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「幼い息子二人を抱えたオオクニヌシが、生活のためにお金持ちのスクナヒコおじさんに身体を売る話」の世界線で、とりあえずパッパに自慰して欲しかっただけの代物。
スクナヒコはカミムスビの子ですし、オモイカネはタカミムスビの子で、どちらも常世国出身ですから、スクナヒコとオモイカネは「年が近くて幼少期からお互いよく知ってるけど性格の合わない従兄弟」みたいな関係だと美味しいと勝手に思ってます
タケミナちゃんは4歳か5歳。

いつも隣にいて欲しい


ベッドに横になり、自分で慣らした後孔に、ゆっくりとバイブを挿れていく。少し苦しいから、慣らし足りなかったかもしれない。いつもスクナヒコがやってくれることで、自分でしたことがないのだから当然かもしれなかった。

なんとか奥まで入って、弱めにスイッチを入れる。人間にはあり得ない動きで、バイブはオオクニヌシの中で首を振り、S字の入り口の内壁を刺激し始めた。
「ァっ、あ、んあっ、っふ」

飢えた身体はすぐさま快楽を拾い、気持ちよさでわけがわからなくなる前に、ゆるゆると勃ち上がる中心を軽く握って上下に扱いた。
「スクナヒコ……スクナヒコ…っ、あん」
愛しい人の名を呼ぶと、なんとなく気分だけは盛り上がった。

だんだん慣れてきて、バイブのスイッチを最大まで上げると一気に絶頂が襲ってくる。普段、愛しい人が使っている枕に顔を押し付けると、スクナヒコの匂いがした。
「ァアアア、ァッ、スクナヒコぉ……っ」
ティッシュの中に欲を吐き出して、バイブを抜いてから四肢をベッドに投げ出した。
そもそもダブルベッド、一人寝には広すぎて、寂しい。寝返りを打っても隣に誰もいない。

「早く帰ってこい、相棒」
仕事だから仕方ないことはわかっている。彼が仕事をしてくれているからこそ、自分はここに住んでいるし、息子達まで養ってもらっていることに、不満なんてない。

2週間の海外出張に行ってしまったスクナヒコが帰ってくるのは、まだあと3日は先だ。

************

知る限りで恐らく、一番の酒好きの男が、酒を飲みながらつまらなそうにしているという不思議な光景を、オモイカネは目撃してしまった。
「明日、雪でも降らすつもりですか?」
「なんだそれは」
つまらなそうにしていても飲む量はどうやら変わらないらしい。ぐいっとジョッキを煽ったスクナヒコが黒ビールのおかわりを頼んでいる。

「あなたが、バーのカウンターで一人で飲むタイプだとは思っていませんでした」
オモイカネが知っているスクナヒコとは、宴会場でワイワイ楽しく飲んで、なんなら中心で踊っているような、陽気な人間のはずだった。
珍しいこともあるものだと、スクナヒコの隣に腰を下ろすが嫌がられはしない。こう見えてスクナヒコとオモイカネは、学生時代からの腐れ縁の仲である。

「あと3日が長い」
3日がなにを意味するのかはわかっている。そもそもオモイカネとスクナヒコは同じ会社で働いていて、ポジションもほぼ同じところにいて、なおかつ今回一緒に出張に来ていた。

「そう言えば、子持ちの恋人と、一緒に住み始めたんでしたっけ」
「なんで知ってんだお前?」
「噂になっていたものですから」

これまで一切、浮いた話のなかったスクナヒコが突然手作りの弁当を持ってきたと。女性は目ざとく見つけるものである。ましてやそのお弁当が、明らかに女性が作ったような、かわいいお弁当だったと。ごはんの上のふりかけは猫の形になっているし、ウインナーはタコだし人参は花びらの形になっているし、卵焼きがハート型になっているし。

身体は小さくともスクナヒコは男だし、それなりの量食べる。弁当箱は一般的な男性用の大きさだったのに、開けたら中がとんでもなくメルヘンで可愛かったと。
お弁当事件と時を同じくして、公園で小さな子を抱いているスクナヒコを見かけた者が現れた。あとはもう、人の口に戸は立てられぬ。オモイカネの耳に入るのに、そう時間はかからなかった。

「……まさかとは思いますが、そんなにやさぐれているのは、2週間帰れないからですか?」
「それ以外になにがあるよ?」
はぁーと。わざとらしく盛大なため息を零したスクナヒコは再びジョッキを空にした。

長年仕事と酒にしか興味がなかったような男をここまで虜にした女はどんな人なんだろう。それはほんのちょっとの好奇心だった。
「写真とかないんですか?」
「あるぜ。ほらよ」
そう言ってスクナヒコが見せてくれたのはスマホの待受画面。だが、おかしい。ガッチリした体型の赤髪の男が、幼い男の子を抱いていて、その隣に、小学生くらいの男の子が立っている。
小学生くらいの男の子と、男はそっくりかつどちらも見事な赤髪で、間違いなく親子だろう。

「えっと、あのう……」
「今、日本は夜中だろ?絶対寝てるよなぁ……はぁ」
仕事から解放されて声でも聞きたいのに時差のせいで電話もできない。スクナヒコがやさぐれているのはそんなところらしい。

「恋人って、男だったんですね」
「は?……ああ、そういえば、そうだな」
これはなかなか衝撃の事実だぞとは思ったが、オモイカネの表情は変わらない。彼が誰を好きになろうと、彼の勝手でしかないのだが、それでもまさか、男だとは思わなかった。

「子どもは二人ですか?……あまり、似ていませんね」
「母親が違うんだってよー。でもな、面白いぜ。顔が似てない下の子の方が、中身は親父にそっくり」
黙って聞いていれば気を良くしたのか、スクナヒコは他にも写真を見せてくれた。どれもこれも、幸せそうな家族の写真ばかりで、画面を操作しているスクナヒコの頬も緩んでいる。3人の写真が多いから、きっとすべて、スクナヒコが撮影したのだろう。

「あと3日、もう少しですよ」
「それはわかってるんだけどよ!」
「いいものを見せてもらったお礼に一杯おごりますね」
「おっ、マジか、悪ィな!」
日本酒が飲みてぇ!天ぷら食いてえとぼやくスクナヒコが、ようやく笑ったような気がした。

************

「ちょっと、親父」
「……は?」
「おい、コラ馬鹿親父!」
長男に頭を叩かれてようやく正気に戻った。
「パーパ!」
テーブルの上で、オオクニヌシの袖にお椀が引っかかって、味噌汁がひっくり返っていた。

「ああ、すまん!!」
半分以上飲み終わっていたから、たいした惨事ではない。とはいえ、お椀を倒したことにも気が付かなかった。

タオルを持ってきたコトシロヌシがテキパキと後片付けをしてしまう。中学生になって、この長男はますますしっかり者になった。
「頼むから惚けるのは、タケミナカタにご飯食べさせてからにして」
「す、すまん」
がっくりと項垂れることしかできない。

「知り合ってから2週間も会えなかったことなかったんでしょ、知ってるから。だからいろいろ大目に見てやるから。だからあと3日くらい、なんとか取り繕って、父親やってよ」
「すいません……」
しっかり者の長男に頭が上がらない。もとより、この長男がしっかりしていて、弟の面倒もよく見てくれていたからこそ、夜も働けたのだ。長男には頼りっぱなしだと思う。

「とりちゅくろって」
タケミナカタが兄の口調を真似て、コトシロヌシがぷっと吹き出した。
「お前はいい子だね、タケミナカタ。今日はおれと寝よっか」
「寝るー!」
「えー」
ベッドが広くて寂しいから、次男が一緒にいてくれたら少しはマシかと思ったのに長男に取られてしまった。自分のことを考えると、兄弟の仲がいいことは喜ばしいことだったから、あまり口出しはできない。

はぁ、とため息をこぼすと、うっとおしいと長男にまた怒られる。
「あっち今昼でしょ?電話してみたら?」
「仕事中だろう?迷惑じゃないか?」
「昼飯くらい食べるんじゃないの?それに、都合悪けりゃ掛け直してくるでしょ」
長男の提案はありがたかった。が、電話できるならとっくにこの10日間に掛かってきている気がする。なにも離れていて寂しいのは自分だけじゃないと思うのだ。

案の定、スクナヒコは電話に出なかった。だが、電話をしてみたのは間違いではないようで、翌朝目覚めると、同僚のオモイカネと一緒に写った写真が送られて来ていた。
もうすぐ帰るから待ってろよ、という一行だけのメール。二人の後ろに写っているのは大英博物館だろうか。

送られてきた写真をずっと見ていたら、ニヤニヤしすぎて気持ち悪いと、再び長男に怒られたが、そう言いながらも長男の視線は優しい。
「スクナヒコ帰ってくるの明後日だったっけ?……土日はタケミナカタとおばあちゃんとこ行ってやるから好きにしてよね」
「おばあちゃんちいくー!」
タケミナカタがはしゃいで廊下を走る。

「フラれたらまた貧乏に逆戻りなんだから、しっかり繋ぎ止めておいてよね。身体でもなんでもいいから」
「あ、はい!」
中学生になるということは、それだけ大人の事情も理解するということで、そもそも自分が中学生の頃を考えたら、とっくに童貞ではなかったわけで。
ますます長男に頭が上がらないなと思うものの、そんな生活も悪くないと思えてしまう、オオクニヌシだった。






















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