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「…きろ…、高杉、起きろって…」
身体を揺さ振られて、うっすら目を開けると、静かになった店内に土方の姿があった。

IHBA・4


周りを見回すと、俺を起こす土方と、身体を支えてくれている沖田の姿。

「…俺、酔ってる…」
身体がふわふわ浮いているような感じがする。

「当たり前でさァ。高杉は飲み過ぎ」
「飲めって言ったの沖田だろー」
はっきりしない頭と視界。だけど、ここがどこだったか、どうしてここにいるのかはしっかり覚えていた。

「もう、閉店?…帰ろ」
立ち上がろうとしたら、脚に力が入らなかった。そういえば、前に、小太郎達と4人で飲んだ時も、急に立てなくなったんだっけ。

「高杉って、酔っ払ったら、いきなり寝ますねィ。脚にもきてるみたいだけど」
「うん…、前も、こんなんなった…」
あの時は、辰馬が、支えてくれたんだ。まだ、付き合ってもいない頃で。そうだあの時、辰馬と銀時、キスしてたんだ…。

「帰ろうって、お前、どうする?」
土方がフラつく俺を支えて、立たせてくれた。

「土方ん家、行ってイイ?」
「俺は構わねェけど…」
今日は土方に泊めてもらえるけど。…これから、どうしようかな。

「…俺、これから…」
どうしよう…、と呟いた瞬間、涙が溢れてきた。飲んでるせいか、やけに涙腺がもろい。

「うっ…、ふっ…」
帰ろうとしたのに、立っていられなかった。

「高杉ィ…」
「お前、大丈夫か?」
沖田と土方が、両方から支えてくれた。

「うんっ…。でも…、俺…」
大丈夫じゃないけど、大丈夫って言うしかないじゃないか。

「好きだったのは、俺だけだったんだからっ、仕方なっ…」
言葉が続かない。

「高杉…。それは、ちゃんと、本人に聞けよ」

土方がわけのわからないことを言い出して。土方の視線の先を、ぼやけた視界のまま追って行くと、今まで気付かなかったけど、カウンターに背を向けて長身の男が1人座っていた。

「ほら、坂本!」
「…嘘……」
まだバイトに行っているはずの、辰馬がそこにいた。土方に腕を引かれて、デカイ身体を縮こませて、俺の前に立つ辰馬。その辰馬が、いきなりその場に土下座した。

「すまん!晋…、本当に、悪かった…」
すまんとか、ごめんとか、それで済む話じゃない。だって、お前、なんで、よりによって銀時なんだよ?

「ほら、高杉。文句言うなり、殴るなりしてやれよ。ちゃんと受け入れるって言うから連れて来たんだ」

沖田はずっと俺についててくれたはずだから、辰馬を連れて来てくれたのは土方なんだろう。どうやって連絡をつけたのかはわからないが。

「…。お前なんか、もう、好きじゃねェ」
土下座する辰馬の姿を見て、迎えにきてくれたのだとわかって、嬉しいはずなのに、俺の口からは、そんな言葉しか出てこなかった。

「お前なんか嫌いだ!どこへでも行けっ」
最後の方は、涙混じりの声で、ちゃんと言葉にはならなかった。

「高杉…、お前」
目を見開いて、土方が俺と土下座したまんまの辰馬を交互に見つめている。

「し、ん…」
泣きそうな顔で、立ち上がった辰馬。

「ごめんね」
哀しそうに俺に向かって微笑んだ辰馬は、俺の頭を1回撫でて、頬に触れた後、静かに店から出て行った。

「おい、高杉!あれでいいのかお前っ!?」
叫んでる土方の顔なんて歪んで見えない。

「まーったく、高杉は…。どうしようもありやせんねィ」
沖田に肩を抱かれて。俺はそのまま、一気に泣き崩れた。

「おい、高杉…」
「こいつは、土方と一緒でさァ」

沖田の肩に顔を埋めて泣いていたら、横に土方が座って、2人で話しはじめる。
「素直じゃないの。嫌いなんて、嘘に決まってまさァ」
「俺は、そんなに意地っ張りじゃねェ」
「よく言いまさァ。あずみ、西郷のママ、すいませんね、閉店後の場所借りちゃって」

高杉が落ち着いたら帰りまさァ、と沖田が言っているところを考えると、わざわざ、俺と辰馬のために閉店後の店内を開けてもらっていたようだ。
「構わないわよ。ママ、あたしゴミ捨ててきまァす」
あずみの声がして、ドアが閉まる音が聞こえた。

早く、泣き止まなきゃみんなに迷惑だって、わかってるけど鳴咽が止まらない。辰馬に、最後に撫でられた頬が痛い。誰とどこで浮気してたって、やっぱり辰馬は辰馬だって、あの大きい手が好きだって、なんで、なんであんなことを言ってしまった後でしか、俺は気付けないんだろう。俺は大馬鹿野郎だ。思ってもいないことばっかり、口から出るなんて。

店の電話がけたたましく鳴ったのは、その瞬間だった。

『ママ大変!辰っちゃん止めて!!』

受話器から漏れてきた声は、下に、ゴミを出しに行ったあずみのものだった。

***

ゴミを出したあずみが、空を仰いだのは、本当に偶然だった。

いつもの閉店時間の5時を1時間近く過ぎて、通勤ラッシュが始まっている時間。すっかり明るくなった空と朝日が眩しい。
背伸びしながら、店が入っている10階建てのビルを見上げたら、屋上の、フェンスの外に、ぼんやり人影が見えた。

(まさか…)

慌てて携帯を取出して、店にかけた。

***

受話器を放り出した西郷は、そのまま、残っていた3人には何も言わず店を飛び出す。7階の、この店からなら、屋上までは、階段を昇った方が早かった。

「どうしたんでさァ…?」
ただごとではない雰囲気を感じ取った沖田の声にも緊張が走る。
ものの1分もたたないうちに、あずみが店に駆け込んで来た。

「辰っちゃんが、飛び降りしようとしてる!」
「あんの、馬鹿野郎っ!」
すぐに立ち上がった土方が、あずみと一緒に走って店から出て行った。

「…なんで…?」
泣いたままの、俺の頬をぺちぺち叩く沖田が、真っ直ぐ俺を見つめていた。

なんで辰馬が、そんなこと。死にたくなっているのは、浮気された上に、心にもない言葉を突き付けてしまって、自己嫌悪で死んでしまいたいのはこっちの方だ。

「それだけ、アイツも高杉のことが、好きだったって、ことじゃないんですかィ?」
「沖田、俺」
「わかってまさァ。どうしようもない位、アンタはアイツが好きなんだろィ」
素直じゃない奴、とぼやきながら、沖田が頷く俺に肩を貸してくれて、何とか立ち上がった。酒は、まだ脚にきていて、俺はふらふらしながら、沖田と屋上を目指した。

***

晋助に嫌われたら、もう生きていけないと思った。嫌われても仕方ないだけのことを自分がしたのだと、それはわかっていたけれども。いざ面と向かって『嫌いだ』と言われて。こんなにも、自分の中が空っぽになるなんて思わなかった。

朝日の中で見下ろす見慣れた街が滲んでいた。
「馬鹿野郎っ!!」

いきなり襟の後ろを掴まれて、フェンスの内側に引き上げられ、思い切り殴り飛ばされた。屋上のコンクリートに転がって見上げると、肩で息をしながら、まさに鬼の形相で立ちはだかっていたのは西郷だった。

「死にたきゃ勝手に死にな!でも、このビルから飛び降りられるのは迷惑なんだよ!」
「…西郷どの」
コンクリートの上にへたりこんでいたら、涙が溢れてきた。

「し、ん…晋…」
大好きじゃ。許してもらえるのなら、何でもする。晋助のためなら何でもできる。

「テメェは馬鹿かっ!」
屋上の扉が勢いよく開いて、飛び出してきた土方君に殴られた。今日はよく殴られる日だ。

「テメェ、それで満足か?高杉に、恋人の死を背負わせて、それで満足か?」
襟元を掴んで土方君が怒鳴っている。

「じゃけど、わしは、もう…」
「テメェには、わかんねェのかよ?高杉が、ホントはどう思ってるかくらい、わかんねェのかよ?」
「土方君…」
「さっさと来いっ!」
そのまま引きずられて、屋上の扉へ向かった時、沖田君に肩を支えられたフラフラの晋助が姿を現した。

「…馬鹿野郎ッ!」
あ、また殴られる、と思って目をつぶり、身を硬くして待ったけど、いつまでたっても衝撃は来ない。

「ふっ…うっ…」
恐る恐る瞳を開けると、手を振り上げたまま動きを止めて、泣いている晋助の姿が目に入った。

「晋、ごめんなさい」
「…馬鹿辰馬!」
崩れるように、その場にへたりこむ晋助。

「…嫌いにっ、なんか、っく、なれるわけ、ねェだろうが…っ」
晋助の右目から、零れ落ちた涙がコンクリートに染みを作っていく。

「晋、ごめん」
「俺がっ、好きな辰馬はっ、そんな、飛び降りなんて、する奴じゃねェ」
辛いことがあったっていつも笑ってて、いつも前向きで、みんなには心配かけさせないようにって。その内側に何を思っていたって、とにかく、俺とは違って明るくて。

「そんな、死のうとする辰馬なんて嫌いだ」
「じゃけど、…晋に嫌われたら、わしはもう生きていけんのじゃ」
「だからっ!」
こんな辰馬は、2度と見たくないと思った。俺のことで、こんなに変わる奴だったんだと思った。他のことじゃなくて、俺のために。

「嫌いになんか、なれねェって、言ってんだろ!」
馬鹿野郎と、もう一度言ってやった。

「お前が、浮気性でもなんでも、もう俺は、お前を嫌いになんてなれねェんだよっ!お前が好きなんだよ!」
泣きながら叫んだ晋助を抱きしめて触れるだけの口付けを落とした。

「晋助、ごめんね」
「馬鹿辰馬っ!」
馬鹿馬鹿馬鹿っ!と泣き叫ぶ晋助を抱きしめたまま立ち上がり、見守ってくれていた皆に頭を下げた。

「後は好きにして下せェ。…土方、帰ろう」
2週間前の、再現のような現場に、ふて腐れたような表情を見せた沖田がくるりと背を向けた。それを合図にするように、西郷とあずみは階段を降りて帰ってゆく。

「…総悟っ!」
階段を降りようとした沖田の背中から、土方君が抱き着いていた。
「ちょっとだけ…」

抱き合う坂本と高杉を見て、抑え切れなくなったのは土方だけではない。
「十四郎…」
抱き着いた土方君の腕に、自分の両手を重ねる沖田君。

そんな2人を、なるべく見ないように、酒が脚にきて、まだフラついてる晋助を、おぶろうとしたら恥ずかしがって嫌がって暴れられた。

***

「総悟、…俺がもっと、素直にしたら、総悟は浮気しないか?」
後ろから抱きしめたまま、耳元で囁いた。

「何言ってんでさァ」
手をのばし、後ろから抱きしめられたまま、自分より背の高い土方の頭を撫でる沖田。

「お前が思ってる程、俺は浮気してやせんぜィ」
それに、と総悟は続けた。

「あきれるほど素直じゃないから、十四郎が好きだし、高杉も気に入ってるんでさァ」
「そう、ご…」
『馬ァ鹿』とお互い言い合って俺達は笑った。

「ヤダヤダヤダっ!絶対ェ嫌だっ!」
正面に向き合って、キスしようと思ったら、高杉のうるさい喚き声が聞こえてきて、俺達はお互いの肩を抱いたまま、迷惑な2人の方を見る。お姫様抱っこされた高杉が、坂本の腕の中で暴れていた。

「恥ずかしいっての!ホラ、あいつら見てんだろ?馬鹿辰馬っ!離せコラッ」
坂本のくせの強い髪の毛を引っ張ったり、肩を殴ってみたり。でも、坂本は全然動じていない。

「いいじゃねェですかィ!今日くらい、甘えときなせェ、高杉」
ニヤリと笑った総悟に、頬を掴まれていきなり口付けられた。
「んっ…んんっ…」
こんなに優しくて、深いキスなんて久しぶりで、力が抜ける。

「そう、ご…」
「ここでヤリやすかィ?」
「それは嫌だっ!」
だって、あいつらも見てるし、…と叫んだら、坂本と高杉は、全然俺達の方なんか見てなくて、そっちはそっちでお姫様抱っこのまま唇を重ねていた。

「あー、もうっ!アンタら見てたらイライラしまさァ!」
「あっはっはァ〜、ごめんのぅ、沖田君」
総悟がイライラする理由に、はっきり気付いていながら笑い飛ばす坂本は、いつもの調子に戻ったみたいだった。

「離せっ、馬鹿辰馬っ!」
「はいはい。…愛しとるぜよ、晋」
「お前っ、ソレ言えば何してもイイと思ってんだろッ!」
高杉がいくら暴れても、坂本は全然気にしていなかった。

「土方!帰りますぜィ!…ホントにイライラしまさァ!」
目の前で見せ付けられた総悟が苛ついている。俺の腕を引いて、さっさと階段を降りて行く。
「待てよ沖田っ!俺の飲み代はっ?こら辰馬ッ、歩けよっ!」
高杉を抱いたまま、坂本が階段を降りてきて、結局4人一緒に帰ることになった。

「沖田、なんでイラついてんだよ?なんなんだよ?」
「うるせー、酔っ払い」
「飲めって言ったのお前だろーがっ!」
「あーッ、もうっ!Aならまだ開いてますかねィ?」
総悟は、坂本の方を向いて尋ねた。Aって店の名前か?なんだよ、朝7時前だってのに、これからまだ飲むつもりかよ?

「余裕で開いとるじゃろ〜?付き合うぜよ、沖田君」
うちも開いちょるけどのぅと、笑いながら応える坂本。

「ハァ?」
同時に声を上げ、有り得ない、という顔をしたのは、俺と高杉だけだった。

「じゃあ、アンタが4人分出しなせェ。さっき、高杉の分こっちが出したんだし」
4人って、俺も入ってるのかよ、もしかして。俺、全然酒飲めないんだけど!わかってるだろうが、総悟!

「総悟、お前なァ」

俺達の前でも気にせず、イチャイチャできる坂本と高杉にムカついてる総悟の心情は、なんとなくわかる。だって、長い付き合いなんだから。さっき、総悟からキスしてくれたけど、あれはこいつらがキスし始めてるって気付いて、見られてないって確信してのことだったんだろう。それに一番、総悟がイラつく理由は、俺の方が背が高いから、総悟は坂本が高杉にするみたいに、俺を抱っこすることなんてできないって、そこなんだ。俺は、全然そんなこと気にしていないのに。

「黙って付き合いなせェ」
しらっと命令する総悟だって、俺のことなんか全然言えないくらい素直じゃねェじゃねぇか。でもきっと俺も、そんな素直じゃないところや、意地っ張りなところも、ドSなところも(これはたぶん)、全部含めて、総悟が好きなんだ。

「総悟」
飲みに行くなら、この街から出ないなら手くらい繋いだって誰も気にしないだろう。いくら朝だっていっても。第一諦めたのか、おとなしくなった高杉は、坂本にお姫様抱っこされたままだし。
手を取ったら、総悟もぎゅっと、握り返してくれた。誰よりも好きだって気持ちが、これでこの手の平から、総悟に伝わればいいと思った。

「辰馬、俺もう飲めねェよ」
高杉は、坂本の胸に顔を埋めたまま訴えた。擦れ違う人に顔を見られるのが嫌なんだろうけど、甘えているようにしか見えないのは、抱いている坂本の表情が穏やかだからだろうか。さっきまで、瞳に何も映さず、死のうとしてた人間の顔じゃなかった。

「大丈夫じゃよ、ちゃんと、連れて帰るからの」
「当たり前だろうがっ!」
「お前ら…」

総悟が、また文句を言いたそうだったから、握った手の力を強めた。
俺達は俺達で、あっちはあっちなんだから、いいじゃないか。
だけど一緒に住むってのも、いいかもしれないなって、坂本と高杉を見てたら、なんだかそんな風に思えてきた。

今度、俺達が喧嘩したら、あいつらのところに逃げさせて貰おうかなんて。喧嘩してしまうことを前提にはおきたくないのだけれど、俺達には必要なことだから。

***

テラスに誰もいなくて、銀時に電話したら、今まで自分がいた法学部棟だと言われた。
「何でそんなところにいるんだ?銀時」
『ちょっといろいろあってさァ、気まずいんだよねェ』

坂本も晋助も、朝からずっと電話に出ないままだ。何も聞いていないから、2人一緒なんだろうと思って放っておいたのだが。
『ごめん、ヅラ』
たった一晩、自分が実家に帰って連絡しない間に、とんでもないことになっていたのを、俺はそこで初めて知った。

***

『たぶん大丈夫じゃねェ?みんな寝てるけど』と、ようやく電話に出た晋助に言われ、嫌がる銀時を引っ張って坂本のマンションを訪れた。みんなって誰だ?と思いながら行くと、玄関には明らかに男物のサイズの靴が4つ。
坂本と晋助と、あと2人、誰か来てるらしい。

そもそも、晋助が起きてるのに、坂本がまだ寝てるなんて珍しいこともあるものだ。
リビングには晋助1人しかいなくて、晋助の部屋の扉が閉まっていた。2人が付き合い始めてからは、晋助はその部屋では眠っていないが、その部屋には前から布団があって、そっちで誰か2人寝ているのだろう。

「高杉君、ごめんなさい!」
まだ寝起きの顔で、ソファに座る晋助の前で、銀時が土下座した。

「ァあ…。どうせ辰馬から誘ったんだろ?いいけど、もう、すんなよ」
泣きながら怒り狂う晋助を予想してきた銀時も俺も、この言葉にポカンと口を開けてしまった。

「いや、あの、今回銀さんから誘ったから、100%銀さんが悪いんだけど」
「そうなのか?銀時、お前なァっ!」
晋助よりも、俺の方が怒っているというのが、なぜだか不思議な現象だ。

「銀時、お前って…」
何かを言いかけた晋助が口をつぐんだ。

「でも、銀さん、お前らの仲壊そうとか、全然思ってないから!本当にごめん!」
「…馬ァ鹿」
しばらくの沈黙の後、晋助は照れたように、恥ずかしそうに小さく言った。

「銀時なんかに壊される俺達じゃねェんだよ」
顔を背ける晋助をまじまじと見た。首筋のアレは…キスマークか?なんだ、もしかして、もう、とっくに坂本と仲直りできたのか?

「なんかって何よ!ヒドイ!」
銀時がわめいているが、今回は坂本にしては珍しいくらい早く、ちゃんと晋助に謝れて、晋助も許したということだろうか。

「…。小太郎、銀時、辰馬の部屋行っといて」
言いながら晋助が立ち上がった。脱衣所から持ってきたのは予備の防水シーツ。

***

銀時は辰馬のことが好きなのかもしれないと思った。銀時から誘ったというのが本当ならば。

だけど、それを聞いたからと言って、俺にはどうしてやることもできなかったから、口には出さなかった。もうしないって、辰馬が言ったんだから、とりあえずは信じてやろうって。それを話していた時の沖田や土方の複雑そうな表情から、辰馬の浮気癖は、治らないんじゃないかって、一瞬思ったけど。

俺の部屋になっている和室から、押し殺した喘ぎ声が聞こえてきて、俺は敏感に感じ取ってしまって立ち上がった。アイツら…ってか、人が訪ねてきた話し声が聞こえて、沖田からわざとヤリ始めたに決まってる。

小太郎と銀時が辰馬の部屋に入ったのを見届けてから、俺は部屋の扉を開けた。

「お前ら、布団汚すんじゃねェぞ」
俯せになって、枕に顔を押し付けて、必死で声を我慢する(けどできていない)土方の上に、沖田が乗っかっていて。

「混ざりやすかィ?」
人ん家(って、辰馬ん家なんだけど)で始めときながら、平然と言い放った沖田に防水シーツを押し付けた。

「馬ァ鹿。…小太郎と銀時来てるから、終わったら教えろよ」
「なんなら、みんなでしませんかィ」
「ヤダっ!…ァっ、やだ、んあっ、ぃあっ、総悟っ!」
ここぞとばかりにイイところを突かれているのだろう土方が、必死で懇願する。

「イヤイヤ言われると燃えてきまさァ」
沖田はやっぱりドSで。土方の顔を俺に向けさせながらニヤリと笑う。

「ぃや、ィャ、見ないで高、杉っ」
「あー、もうっ、絶対ェねェから、そういうの!」
さっさと終わらせろ!と言って、扉をバタンッと閉めた。

辰馬の部屋に行くと、困ったような顔の小太郎と銀時が床に座っている。俺は、まだ眠っている辰馬の横に転がった。

「誰が来てるんだ?」
どうして部屋を移動しなければならなかったのか、さすがに2人共気付いたようだ。

「沖田と土方。終わったら呼べって言ってきた」
沖田がドSなことを知らない、人がいるとわかって、わざと始めたことがわかってない2人は気まずそう。

「高杉、そういうことなら、俺達は帰るぞ」
「ァあ、そう?」
仰向けの体勢から、小太郎の言葉で起き上がろうとしたら、辰馬の寝顔が目に入ってきて。

辰馬の寝顔なんて、あんまり見たことないかもしれないと、その時気付いて俺は2人を見送るのをやめた。
いつも、先に眠ってしまうのは俺で、俺が起きる時は、辰馬はとっくに起きている。だって、1人じゃ起きれない俺を、起こしてくれるのは辰馬なんだから。

「じゃー、また明日な」
辰馬の寝顔から、目を離せないまま、帰っていく2人に手を振った。
結局、俺達4人共、学校をサボって昼まで飲んでたわけだけど。

辰馬が好きだって、どうしようもないくらい好きだって。4人でいたって、俺にとってはそれを再確認しただけだった。


END



後書き


この後、沖土2人と辰馬の寝顔に触発された晋ちゃんの襲い受けっ!!…ってのはあんまり考えてないです(苦笑)でも、コタと銀さん帰っちゃったから、キスくらいはしたかもしれないですねィ。んで、キスで目覚めた辰馬に抱かれるかっ?

今回は3話くらい続くのが目に見えてたので、タイトルは一緒で数字を振ってみました。
タイトル考えるのに、めちゃめちゃ悩む高階です、最初からこうしときゃよかった…。
3くらいで終わる予定が4までいってしまったのはいつものいきあたりばったり(爆)前・中・後編とかにしなくてよかったァ(汗)

謎のタイトルの意味は、
I hate being alone.
の略で「ひとりぼっちは大嫌いだ」という意味です。晋ちゃん筆頭に、うちの子達はみんな、めちゃめちゃひとりぼっちが大嫌いですねー。あきれるほど。

辰馬の浮気癖は治りませんが、だんだん減っては行くと思います。晋ちゃんは、辰馬のおかげで、万斉と別れたって寂しさとか、カミングアウトできないひとりぼっちから開放されて救われたわけですが、辰馬もまた、晋ちゃんに出会ったおかげで無茶苦茶な私生活や、どうにもならない感情とかそういうのから救われて『結局お前らお互いになくてはならない存在なんじゃん!』って2人だといいな〜と思います。

沖土はらぶらぶなんで、放っといてあげて下さい(苦笑)
あと、3Zの長編で出し損ねたあずみ(アゴ美)が出せて満足♪

今回時間かかりすぎました。いい加減2人が出会った入学式と、女装の学園祭を書きたいと思います。
あとは、高杉君と桂君の話とかね〜。


ありがとうございました。
07/02/16 高階千鶴






















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