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またまたキリ番踏んで三島様に書いて頂きました。海賊パロだよォ!!

月明かりの下で


波も穏やかな夜、高杉は煙菅をふかしながら甲板に出ていた。

今日はどこからか来た貿易船を襲った。貿易船自体は簡単に襲えたものの、その後やってきた軍との攻防のせいで、船も船員も疲労している。
…おそらく起きているのは自分だけだろうと思った時、バタンと音を立てて誰かが甲板に出て来た。

「…し…船長!」

呼びかけられ、高杉は振り返った。そこにいたのは、この船の航海士だ。

「…辰馬」

声をかけると、坂本は笑みを浮かべながらこちらに来た。

「まだ寝ちょらんかったがか?」

「…お前こそ。疲れてねェのか?」

高杉は隣に来た坂本に目をやりながら不思議そうに尋ねた。
貿易船を襲っただけの自分達と違い、航海士は軍船から逃げている時も完全に逃げきるまでは気を緩められないのだ。

「疲れとるんじゃがどうしても眠れんくての…」

「…体に悪ィぜ」

苦笑を浮かべる坂本を見て、高杉は心配そうに顔を覗いた。
…僅かだが顔色が悪いような気がする。

「…晋助?」

「…顔色悪くねェか?」


覗き込みながら聞くと、坂本は困ったような顔をした。
おそらく本当に眠れないのであろう。

「…まぁ…お前がいいならいいんだがよ…」

高杉は釣られたように困った顔をすると、小さく背伸びをしながらターバンの巻かれた坂本の頭を撫でた。

「……晋助?」

「…………あ、悪ィ!」

「ん……?」

呼びかけられ焦って晋助が手を離すと、坂本は不思議そうに首を傾げる。

「とりあえず…体、気をつけろよ?」

付け足しのように高杉が言うと、坂本はフッと笑みを浮かべて頷いた。

「分かっちょるよ、体調だけは壊せんきに」

わしは航海士じゃからの、と坂本は笑った。
高杉はそれを聞くとそれだけじゃない、と返事をしようとするも、それより早く坂本が声を上げた。

「見てみぃ、晋助!月が綺麗じゃ」

「…あぁ」

「明日も晴れ…じゃの」

「……あぁ」

その呟きを聞いて、高杉は小さく頷いた。

(…明日は…ちょっとくらいサボらせてやるよ)


月明かりの下、笑みを浮かべる坂本を見ながら高杉はそう思い穏やかに笑った。




END






















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