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診断メーカーです。
コトミナへのお題は
・唇をなぞる
・皆が見てるのに
・出会い
・肩にもたれかかる
です。アンケートでみんなが見たいものを聞いてみましょう
https://shindanmaker.com/590587
って言われましたが、アンケートとか面倒くさいので全部入れました。
えっちしてくれませんでした。

罪だとしても手放せない


弟が生まれた日のことを今も覚えている。
生まれたばかりの赤ん坊っていうのはほんとに小さくて、目も開いてなくて。おれが守ってやらなくちゃと思ったのを今でも覚えている。

タケミナカタが生まれたとき、出雲はそこそこの大きな国になっていた。外から攻められることはほとんどなく、道路や田畑の基盤もできて、おれや親父やスクナヒコにオオモノヌシは、みんなで大きな屋敷に住んでいた。
国の基盤ができるまで、そんな話だったはずなのにスクナヒコは帰らなくて、相変わらずオオクニヌシの隣りに居た。皆がいる前だろうとなんだろうと、オオクニヌシの膝の上に乗って、夜になると酒を飲んでいた。
そんな、スクナヒコを真似してタケミナカタがおれの膝に乗ってくるようになるまで、時間はかからなかった。

そんな、タケミナカタもすくすくと成長して、すっかり大人の男の身体つきになった。だけど、みんなに可愛がられて育ったせいか、タケミナカタは大きくなっても甘えたがりで。だけど、恥ずかしいのか照れくさいのか、それを素直にぶつけてくるのは、おれだけのようだった。たぶん、ずっとおれの膝の上に乗っていたから、甘えやすいんだと思う。

そういうわけで、部屋で一人、書物をまとめていたコトシロヌシの部屋に、無断で入ってくるのはタケミナカタくらいのものである。わかっているから、コトシロヌシは顔も上げずに、そのまま弟に声だけかける。

「どうしたの?」
コトシロヌシの後ろに座ったタケミナカタは、ぴったりと背中にくっついて、兄の肩にもたれ掛かった。

「父上とスクナヒコが、酒を飲んでいたんだ」
「またかよ、あいつら」

スクナヒコが、酒造りの神である以上仕方ないことなんだろうとは思うが、正直、ほとんど毎日なのはどうかと思う。いや、飲むだけならいい。お酒を飲んでいるときのスクナヒコの定位置。問題なのはむしろそっちだ。

「スクナヒコに、飲まされた」
「どれくらい?」
タケミナカタはそんなにお酒は強くない。いや、酒の神であるスクナヒコがおかしいんだけど、それに付き合う親父も相当おかしい。あの二人を基準にしたら、この世から酒豪が絶滅してしまう。

「そんなに多くはない。……父上が、もう寝ろって、追い出してくれたから」
「へえ、やるじゃん」
「たぶん、ヤリたかっただけじゃないかな」
「そっちか」

おれたちの父親であるオオクニヌシとその相棒のスクナヒコは、皆が見ていても構わずイチャイチャすることがある。ふたりがくっついているのなんか当たり前だし、誰かがいたってキスするし、手も繋ぐ。昼間からそんなんだから、ほとんど誰も気にしてなんかいないけど。みんな、見て見ぬふりをしてるけど。

「スクナヒコ、膝に乗ってたし、口移しとかもしてた」
「間違いないね。ほんと、どーしよーもないな、あいつらは」

でも、そんな二人の様子を見て、タケミナカタがおれに甘えたくなったのは仕方ないことだと思う。正直、俺だって触発されてタケミナカタを抱きたくなることは多々ある。

「兄上」
呼ばれて振り向くと、ちゅっ、と音を立てて唇が重なった。タケミナカタの吐息はなるほど少し、お酒の匂いがする。啄むように何度も繰り返し接吻を重ねていると、タケミナカタの舌がおれの唇をなぞって静かに差し出される。顔と、頭をなでてやりながら、深く、吐息ごと飲み込むような口づけを与えた。
「んん、……んっ、ふ、…ぅんっ」
こくんこくんとタケミナカタの喉が鳴る。ぎゅうっとしがみついてくるのが愛おしい。

「兄上、欲しい」
「嬉しいけどお前、けっこう飲まされてるじゃん」
キスの味は、完全にお酒の味だった。本人も、酔っている自覚があるだろう量飲まされているはずだ。その証拠に、タケミナカタの股間は、いつもならこれだけ口づければ反応するはずなのに、なんともなっていない。

「抱っこしてあげるから、今日はもう寝よう?」
奥に用意してあった布団に誘うと、タケミナカタは黙ってついてきて横になり、両手を広げた。

「はいはい、甘えん坊さん」
一旦はその腕の中にすっぽり収まってあげて、でもそのあと直ぐに、コトシロヌシがタケミナカタを抱く体勢に変わる。

「兄上。……どこにも行かないで欲しい」
「おれがどこへ行くっていうの?」
「うん……」
大好きな兄の体温に包まれて、タケミナカタは静かな寝息を立て始めた。

もしかしたら深い意味なんてなかったのかもしれない。それでも、気にしてしまうのは、兄弟の枠を超えて、愛しているからだ。
この関係が知られてしまったとき、父親が反対する姿しか、コトシロヌシには想像できなかった。
それでも、コトシロヌシの中には、弟を手放すという選択肢は存在しなかった。
ちょっと酒臭い、きれいな寝顔を眺めながら、コトシロヌシも夢の世界へ落ちていった。






















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