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三島稔様の高杉誕生日フリー。坂高+鬼兵隊+真選組

『結婚は人生の墓場』とは申しますが、冠婚葬祭の中では婚は葬の前にある訳でして。葬に大切なのが亡くなった人の人柄だとすれば、婚に大切なのは三つの袋な訳でして。三つの袋とは堪忍袋・お袋……ビニール袋?……ほら、相手にも地球にも優しい夫婦が一番でござろう?


ビニール袋は地球に優しくないッス!優しいのはエコバックってやつッスよ!!


…正解は?


給料袋、ですね。




Can you bless ?   - 結 婚 愛 唄 -


「晋助ー!!誕生日おめでとォォォ!」

スパンッと軽快な音を立てて坂本は少し離れた場所に作られた高杉の部屋の戸を開けた。
 その途端、部屋の隅の壁に寄りかかっていた高杉はビクリと肩を跳ねさせる。

「テメッ、今何時だと…」

「そうじゃの、まだ後30分はあるの〜」

坂本はアッハッハと夜中にも関わらず笑い声を上げ、断りもなく部屋に入ると高杉の前に座り某おじさんの如く背中に持っていた袋を広げる。

「何買ってきていいか分からんかったから色々持って来たぜよ!」

「…別に、」

「ほれ、ここの酒飲みたいっちゅーとったじゃろ?」

 いらないと言おうとする高杉の言葉を遮って坂本は異国の言葉で書かれた酒瓶を立てて差し出した。

「…辰」

「コレとかほれ、珍しい食べ物なんじゃ」

「……」

「コレも見て、マッサージ機なんじゃけど」

「辰馬」

今度はハッキリと坂本の言葉を途中で止める。すると坂本はピクリと肩を跳ねさせてから僅かに引きつった笑みで高杉を見た。

「気に入らんかったか?マッサージ機」

「いやマッサージ機は有難ェが…どうしたよ、いつにも増して挙動不審じゃねェか」

高杉は僅かに眉を寄せ、貰ったばかりの酒瓶に書いてある暗号にしか見えぬ文字を解読しようと試みながらそう口にする。
坂本は暫し無言になった後、先と変わらず瓶を見つめ続ける高杉の肩を唐突に掴む。

「…な、」

「晋助!!」

「え…はい」

真剣な表情で見つめられて高杉は思わず隻眼を大きく見開く。
 坂本は暫く真っ直ぐに見つめてから一度目を逸らし自身を落ち着かせるように息を吐いた。

「…晋助」

「…なん、だよ?」

僅かな間の後、何を言うでもなく小さな箱を渡される。
高杉は開けるかどうか少し迷うも、目で坂本に促されゆっくりと蓋を開く。

「何ちゅーか…プロポーズ、のつもりなんじゃが」

「……、お前」

 箱に入った指輪と坂本の顔を交互に見つめながら高杉は呟く。
返事の代わりに坂本がコクンと一度頷くと、高杉は立てた膝に膝を当てて顔を伏せた。

「晋?…あの、別に今すぐ言わんでもいいからの」

 顔を伏せたまま笑っているのか、肩を震わせる高杉を見て坂本は声を掛ける。
それを見て、まさかこの場で断られるかと焦る坂本に高杉はフッと笑みを浮かべ、顔は見せぬままギュウッと抱きついた。

「もう…お前、大好きだ」

「晋…」

「……大好きだ」


抑えきれぬ笑いを漏らしながら高杉は再びそう口にする。
その細い腰に腕を回しながら、坂本は一度頷いた。

「…ありがとぉ」

「…こちらこそ」


笑みを浮かべながら顔を上げた高杉の頬は、やはり想像していた通り真っ赤に染まっていた。
 坂本は熱を持った頬に軽く口付けてから、誓いのつもりで唇へと触れようとする。

……しかし。


「それでこそ男でござるよ坂本殿ォォォ!!!」

それは坂本が来た時と同じようにスパンッと開かれた襖とそれと同時に掛けられた声に邪魔をされる。

「…万斉君」

「晋助様!ちょっと遅れたけど誕生日おめでとうございます!!」

隠すように高杉を抱き締めながら坂本が呆れた声を掛けるとほぼ同時、万斉の影からヒョッコリとまた子が片手に綺麗にラッピングされた袋を持って現れる。
 二人とも襖を開くだけで室内に入って来ないのはせめてもの配慮だろうか。

「ほら、先輩も似蔵も顔見せるッス!!その為に叩き起こしたんスよ!」

「……いや、俺は明日でも…」

「また子さん、新婚さんの邪魔はしてはいけませんよ」

「聞いちょったんか!!聞いちょったんじゃろおんしらァァァァ!!
どっから?ねぇどっからァァ!?」

 深夜を回ったにも関わらず、騒がしい周りにとうとう高杉の堪忍袋は切れた。
その証拠に、次の瞬間には「全員消えろ!!」との怒声が船内に響いた。




しかし翌日の朝、結局不機嫌なままで起きてきた高杉は指輪を渡された瞬間よりも驚く事になる。

「……なに?」

自分が部屋で眠っていた十時間弱の間に何があったのだろうか、まさかどこか別の次元に飛ばされた、と。
そう思いたくなる程に、甲板はものの見事に変わっていた。

「お、やっと起きて来たがか?」

声を掛けられ不自然な程鈍い動きでそちらを見ると、そこには黒いタキシードを見に纏った坂本が立っていた。

「……何してんだァ?」

「何って…結婚式に決まっちょるじゃろ?」

「誰と誰の?」

「わしと晋助の。ほら、着替えんしゃい」

一問一答の形で答えながら差し出されたのは白いタキシード。
 高杉は何気なくそれを受け取り、その瞬間に「何で!?」と思わず声を上げた。

「嫁さんは白じゃろう?本当はウェディングドレスにしたかったんじゃか…絶対着んと思って」

「当たり前だ、誰が着るか馬鹿」

「でも、」


 それなら着てくれるじゃろう?と。
優しい笑みを浮かべながら言われ、高杉は思わず言葉に詰まる。

「……似合わねェぞ、きっと」

 そんな事を言いながらも承諾してしまう自分は、何やかんやで結局辰馬の事が好きなんだろうなと。
自分自身に呆れつつも高杉は白いタキシードに腕を通した。




END






















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