉を紡いだ。

「だって、本当のこと…言ったら、辰馬、お前を許さな…い」
「高杉、お前ホントに馬鹿だろっ?」
銀さんは、確かに辰馬が好きだけど!もう、たぶん初めて会った時からずっと好きだけど!だからって、お前らの仲引き裂こうとか、お前から奪おうだなんて思ってないんだからっ!

「辰馬連れて帰ってくるからっ!お前、馬鹿なことすんじゃねェよ!ここにいろよっ!」
急いでさっき脱いだ服を着て、俺はそのまま辰馬のマンションを飛び出した。

***

辰馬のマンションを出ると、すぐ目の前にはコンビニがある。
高杉に、連れて帰るなんて言ったものの、辰馬がどっか遠くまで行っちゃってたらどうしようって不安だった俺は、コンビニの前でしゃがみ込んで、普段吸わない煙草をふかしている辰馬の姿を見つけて、ちょっとだけ安心した。

そういえば、2月だってのに、コートも着ないで出てきてしまった。寒い。

さっきは全然気付かなかったけど、パーティーでもあったのか、辰馬はスーツ姿だった。どこの外資系サラリーマンだよお前。大学生には、悪いけど見えない。

「ごめん辰馬。わかってると思うけど、高杉は浮気なんかするようなヤツじゃないから」
銀さんから誘ったって言うか、無理矢理襲いましたって、殴られるのを覚悟で、正直に告げた。

後ろめたくて、ちゃんと顔を見れなかったんだけど、辰馬は泣いてるみたいだった。

「わかっとるぜよ。おんしが悪いんじゃろ。晋から誘うなんて有り得んからの」
隣に並んで座って、手を出したら辰馬が煙草を渡してくれた。普段は吸わないヤツだけど、仕事柄、ライターくらいは持ってたんだろう。って言うか、辰馬が選んだ煙草がセブンスターで、普段高杉が吸ってるやつで。ちゃんとそういうの覚えてるんだなって思って。

「ごめん辰馬。…銀さん殴って」
ぶるっと寒さに震えながら、煙草に火をつけた。あー、マズイ。

「晋は、なんでそこまで、おんしを庇うんじゃ?」
自分が何を言われたって仕方ない。それだけのことはしてきたのだけれど、と辰馬は涙を指で拭いながら静かに言った。

普段、ずっと笑ってるヤツの本気の涙って、すげェ痛い。もう、俺は言ってしまうしかないって思った。高杉だけじゃなく、辰馬まで泣かしちゃって。

「高杉は、気付いてたみたいなんだ」
「…何のことじゃ?」
どれだけ浮気しようとフラフラ遊ぼうと、結局は高杉しか見てない辰馬はきっと、全然気付いてないんだろうな。どうせならこのままずっと、隠しておきたかったんだけど。

「銀さんが、辰馬のコト好きだってコトに、だよ」
「…は?」
案の定、数秒間を空けて、辰馬はキョトンとした顔でこっちを見た。夢にも思ってなかったんでしょ、きっと。

「銀さんは、初めて会った時から、辰馬のコトが好きなんですよ」
「銀時…」
短くなった煙草から、灰が落ちるのも気付かないくらい、辰馬は驚いていた。

「すまん、銀時、わしは…」
「あー、その続き言わないでくれる?わかってっからさ」
お前の口からハッキリ聞いちゃったらさ、銀さんまで泣いちゃいそうよ。

「本当のこと言ったら、俺が無理矢理高杉襲ったって言ったら」
辰馬は銀さんのこと許さないから、だって高杉が。

「アイツ馬鹿すぎ」
って言うか、優しすぎ。
俺がポツンと呟いた言葉で、辰馬が立ち上がった。

***

昨年11月の大学祭の時、晋助の友達が妹を連れて遊びに来ていた。

女装させられていた晋助は、散々逃げ回っていたようだけど、結局は仲良く模擬店を回っていたらしい。
その友達、河上万斉が、帰る時にわざわざ自分のところへ来て言ったのだ。
『晋助は、優しすぎるから、気をつけてあげてほしいでござる』
何の話だかよくわからない自分に、更に河上は続けた。
『自分のことは、後回しにしてしまう性格なんでござるよ』

もしかして、おんしは晋の元彼がか?そう尋ねようとした時にはもう、河上は晋助や妹のところへ戻ってしまっていて。

そういえば、銀時や桂が見た女子高生は元彼の妹だったはずで。専門学校に行っている、なんて言っていたあの金髪の妹が、本当は女子高生ならば、話は繋がるような気がした。みんなが、自分に気を使って口裏を合わせたのかもしれないと考えるならば。

「銀時、立ちィ」
短くなった煙草を灰皿に放り込んだ。

「歯ぁ、食いしばりィ」
銀時のしたことは、確かに許せない。けれど、そうやっていつまでも自分と銀時がいがみ合っていては、晋助が哀しむのだと思った。晋助は、そんなこと望んでない。

素直に立ち上がった銀時に思い切り、容赦なく殴りかかった。感情全部を拳に込めてぶつけて。ただし、一発だけ。
よろけた銀時は、堪えられず斜め横に倒れ込む。

「これでおしまいじゃ」
倒れた銀時に右手を差し出して。

「晋が心配じゃから、戻ろう」
よろけている銀時を支えてやると、駅の方から、誰かが猛ダッシュで走って来るのが見えた。

「お前ら、何やってんだっ!?」
肩で息をしながら立ち止まったのは土方君だった。

「どうしたんじゃ?こんな朝早く?」
「早くねェだろ!9時過ぎてんだろーがよ」
叫ぶように言ってから、ハッとした表情を見せる土方君。

「こんなことしてる場合じゃねーだろ!高杉がっ!」
「!!」
br ***

歯ァ食いしばりィ、と言われて、覚悟は決めたけど。
辰馬の拳は重かった。
長くて太い腕1本に体重を全部乗せて。辰馬の想いが全部乗っかった、重たい重たい拳。
耐えるつもりだったのに、堪えきれなくて倒れてしまった程。そしてじんわりと口の中に広がったのは、血の味だ。

だけど、殴られたのはその一発だけで、辰馬はそれで終わりにしてくれた。微笑みながら差し出された辰馬の手を掴んで立ち上がる。ああ、馬鹿。殴られた頬なんかより、ずっと、別の場所の方が痛ェじゃん。

まともに顔を上げられずにいたら、駅の方から土方君が走って来て。
「こんなことしてる場合じゃねーだろ!高杉がっ!!」
マンションのエレベーターホールに走って行く土方君と、血の気が引いて立ち尽くす辰馬。

「ホラ、行くよ、辰馬!」
土方君が呼んだエレベーターに、3人で乗り込んだ。

「お前、なんだその顔?」
俺の、唇が切れて腫れた頬を見て、呆れたような顔を見せる土方君。気にしないでくれるかなァ。

「それより土方君、どうしたのさ?」
「ああ、なんか急に、アイツが気になって電話したんだけどよ」
土方君は重たい口を開いた。

「泣きながら『死にたい』とか言うから、慌てて来た」
お前がまた、浮気でもしたんじゃねェかと思ってなと、土方君は辰馬をちょっと睨むように見上げて。

ああ、違うんだよ土方君、辰馬は全然悪くないんだよ。

エレベーターが7階に到着して。それまで黙って青い顔をしていた辰馬が、真っ先に飛び出して、部屋に駆け込んだ。

慌てて来たと言うだけあって、よく見たら土方君はジャージにフリースをはおっただけの姿だった。いつもシャツとかで、キレイ系にまとめているはずの土方君が。

「晋っ!晋!!」
辰馬が玄関に一番近い部屋の扉を開け、リビングに走り込み、2人の寝室になっている部屋に駆け込んだけど、高杉の姿は見当たらない。

ずっと、自分達はマンションの下が見えるコンビニの前に座っていたのだから、どこかへ出掛けたとは考えられなかった。

「晋、どこじゃ、晋!」
辰馬が、夏になるとよくそこで涼むために、ベンチの置いてあるベランダに出た。確かに、7階から飛び降りたらって考えられるけど。それって…。
ヤバイ銀さん目眩してきた。

「坂本!バスタオルどこだ!!」
リビングの手前の扉の前で、土方君がフリースを脱ぎ捨てながら叫んでいる。

「晋っ!」
土方君が、靴下を脱いでいる間に、辰馬は風呂場に駆け込んだ。

そういえば、湯舟にはお湯を張っていたはずだけど。
バスタオルを出して土方君と一緒に風呂場を覗いたら、ぐったりと湯舟に沈みかけた高杉を、スーツが濡れるのも構わず辰馬が助け起こしているところだった。
頭からシャワーを浴びて、湯舟につかっていた高杉の身体が、信じられないくらい冷たい。何コイツ、水浴びてたのかよ?2月だぜ?

「銀時、ヒーターとエアコン入れるんじゃ!」
「お、おうっ!」
意識のない高杉の身体を拭くのは土方君に任せて。だってきっと、土方君は、辰馬がエアコンのリモコンを置きっぱなしにしてる場所なんて知らないだろうから。

「坂本、風邪ひく前にそのスーツ脱げ」
ある程度高杉の身体や髪を拭き、新しいバスタオルで身体を包んだ土方は、そのまま抱き抱えてリビングまで運ぶ。抱き抱えた体勢のまま、銀時がつけたヒーターの前に座った。
辰馬は、濡れたスーツにタオルを被ったまま奥の寝室に消え、部屋着に着替えて戻ってくる。その手には、救急箱。

「なんで、こんなことになったんだよ?」
辰馬の浮気を疑っている土方君は、高杉を離そうとはしなかった。

「ごめん土方君、今回銀さんが悪いから」
土方君を宥めている横で、辰馬は高杉の左手首に傷薬を塗り始めた。そんな傷に、俺も土方君も全然気付いてなくて。だけど、傷は浅くて、うっすら血が滲む程度のもので。ジグザグに歪んだソレは、ためらい傷ってやつだ。

「晋が、…辰馬ごめん、じゃって」
死ねなかった、って。高杉の手を握ったまま、辰馬は泣き崩れた。
辰馬が風呂場に駆け込んだ時、まだ高杉の意識はあったらしい。

「俺、あっちでコイツと話してくるからな」
腕の中の高杉を坂本に抱かせた土方君に引っ張られて、俺達は玄関に近い部屋に入った。

***

2人きりになった(たぶん土方君は気を使ってくれた)リビングで、泣きながら晋助の身体をさすって温めていたら、カーペットに僅かについた血に気がついた。銀時は無理矢理ヤったと言っていたから。

(なんでじゃ、晋…)
辛いなら当たってくれてもいい。暴れたって泣いたってイイ。
自分が全て悪いことにしてしまえば、全て自分のせいにしてしまえば。そうやってなんとか収拾をつけようとするなんて、晋助らしいけど。
晋助らしいけど、それでこうやって、傷ついて苦しむ晋助を自分は見たくない。
晋助には、いつも笑っていてほしいと思っているのに。

だいぶ晋助の身体も温まってきた頃、銀時達が行った部屋から、土方君の怒鳴り声が聞こえてきた。
『テメェは馬鹿かァっ!!』

リビングにまで響いてきた大声に、ピクっと身体を震わせて、晋助がゆっくりと右目を開いた。

「…辰馬?………ごめんな」
「もう、えいから、晋」
だから、もう2度と、死ぬなんて言わんといて。そんなに自分を傷つけないで。

「よくねェだろ?なんでお前泣いてんだよ?……イテっ」
手を伸ばして、起き上がろうとした晋助が、痛みを訴えた。

「晋、傷見せてみぃ」
「えっ、ちょっ、辰馬っ!」
銀時に無理矢理されて、切れてしまった傷に薬を塗るため、バスタオルを外して薬を持ち秘部に手を伸ばした。

「ヤダ、やだっ!自分でするからっ!辰馬っ!」
「やだじゃないぜよ!」
このまま一生、使えなくなったらどうするんじゃ!

「自分で塗るからっ!ャっ…ァんっ…」
(馬鹿野郎、お前に触られたら、感じちまうだろうっ!)

***

リビングから話し声が聞こえてきて、高杉が目を覚ましたんだと思った。
怒った土方君に、辰馬とは逆の頬を殴られて、ティッシュを探していた俺より早く気付いた土方君が扉を開けたけど。

『んァっ…たつ、まっ、…ァっ、ふァっ…』
すぐにリビングから聞こえてきたのは、紛れも無く高杉の喘ぎ声。ちょっとちょっと、あいつらいきなり何やってるワケ?

耳まで真っ赤にして、俯いたまま扉を閉めた土方君は、その場に座り込んだ。

「何、なに?土方君、もしかして、感じちゃった?」
そういえば、最近沖田君の話すら聞かないなァ、なんて思いながら、土方君を覗き込む。
まさか別れたなんてことはないだろうけど、喧嘩でもしてんの?倦怠期?だったらちょっと銀さんが、って下心アリアリで。
体育座りで隠してるけど、ジャージの土方君はやっぱりテント張っちゃってるみたいで。

「ねェねェ、土方君」
「うるせェっ!!」
瞳孔を、全開にまで見開いた土方君に、銀さんはまた殴られた。ヒドイじゃない…。

***

辰馬のおっきい手で身体を触られる。それが、なんでもない腕だとか、脚だとか背中だとしても、俺は反応せずにはいられない。
辰馬の手には、媚薬でも仕込まれてるんじゃないかって、本気で思っちまう。

「晋、薬塗るだけじゃから」
「わかっ、てっ、けどっ、ァアっ」
腰に添えられた手だけで感じる。辰馬に、大事なトコ、見られてる。見られてるだけで、ゾクゾクする。

「たいした傷ではなさそうじゃ、よかった」
お尻の向こうから聞こえる辰馬の声は、安堵に満ちていて。
傷薬を取った辰馬の指が中に入ってきた。

「痛ァっ!やだっ、辰馬やだっ!…んアアっ」
「すぐ終わるきに、我慢しぃ」
「ァっ、あっ、うはっ、んん、ァアっ」
痛くて痛くて、きっと2〜3日は使い物にならないだろうって思ったけど。だけど、薬を塗る辰馬の長い指が、イイところを掠める度に、痛いってことを訴える悲鳴とは別の声が出た。

(さっき銀時に無理矢理出されたばっかりなのに…)

勃起してしまったのを辰馬に見られたくなくて、ただ真面目に薬を塗られていただけで感じてしまったなんて悟られたくなくて、なんとか俯せの体勢を取ろうとしたんだけど、アッサリ辰馬に抱き抱えられてしまった。

「やだ、辰馬見んな!」
「晋、カワイイ」
ぎゅーっと抱きしめられて『愛しとるぜよ』って囁かれてキスされて。

泣き腫らした目だけど穏やかな表情の辰馬に見つめられて、下半身の熱は、徐々に収まりつつあったのに。

「スマン、晋は手だけでいいからの」
「えっ?ちょっ、辰馬っ!!」
お姫様抱っこのまま、寝室に連れて行かれて、俺はベッドの上に倒された。

「馬鹿っ!誰か来てんだろっ!」
「知らんぜよ。それに、晋じゃって、こんなんじゃろ?」
言って、俺の中心を握りしめながら覆いかぶさって唇を重ねてくる辰馬。だから、俺はちゃんと、収まりそうだったんだっつーの!

悔しいから、俺はキスされたまま辰馬の下着の中に手を突っ込んだ。
(なんだよお前、俺よりギンギンじゃん)
下だけ脱いだ辰馬とお互いのを擦り合わせて、舐め合って。
でも、途中ですぐ、気持ち良くなってしまった俺は、してあげることになんか集中できなくて、やっぱり辰馬に喘がされてるだけだった。

辰馬の口の中に白いモノをいっぱい出して。しばらく動けないでいる俺を抱きしめた辰馬が耳元で囁いた。

「晋、触って」
いつも、俺がイクだけで終わりにしてしまうことが多い辰馬だけど、今日はどうやら、そういう気分じゃないらしい。

本当は俺も口でしてあげたいんだけど、辰馬がイクまで舐め続けるのは正直ツライ。辰馬遅いし(俺が早いのか?…いや、そんなことはねェっ!)何たって辰馬のはデカイんだ。口の中に入れるだけでいっぱいいっぱいで。
辰馬に頭を撫でられて苦いキスを受けながら(いや、俺のだけど)、俺は右手を動かし続けた。

***

しばらく2人でぐったり横になって。一息ついてようやく、誰か来ていたことを思い出した。
1人は銀時だとしても、話し声がしてたから。辰馬が服を着せてくれた時に、銀時に噛まれた乳首に擦れて痛くて、薬を塗って絆創膏を貼ってもらって。

ようやくリビングに行ったら、来てたのは土方だった。銀時は、顔をパンパンに腫らせて、ティッシュでひたすら鼻血を抑えてる。
そうだ、辰馬と銀時が出て行った後、いきなり電話がかかってきたんだった。俺は、泣き過ぎてマトモに喋れないのがわかっていながら、どうしてかその電話に出てしまったんだった。

「土方ごめんっ!当てつけるつもりとか、そんなん全然ないから…っ」
「何言ってんだ、お前」
煙草をくわえたまま、鋭い視線を送る土方。

「だってお前、沖田と…」
沖田が受験で忙しくて、正月から会ってないって言ってたじゃねェか。1ヶ月以上会えないなんて、お前らには有り得ないことだろう?いくら受験でも、わかっていても絶対土方は寂しいはずで。
だから、俺を情報処理室のバイトに誘ってくれたんじゃなかったのかよ?

「高杉、ココ座れ」
言われるがままに、俺は土方の前に出された座布団の上に座る。

「お前は、周りに気ィ使い過ぎ」
手を伸ばされてビクっと震えたけど、土方は俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でただけだった。

「話は銀時から聞いたけどな、お前もっと自分大事にしろって」
銀時がボコボコなのは、きっと怒った土方に殴られたんだろうと思った。
沖田と一緒にいて甘えてる時と、それ以外普段の土方は全然違うからな。両方知ってるのは…、あれ、もしかして俺だけか?

「そうじゃよ、晋」
俺の後ろに座った辰馬が、ぎゅっと身体を抱いてくれた。俺は、俺と辰馬のコトを知ってるやつだったら、周りに人がいても辰馬に甘えてしまうけど。

「辰馬は、もう銀時のこと、怒ってない?」
振り返るようにして見上げたら、辰馬は微笑んでいた。

「怒ってないぜよ。わしも一発殴らせてもらったからの」
これで、いいんじゃろ?と言われて俺は小さく頷いた。よかった。

「いやァ、正直辰馬のが一番痛かったよォ!土方君のより」
鼻の中に入れていた血のついたティッシュを変えながら銀時が口を挟んだ。

「なんだとテメェ、まだ足んねェのかっ!」
「なんでだよっ!銀さん土方君も溜まってんのかなって思っただけじゃない!」
「うるせェっ!テメェにされるくらいなら、自分で抜くわっ!」
「うわっ、土方君ひどすぎっ!」
あれ、もしかして、銀時と土方も何かあった?と思ったけど。辰馬の腕の中にいたら、落ち着いてしまって。昨夜一睡もしてなかった睡魔が襲ってきて。

「晋、朝ご飯にするかの?…晋?」
言い合いを始めた銀時と土方のことなんて、辰馬はあんまり気にしてないみたいで。そういう俺もだけど。そうだよな、だってあいつら、別に本気で憎み合ってやってるとかじゃないからな。

っていうか、俺、そろそろ限界?

「あー、そういえば高杉さァ、一睡もしねェでお前が帰ってくんの待ってたんだぜ、辰馬」
ウトウトし始めた高杉に気付いた銀時が、土方のパンチをかわしながら告げた。

「晋…。寝とってって言っとるじゃろー、いつも」
朦朧とした意識の中で、また辰馬に抱き抱えられたような気がした。

「ちょっと、晋寝かせてくるぜよ」
それから朝ご飯にするろーって、辰馬の声が遠くで聞こえる。

「馬ァ鹿、もう昼だろうが!」


END



修羅場らしい修羅場でもありませんでしたァ!よかったよかった(そうか?)
ちょこっとしか書きませんでしたが、春休みの大学に高杉君と土方君がいたのは、情報処理室(要はパソコン室)で、大学のホームページのデータ入力のバイトをしてたからなのです。
学内で、学生に限ったバイトなので、情報処理の授業だけ履修してれば金髪でも茶髪でもOKっていうんで、土方君は高杉君を誘ったんだよ。沖田君が受験で土方君は暇だし(家庭教師は夜だから)、高杉君はとくにバイトしてませんので。
高杉君は「辰馬4回になるから、春休みから就職活動するんだろうな」って、勝手に思ってるし。
実際は全然なんだけど(桂君は着々とやってます。だから忙しくて出るとこありませんでした)。

土方君と沖田君は、基本的には2人っきりの時しかイチャイチャしないんですが、晋ちゃんは土方君ちに1週間引きこもってる時に見てるのね。
普段の土方君は男気のある人です。とてもとてもドMでネコだなんて…(聞いてない)。

高杉君は、銀時とか桂君とか沖土とか、自分達のコト知ってる人の前では辰馬に甘えます。
辰馬は…いわずもがな、どこでもいつでも晋ちゃんにベタベタ。辰馬が一番オープンだわ。

しかし、銀さんは懲りないね…(苦笑)
自分でツッコミ入れたいとこ満載ですが、ますます下品になるのでやめときます。






















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