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※「ずっとそばにいてあげるから」の続きです

小太郎から電話があったのは、日曜日の夕方だった。

歩きだす、明日へと


「……だから、スゲェぞって言ったじゃねェか」

昨夜、俺がやった睡眠薬を飲んで眠った銀時が未だ起きない、と言うのが小太郎からの電話の用件。かれこれ15時間くらいは眠りっぱなしなんだが大丈夫なのか?って、電話の向こうの小太郎は、心配しているというよりは焦っている、そんな声だった。

「1粒で20時間くらい寝るヤツもいるみたいだぜ?……え?お前、両方飲ませたのかよ?」
最初は半分に割れとか、導入剤だけにしておけって教えただろうが、俺は!

「息しちょったら死にゃーせんから大丈夫じゃよー、桂ァ」

俺の耳元の携帯のすぐ横で、辰馬が小太郎に向けて言う。今、俺達がどういう体勢かっつぅと、実は2人共全裸でベッドに座って、俺は辰馬に後ろから抱かれていたりする。
小太郎が電話してきたタイミングってのが、いいのか悪いのかちょうど俺達がセックスした後で、本当にたまたま、辰馬の腕に抱かれながら俺は『銀時眠れたかなァ?』なんて言ってたんだ。噂をすればなんとやらってやつだから、タイミングはいいのかな?

「今日休みなら寝かせといてやれよ……だからひぃあっ!」
『どうした?晋助…?』
「なんでもな…っ!」

俺が悲鳴のような声を上げちまったのは、携帯を当てていない方の耳を辰馬に舐められたからだ。当然だけど、辰馬の方がデカイんだ、この体勢だと、辰馬の口許の高さに俺の耳があるもんだからさ、舐めやすいなんてもんじゃない。

「桂ァ、心配せんでもそのうち起きるろー。起きてからの方大変じゃき、気をつけるんじゃよォ」

俺の携帯を奪った辰馬は、言いたいことだけ言って、さっさと通話終了ボタンを押してしまった。ご丁寧に折りたたんで閉じてくれた俺の携帯を枕元に戻して。

「晋、休憩終わりで大丈夫かの…?」

今まで携帯を当てていた左耳のすぐそばで響く、辰馬の確信犯的低音ボイス。耳の中に僅かに残っていた小太郎の声を掻き消すように。

「ん…っ」
背中からゾクゾク上がってくるような快感と甘い痺れに身体の震えが止まらない。

「縛るの疲れたきに、普通でえいか?」
「え…っ?」

お預けくらった時みたいな、物欲しそうな顔してるんだと思う、自分でも。でも、身体の疼きは止まらなくて。

「物足らんっちゅー顔じゃのぅ。ほんに、晋は淫乱じゃき」
「ご、ごめ、…なさ、んぅっ」

膝を割って入って来た辰馬の手にきつく中心を握り締められる。痛いくらい思い切りだ。

「その手、今度はどこに括りつけようかのぅ?」

両方の手首を合わせた状態で、ぐるぐる巻きに縛られたままだった俺は、両手でなんとか携帯を持って、小太郎からの電話に出ていた。
セックスの後というよりは、一度イカされた俺の身体の痙攣が強くて辰馬が休憩を挟んでくれただけで。本格的に虐めて、痛めつけてもらえるのは実はこれからだ。
言うまでもなく、俺が電話に出れたのは、鳴り分け設定のおかげで、辰馬が小太郎からだとすぐに気付いたせい。
俺の携帯は、小太郎からの電話は『夜桜お七』が鳴るようにに設定してあったから。演歌なんて鳴るのは小太郎だけだ。

「握っただけでコレじゃもんのー、晋は」
「ご、め、なさいっ…んくぅっ」

ゆるゆると勃起し始めた先端にぐちっと爪を立てられて、刺すような痛みに腰がビクンと震えた。でも俺、変態だから、この痛さで先走り、出まくってると思う。

「どうして欲しいんじゃァ?晋」
「た、つま…っ!めちゃくちゃに、して…」
「泣いても許してやらんからのぅ」

笑っていない辰馬の瞳に見下ろされるだけで、俺の頭の中はもう、自分と辰馬のことしかわからなくなる。ゾクゾクしちまって、身体が疼く。スイッチが入って、我慢がきかなくなる。

「辰馬の、っ、気の済むまでっ、めちゃめちゃに犯して…っ」

恥ずかしい言葉を口にするだけで完全に勃っちまった。呆れたように笑いながら、辰馬にベッドに押し倒されて、それから。
「んんっ、痛っ…」
今日は、俺が泣き叫ぶ程ヒデェこと、してもらえるのかな…?

***

文字通り死んだように、銀時は眠っていた。寝返りひとつ打たず、いびきをかくということもなく。

昨夜寝る前にセックスをして、それから銀時が睡眠薬を飲んで。腕枕で抱いてやって話しているうちに、だんだん銀時の呂律が回らなくなってきて意味のわからないことを話し出して『どうしたんだ?』と起き上がって確認したら。すーすー、と静かな寝息が聞こえてきて、銀時が眠りに落ちてしまったのだということがわかった。

お昼くらいまでは『さすが薬だ、よく寝るなァ』などと思って、暢気に構えていたのだが、さすがに夕方、もう暗くなってきているというのに全く起きるどころか目覚める気配すらない。あまりに心配になって晋助に電話してみたが、どうやらタイミングが悪かったようだ。最中ならば出ないだろうからと考えたのは甘かったのだろうか?

(俺のせいで無駄な喧嘩になっていなければいいが)
晋助と坂本の喧嘩は何と言っても周りを巻き込むのが一番厄介だった。

(まァ大丈夫だろう)
昨年のことを考えたら、あの2人の喧嘩は格段に減っている。坂本の浮気癖が、ようやく落ち着いてきたということだろうか。

(いや、今はそんなことよりも銀時だ)
弟みたいに大事な子と親愛なる悪友の喧嘩も心配は心配だが、それよりも全く目覚めない自分の恋人の方を今は心配するべきだろう。

(一粒で20時間と言ったか?)
あと5時間程、目覚めない可能性があるということか。せっかくの休みがまるまる終わってしまうではないか。

自分のベッドに横になったままの銀時の顔をそっと撫でてやった。そういえば、銀時がこんなに熟睡するのは久しぶりではなかろうか。

うなされていることに気がついて起こしてやる。急にきつく抱き着かれた感触に目を覚ます。すると必ず、銀時は声を殺して震えながら泣いていた。自分にしがみつくようにして。どれだけの恐怖が銀時を苦しめているのだろうか。代わってやれないことが、辛い。

銀時の寝顔を見つめているだけだというのに、全く退屈には感じなかった。できるなら毎日毎晩、こんなに安心しきった顔で寝かせてやりたいものだ。

(これだけ眠れているのだから、良いことだと思っておこうか)

しかし。やはり晋助にはそろそろ話さねばならないだろう。何も聞いてこないくせに鋭いやつのことだ、理由がわからないまま気にしているに違いない。週末は学校に行くから、その時にでも帰りにどこかで話をしようか。坂本の家が一番いいか?やはり学校で一番近くにいる晋助が味方になってくれるのは心強い。

とにかく、銀時が目覚めたらその相談をしようと、何をどこまで晋助に話すべきなのか決めておこうと。

ぐっすり眠る銀時の頬に唇を落としながら、そんなことを考えた。

***

久しぶりに朝から銀時が元気な顔を見せていた。

「晋ちゃーん、聞いてくれるー?」

2限目の英語の後の昼休み。おごってやったエビフライ定食を食べながら18時間も寝ちゃったよォと、スッキリした表情の銀時の、頬が緩んでいる。あー、これは惚気られそうだなァと嫌な予感がしたら、案の定。

「起きてからもさァ、すごいボーっとするんだよねェ!」

銀さん頭働かなくてフラッフラでさァ、その間ずーっとヅラが抱いててくれてさァ、云々。
適当に相槌は打ってやるけど俺は半分も聞いてない。さっさと昼ご飯食べて一服したいんだ。疲れてんだよ、俺は。いや、疲れてる理由は、昨日辰馬とヤリすぎたからだけどさ。

正直、太腿にケツに腰に背中に腕と顎、文字通り全身筋肉痛だし、今までに経験のない数の重りをぶら下げられたせいで未だ真っ赤に腫れてる乳首は薬塗って絆創膏貼られてるし。辰馬は宣言通り泣いても全然許してくれなくて、失神するまでメッタメタに攻められて痛めつけられてイカされまくってさ。今日起きるのなんかマジで命懸け…って思っちまったくらいだったんだけど、それが幸せだってんだから、トコトンまで俺の変態体質ってのは終わってやがる。
もうクタクタに疲れて動くのも授業聞くのも怠いってのに今、辰馬のこと考えながら痛みの残る乳首でも触ろうもんなら絶対勃つ自信あるからな。出るモンはほとんどないだろうけどさ。

「晋ちゃん、聞いてんのォ?」
「聞いてねェ」

頑張って、なんとか食べれる分だけ食べ終えてテーブルに突っ伏した俺の横から銀時がつまらなそうに覗き込んでくる。
なんだって俺がお前の惚気話聞いてやらなきゃならねェんだよ?幸せなら良かったじゃねェか。ま、コイツの相手は小太郎なんだからさ、大事にされてんだろーし、幸せに決まってんだけど。

「晋ちゃん、いくらなんでもそれはヤリすぎでしょォ」
「うるせー」

ああ、指1本動かすのもダリィ。3限目の民俗学、サボっちまおうかなァ?1人くらいノート貸してくれるやついるよな、きっと。あれはホラ、出席も取らねェしさ。

「銀時ィ…。午後、サボらねェ?」
「うわっ、珍しい!明日雪降らす気?」

晋ちゃんがサボるなんてー!ってお前な、声がデカイんだよ馬鹿野郎。食堂だからいいけどよ。

「銀さん8時からバイトだからァ、それまで晋ちゃんとこ行っていい?」

よく考えたら、銀時まで俺のサボりに付き合わせる必要はなかったんだけど。だってどうせ、俺は帰って寝たいだけだし、銀時に授業出てもらえば、ノート貸してくれる人間探さなくて済むわけだし。

だけど、この時の俺の腐った脳みそじゃそんなことを冷静に考えることなんてできなくて。

「晋ちゃんご飯残すの?もらっちゃうよ?」

昼休みが終わるまで俺と銀時は食堂にいて。それからのんびり煙草をふかして、3限が始まって静かになった構内を、ダラダラ歩き始めたんだ。駅に向かって。

***

晋ちゃんは明らかにヤリ過ぎでボロボロに疲れてるし、銀さんは昨日いっぱい寝て幸せだったって余韻で浮かれてたし。2人共通常の状態じゃなかったからさ、だから全然気付いてなかったんだ。

後をつけられてるってことに。

晋ちゃんと辰馬のマンションの最寄り駅で電車を降りてタラタラ歩いて、駅を離れて住宅地に入って中途半端な時間だったから人通りが少なくなってきたところで。

そいつはいきなり襲ってきた。

「銀さんっ、私と一緒に死んでちょうだいっ!」

突然路地に響いた声に、背筋が凍りついた。こんな白昼堂々?とか、そんなことを考える余裕もなんにもなくなって、足が竦んで動けなくなって。

「なんだテメェっ!」
あんなにダルダルだったのに、反応したのは高杉の方が速かった。

横から叫びながら飛び出してきた陰に、俺を庇うみたいにトートバッグをぶん回してさ。高杉の鞄、今日は厚さ5センチの英和辞典が入ってるんだよ?だから、高杉の攻撃をモロに受けた陰は、吹っ飛んで、地面にバラバラと散らばる金属音。

「イッテェなコノヤロー」

高杉はどっか怪我しちゃったみたいだけど、銀さんは動けなかった。脚に力が入らなくて、ペタンとアスファルトに座り込んだまま、腰が抜けちゃった。

「銀時、なんだコイツは?」
「ぁ…、ぁぅっ…」

ガタガタ震えて声が出ない。とうとう俺を殺しに来たんだってわかって。

「そういうあなたこそ銀さんのなんだっていうのっ?」
「ハァ?」

まだ高杉には何にも話していなかった。だから何にも知らない高杉は状況がよくわかっていないみたい。だけど俺は悲鳴ひとつ声が出ない。

「こないだまで髪の長い人と一緒だったのにもうこの子に乗り換えたのねっ!銀さん、あなた女なら誰でもいい……」

バキィっ…!!って、物凄い音が響いたかと思ったら、高杉がストーカーを殴り飛ばしていた。

元不良の高杉のパンチをマトモに受けたんだ、ストーカーがどんな奴だったとしても相当効いてるはず。なのに高杉は、吹っ飛んだところを、鞄を投げ捨てて追い掛けて、胸倉を掴んで。

「オイテメェ。俺のどこが女だコラァっ!」
もう一発殴っていた。

「殴りたければ殴るがいいわっ!そんなことで私と銀さんの愛が…」
「意味わかんねェんだよっ!」
ヤバイ、高杉完全にブチ切れてない?

高杉の切れ具合にすぅっと血の気が引いていって。だけど俺じゃ高杉なんて止めらんないと思う。慌てて俺は辰馬に電話したつもり…だったけど、指の震えが止まらなくて、土方君にかけちゃったみたいだ。

「た、たっ、助けてっ!」
ようやく絞り出せたのはその一言だけ。

『ハァ?…何言ってんだお前?』
相手を間違えたってわかったけど、そんなこと説明してる暇なんてない。

「今すぐ来てっ!辰馬ん家の近くっ!」
叫ぶように土方君に伝えた銀さんの声にストーカーの悲鳴が重なった。電話の向こうの土方君にも絶対聞こえてると思う。どうやらストーカーは高杉にやり返しちゃったみたいだ。駄目だって高杉ブチ切れてるからっ!3倍返しされるからっ!

…って、アレ?

相手は銀さんの、ストーカーなんだから高杉がいくらキレてぶちのめしてくれてもいいんじゃない?

ってか、なんかさっきからこの声、どっかで聞いたことあるような気がするんですけど。

銀さんの頭が記憶を辿ってぐるぐる回っている間もずっと、高杉とストーカーは殴り合いを続けてる。

「おい、大丈夫か?」
キキーッとカン高いブレーキ音を立てて突っ込んできた自転車。その声は土方君だった。

「おいっ、高杉っ!何やってんだっ!」
自転車から飛び降りて、殴り合ったまま離れたとこまで行っちゃってた高杉とストーカーのところに駆け寄る土方君。

「離せ、土方っ!」
「落ち着け高杉っ!」
「ァあっ?」

俺が女に優しくして何か得があんのかよ?だって。そりゃ確かにそうだけどさ、晋ちゃん。そういう晋ちゃんだって、ちゃんとお母さんから生まれてきてるんですよ?お父さんから生まれたんじゃないんですからねっ!

「とにかく落ち着けって!」
「なんなの?あなたも銀さんの恋人?一体何人…」
「意味わかんねェんだよっ!」

怒鳴りながら放たれた高杉のパンチをかわしたストーカーが何かを投げた。当然のように高杉は投げられたモノを避けて。

仲裁に入ろうとしていた土方君が思い切り頭から被ってしまったそれは。ネバネバに糸が引く、納豆?

「……………いい加減にしろっ!!!!」
ご町内全てに聞こえるんじゃないかってくらいの、土方君の怒鳴り声が響き渡った。

***

高杉がストーカーを引きずりながら俺を支えてくれて、土方君は自転車の籠に俺や高杉の鞄を入れて持ってくれて。俺達はとりあえず、一番近い辰馬と高杉のマンションを目指した。

頭から大量の納豆を被ってしまった土方君がシャワーを浴びている間に、銀さんは何故かストーカーの隣に座らされて、実はずっと、ここ2ヶ月くらいストーカー被害に遭っていたんだってことを、初めて晋ちゃんに話してた。

ちなみに、さっき判明したストーカーの正体は、銀さんのパー子のバイト先と同じビルに入ってるくの一カフェの『さっちゃん』だった。さっちゃんは、高杉に手首をぐるぐる巻きに縛られて、正座させられた上に、ダイニングチェアに座った晋ちゃんが膝の上に脚を乗っけてる。まァ、逃げらんないとは思うんだけどね。

「銀時お前さ」
何でもっと早く俺に言わなかったんだ?って晋ちゃんに尋ねられて。

「晋ちゃんに心配かけたくなかったし、迷惑かかったら嫌だったし…」
正直に気持ちを伝えたら、思い切り晋ちゃんに頬をひっぱたかれた。

「あなたっ!私の銀さんに何を…」
「黙ってろメスブタ!」

叩かれた頬が痛い。晋ちゃん、まだキレてるよ。晋ちゃんのそんな汚い言葉遣い、銀さん今まで1回も聞いたことないからね。相手が女だからってだけじゃないと思うよ。

アレ…?だけどなんかさっちゃん、嬉しそうなんですけど。晋ちゃんは全く気付いてないんだけど。

「結局こうやって土方まで巻き込んでんだろーが!」
「…だけど、銀さんこれ以上晋ちゃんに甘えらんないと思ったし…」

ただでさえ、いっつもノート借りてるし、勉強も教えてもらってるし、今日だって晋ちゃんお昼ご飯おごってくれたでしょ?、って呟くみたいな声で続けたら、晋ちゃんは盛大な溜息をついた。

「甘えたらいいじゃねェか。困った時はお互い様じゃねェのかよ?」
俺だってお前に助けてもらうことあるんだろーが、なんて晋ちゃんが言うから目頭が熱くなってきちゃった。

「だけど、銀さんホントにすごく甘えちゃうんだよ…?」
銀さんが涙混じりの声でそう訴えたら。晋ちゃんは『あのなァ』って、また溜息をついて。

「お前の本性見てなァ、お前にベタベタ甘えられるくらいじゃー、嫌いになんかならねェし、どうってこともねェんだよ」

高杉の言葉は、ゆっくりゆっくり、俺の中に入ってきてじんわりと頭の中から心にまで浸透していった。

「っ、く、…ふぇ、っ」
我慢しようと思っても思っても、高杉の言葉を理解した瞬間から溢れ出した俺の涙は全然止まらなくて。

「泣くなって、お前…」
ダイニングチェアから降りて来てくれた高杉にしがみついて俺は思い切り泣いた。

ずっと友達でいて欲しかったから、嫌われたくなかったから、言えなかったんだって、心配かけたくなかったんだって。泣きながら話す俺を高杉はずっと抱きしめててくれて(暴れるさっちゃんを蹴りながら)。

「どうしたんだ?お前ら…?」
辰馬のシャツを借りて、風呂から上がってきた土方君が呆れるくらい、銀さんはしゃくり上げて号泣してしまっていた。

***

土方君がヅラと辰馬に連絡してくれて。ヅラは図書館で勉強中、辰馬も先生の研究室にいたみたいなんだけど、2人共連絡を受けて急いで来てくれてさ。銀さんが高杉に抱き着いて泣いてる光景ってのに、ヅラも辰馬も唖然としてたんだけど、晋ちゃんが凄く落ち着いてて。今はソファでヅラにもたれ掛かって、銀さんようやく涙は止まったし、しゃくり上げていた呼吸も、普通に戻ってきたかな。

「あ…っ!総悟にも電話しなきゃ、チャリ借りたって」

廊下に消えた土方君は、銀さんからの電話を受けた時、ちょうど学校に行くところだったらしい。しかもたまたま、沖田君が大学構内で乗ってる自転車が家にあって、それで飛ばして来てくれたんだって。確かに、銀さんの電話から土方君到着までは5分かかってなかったよね。

最初に襲われた時に、銀さんを庇ったせいで晋ちゃんは腕をちょっと怪我してて、辰馬が半泣きで大袈裟な包帯を巻いていた。晋ちゃんは『こんなの放っときゃ治る!』って怒ってるけど、恥ずかしいだけだと思うよ、アレは。

で、問題はさっちゃんをどうしようかってことなんだけど。

ヅラは警察に突き出せって言ってるんだけど、正体がわかってしまった今の銀さんは、そんなに恐怖は感じてなかった。
知らないわけじゃない子だったわけだし、女の子だったんだってわかったらさ。次襲われたって、力で負ける気はしないし、なんとかなるような気がしてしまって。
ま、迷惑なのは迷惑だから『2度と付き纏うな!』ってのはハッキリ言ったんだけど。『ごめんなさい』って言いつつ、なんかちょっと嬉しそうなのが不安。確かこの子、さっちゃんって、少しぶっ飛んだ性格だって聞いたような気がしたんだよなァ。誰に聞いたんだったかな。

俺がいいって言ったから、結局警察には連絡せずにさっちゃんには帰ってもらって。しっかり高杉と事情がわかった土方君に脅されてたけどね、さっちゃんは。

「小太郎テメェ、なんで今までこんなこと黙ってた?」
「いや、いつお前に話そうかって言ってたんだ…」
「遅ェだろうがっ!」

銀さんはひっぱたかれたけど、やっぱりホラ、晋ちゃんはヅラには手を出さない。

「お前これで銀時が本当に刺されてたらどうすんだよ?」
「そ、それは…」
怒りが収まらない晋ちゃんを膝の上に乗せて宥めるのは辰馬の役目。

「まぁまぁ、えいじゃろ、晋。銀時は無事じゃったんじゃし、わしはむしろ晋の怪我…」
「うるせェっ!お前らもうな、こういうこと隠すの、今後一切許さねェからなっ!」

晋ちゃんの怒りは、辰馬の力を持ってしてもなかなか収まらないみたいだった。

この事件から数日後。銀さんは晋ちゃんと土方君を呼んで3人でご飯を食べに行くことにした。助けてもらったお礼なんだけど、ファミレスでごめんねって思いながらさ。

そこで銀さんは、今までずっと黙ってた家庭の事情とか、自分の生い立ちとかを2人に話したんだ。

「まァ、仕送りもらってないんじゃねェかとは思ってたけどよォ」
深く吸い込んだ煙草の煙を吐き出しながらそう応えたのは土方君。

「さっさと言えよなァ」
晋ちゃんも、消したばっかりだってのにまた煙草に火を点けて。

「いくらでもノートなんか貸してやるし、いつでも勉強くらい教えてやんぜ?」
ついにこの日、2人の口から『かわいそう』って言葉は出てこなかった。銀さんが、言われて一番嫌な言葉。一番傷つく言葉。

「銀時、もう1軒。飲みに行くぞ、付き合えや!」
「ええーっ?今日だってヅラと…」
帰ったらエッチしようって言ってたのにィ!

「いいじゃねェか、同期なんだから。行こうぜ」
飲めないはずの土方君にまで言われたら仕方ない。銀さん達は3人で居酒屋に向かって。

居酒屋で3人で話したのは、本当に他愛もないことばかり。それぞれの彼氏の愚痴なんだか惚気なんだか紙一重でさ。晋ちゃんも土方君も負けず嫌い過ぎだからっ!

だけどその、どうでもいいような会話を交わすのがすごく楽しくて。

ずーっと烏龍茶を飲んでいたのに、なぜか最後に『ビールを飲みたい』と言い出して、潰れてしまった土方君を晋ちゃんと両側から抱えて歩きながら。

銀さんはやっと、何でも話せる本当の親友ってやつを手に入れたような、そんな気になっていた。銀さんにとって生まれて初めての親友は、恋人とはまた違って、なんだか照れ臭いような、くすぐったいような気持ちになるんだけど一緒にいて落ち着くし頼りになる、そんな存在だった。


END



やっとこさ完結ですよ!銀さんにストーカーなんてする人は1人しかいませんので、皆様正体には気付いていたかと思われますが…(苦笑)一連の事件を経て、もちろん桂銀の関係も変わったのですが、高+土+銀の、ネコ3人の関係が一番大きく変わったのでありました(笑)←ここから3人で鍋とかするような関係になるのです!






















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