□title list□
 ※水色部分にカーソルを合わせると
 メニューが出ます

冬コミ新刊1冊目脱稿しました!
息抜きの診断メーカーでした
あなたは4時間以内にむしろRTなんてされなくても、小説家と、旅館の料理人の設定で付き合ってる二人を第三者視点から見たタケイザの、漫画または小説を書きます。
https://shindanmaker.com/293935
フォロワーさんに捧ぐw

桃色の両片思い


八百万温泉桃の間。そこには、とある有名な小説家の御大が、長期滞在している。
その小説家は、一度執筆を始めると、まず家には帰らないらしい。
ただ、気難しいことでも有名で、たとえば料理が美味しくなかったりすると、あっさり定宿を変えてしまうことでも知られていた。
そんな彼−−イザナギと呼ばれる小説家が、この八百万温泉桃の間を拠点にしてからは、もう半月以上になる。

どうやら、今度のこの宿を、気に入っているようだった。
しかし、変わり者で定評のあるその実態は間違いではないらしく、もう半年にもなるというのに、イザナギの姿を見た従業員は片手で数えるほどである。どうやら、大浴場に行くことはあるが、早朝もしくは深夜で、起きた後散歩に行くらしいがそれも早朝、昼間は執筆に専念。そんな生活をしているようだ。
執筆中の部屋に入ることは基本許されず、この旅館で唯一の例外が、料理人のタケミカヅチだった。
半年もの長い間、イザナギが定宿を変更しなかったのは、ひとえにこの、タケミカヅチの功績によるところが大きい。料理を運ぶ以外に、なにをしているかなど、誰も知らないことであったが。

そう、それはほんの、戯れだった。
毎週やってきて、原稿をせびるとともに滞在費用を支払っていく編集者に、『少しでいいからお色気シーンを書き足せ』と言われたイザナギだったが、正直そちら方面には疎かった。
過去に結婚していたこともあるし、だいぶ歳の大きい子どももいなくはないが、不惑を越えた今、浮いた話もなく、元妻と別れてから幾年月。今更『お色気シーン』と言われてもいまいちピンと来ない。
そんな悩みを、料理を運んでくれるタケミカヅチに、なんとなく話したのがきっかけだった。
タケミカヅチは元々、都内の小料理屋で働く身だったが、編集者のオモダルにスカウトされて、この旅館に無理矢理、イザナギ専用で入って早4ヶ月になる。余談だが、オモダルとイザナギは遠い親戚であるが故に、好みをよく知っていたのだろうと、後に周囲の人間は皆思ったという。
少しでも気に入らないことがあるとすぐに宿を変えると言い出すイザナギに、オモダルも手を焼いていたのだろう。ただ、イザナギが文句を言う対象はほぼ料理のことであったため、いちいち新たな宿を探して移動してという手続きや交通費よりも、料理人を一人雇った方が早いし安いという結論に達したらしい。

「ぁ、……んぅ」
「はぁ……はぁ……イザナギ様……」
その、桃の間から、わずかに艶っぽい声が漏れている。
桃の間はこの旅館の離れにある一番端の一番奥の部屋だ。専用の露天風呂も着いている上等な部屋で、そこに気難しいイザナギが長期滞在しているとあっては、基本誰も近づかない。まして、昼間のこの時間、この部屋に入れるのは、昼食を運ぶタケミカヅチだけで、彼の帰りが多少遅くなろうとも、誰も気にしない。
むしろ気難しい作家の相手をさせられて可哀想に……くらいに思われていた。

しかし。
「あっ……!無理だ、タケミカヅチ……!」
「駄目です、イザナギ様……逃しません」
枕を掴んで、限界を訴えるイザナギの細い腰をぐっと引き寄せ、タケミカヅチは腰を打ち付けた。
「ああっ」

びくんびくんと背を仰け反らせて反応するイザナギが頂点を迎えるのはこれが二度目である。二度目であるが、タケミカヅチはまだまだ離すつもりはなかった。
女性視点のお色気シーンなぞ書けぬ!と不貞腐れるイザナギに対して、編集者のオモダルがタケミカヅチに囁いたのは『だったら経験させてみましょう』という一言だけだった。
初めて身体を重ねてから何も言われないのは恐らく、そういう意味だったのだとタケミカヅチは納得しているが、遅かれ早かれ、オモダルに唆されなくとも、自分はイザナギを抱いたのではないかと思っている。

桃が好きだという桃色の長い髪の毛に切れ長の瞳。そして、なにより同じ男とは思えぬほどの細い腰。タケミカヅチとそう変わらぬ年齢の子が4人もいるとは思えぬほどの若々しさと、柔らかい物腰。

面倒くさい作家がいるので専用の料理人になってほしいと言われたときは、まさかこんなことになるとは思っていなかった。
後ろからイザナギの腰を抱え、タケミカヅチはその胎内に、欲を吐き出した。

************

ぐったりと布団に横になるイザナギの身体を拭いて、後処理を済ませる。
自分がこの方と身体を重ねているのは仕事のためだ、作品のためだとわかっていても、膨れ上がる感情が止まることはない。だから、タケミカヅチは、コトに及んだ後は、なるべく早く、部屋を出ることにしていた。
「ではイザナギ様。……次は、夕方参りますね」
「夕飯は茄子がいい」
「茄子、ですか?……かしこまりました、焼きなすでも作りましょう」

口付けを一つ落として、タケミカヅチはイザナギが食べ終えた昼食の膳を下げるために部屋を出ていく。
行くな、もう少しここにいろ、だなんて。先日まで女の気持ちがわからないなどと言っていたのは一体どこの誰だろう。
布団に身を投げ出したまま、イザナギはそんなことを思っていた。






















このページの文章・画像は引用を含んでおり、著作権はDMM.com及びrejetに帰属します。 文章・画像の無断転載は固くお断りします。
All fanfiction and fanart is not to be used without permission from the artist or author.