なんか、何気ないふとした仕草でパパが「愛されてるなぁ」って実感する話が欲しかったので書きました
デリヘルシリーズです!
「形のないものに〜〜」は中島みゆきです
夜中にふと、突然目が覚めて、隣を見ると、いつもそこに寝ているはずのスクナヒコがいなかった。
さっきまでここにいたのだろう布団はまだ暖かい。すこし、身体を横に向けて、ぬくもりの残る枕に顔を押し付けてみると、ふんわりとスクナヒコの匂いが香った。長男は、酒臭いだけだなどと言うが、自分にとってはこれ以上に安心できる匂いを知らないかもしれない。
ふと、このままスクナヒコが戻ってこなかったらどうしよう、捨てられたらどうしようという不安が首をもたげるが、オオクニヌシは無理矢理その考えを頭の外へ追いやった。
「悪ィ。起こしたか?」
静かに扉が開いた音が聞こえて、それから待ち望んでいた声が静かな寝室に響く。戻ってきたスクナヒコが上から心配そうにオオクニヌシを見下ろしていた。
無言で首を横に振ると、スクナヒコは黙って覆いかぶさってきて、そっと触れるだけの口吻をくれる。
「喉乾いちまってよ。飲みすぎたかな」
言いながら、隣に潜り込んできた小さな身体をぎゅうっと抱きしめた。枕やシーツの残り香ももちろんいいけれど、当然本物が一番いい。
飲みすぎたかもしれない、喉が乾いたと言って、きっとこの酒飲みは更にビールでも飲んできたのだろう。時々、酒の飲み過ぎや体調を心配してはみるが、スクナヒコにとっては、酒を飲まないことによるストレスの方がよっぽど身体に悪いような気がして、オオクニヌシは口を出すのをやめた。その分、自分が作る食べ物で、気をつけてもらえばそれでいいような気もした。
好き嫌いが案外多いと言いながら、スクナヒコはオオクニヌシが作ったものならほとんどなんでも食べたし、今夜は何が食べたいと、伝えてくれることも多い。
「どうしたんだよ?甘えたいのか?」
無言のまま抱きついていたオオクニヌシに、しばらく好きにさせた後、一旦離れたスクナヒコが顔を覗き込んでくる。金色の瞳が、自分を見つめる眼差しが、いつも暖かいことに安堵しているオオクニヌシがいる。
「もし俺が、この先しわくちゃのジジイになっても、君はこうして、隣に寝てくれるのかな、と思って」
一瞬驚いたように目を見開いたスクナヒコはすぐにふっと頬を緩ませて笑った。
「なーに言ってんだ。お前がジジイになる前に、先におれがジジイになるだろーがよ」
茶化すようなその言い方が、照れ隠しであることをオオクニヌシは知っている。年を重ねる心配をするということは、それだけ長いこと、このさきも一緒にいるつもりであるという気持ちの現れだと思う。そしてきっと、オオクニヌシが思うよりもっと前に、スクナヒコがその心配をしたんだろうというのがわかってしまった。
「君は、年をとってもあまり変わらなさそうだから」
「若い恋人作っちまったからよ、頑張ってんだよ、こう見えても」
スクナヒコの細い身体を抱いていた腕を外されて、今度は逆にオオクニヌシの首の下と背に腕が回る。スクナヒコの小さくて薄い胸板に、オオクニヌシの頭を抱え込むように。
「明日のことなんかわかんねーけどよ。きっと、明日のおれも、お前のこと好きだと思うぜ。こうして、肌を合わせて一緒に寝たいと思えるくらいにはな」
真夜中の静寂は漠然とした不安を連れてくるものなのかもしれない。
けれど、こうやって、スクナヒコはいつも、オオクニヌシが欲しい言葉をくれた。
「嬉しいな」
「心配しなくていいから、寝ろよ。明日も弁当、頼むぜ」
「玉子焼き、ハートにする」
形のないものに愛なんて名を付けたのは誰なんだろう。
出会ったばかりの頃のような、胸を締め付けるような苦しさや、会いたくてたまらないといった激しい心の震えは今はない。
だが、愛する人に今日も明日も、明後日も愛されているという確かな実感に包まれて、オオクニヌシはとろとろとした甘く、暖かい夢の中に落ちていった。
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All fanfiction and fanart is not to be used without permission from the artist or author.
デリヘルシリーズです!
「形のないものに〜〜」は中島みゆきです
あした
夜中にふと、突然目が覚めて、隣を見ると、いつもそこに寝ているはずのスクナヒコがいなかった。
さっきまでここにいたのだろう布団はまだ暖かい。すこし、身体を横に向けて、ぬくもりの残る枕に顔を押し付けてみると、ふんわりとスクナヒコの匂いが香った。長男は、酒臭いだけだなどと言うが、自分にとってはこれ以上に安心できる匂いを知らないかもしれない。
ふと、このままスクナヒコが戻ってこなかったらどうしよう、捨てられたらどうしようという不安が首をもたげるが、オオクニヌシは無理矢理その考えを頭の外へ追いやった。
「悪ィ。起こしたか?」
静かに扉が開いた音が聞こえて、それから待ち望んでいた声が静かな寝室に響く。戻ってきたスクナヒコが上から心配そうにオオクニヌシを見下ろしていた。
無言で首を横に振ると、スクナヒコは黙って覆いかぶさってきて、そっと触れるだけの口吻をくれる。
「喉乾いちまってよ。飲みすぎたかな」
言いながら、隣に潜り込んできた小さな身体をぎゅうっと抱きしめた。枕やシーツの残り香ももちろんいいけれど、当然本物が一番いい。
飲みすぎたかもしれない、喉が乾いたと言って、きっとこの酒飲みは更にビールでも飲んできたのだろう。時々、酒の飲み過ぎや体調を心配してはみるが、スクナヒコにとっては、酒を飲まないことによるストレスの方がよっぽど身体に悪いような気がして、オオクニヌシは口を出すのをやめた。その分、自分が作る食べ物で、気をつけてもらえばそれでいいような気もした。
好き嫌いが案外多いと言いながら、スクナヒコはオオクニヌシが作ったものならほとんどなんでも食べたし、今夜は何が食べたいと、伝えてくれることも多い。
「どうしたんだよ?甘えたいのか?」
無言のまま抱きついていたオオクニヌシに、しばらく好きにさせた後、一旦離れたスクナヒコが顔を覗き込んでくる。金色の瞳が、自分を見つめる眼差しが、いつも暖かいことに安堵しているオオクニヌシがいる。
「もし俺が、この先しわくちゃのジジイになっても、君はこうして、隣に寝てくれるのかな、と思って」
一瞬驚いたように目を見開いたスクナヒコはすぐにふっと頬を緩ませて笑った。
「なーに言ってんだ。お前がジジイになる前に、先におれがジジイになるだろーがよ」
茶化すようなその言い方が、照れ隠しであることをオオクニヌシは知っている。年を重ねる心配をするということは、それだけ長いこと、このさきも一緒にいるつもりであるという気持ちの現れだと思う。そしてきっと、オオクニヌシが思うよりもっと前に、スクナヒコがその心配をしたんだろうというのがわかってしまった。
「君は、年をとってもあまり変わらなさそうだから」
「若い恋人作っちまったからよ、頑張ってんだよ、こう見えても」
スクナヒコの細い身体を抱いていた腕を外されて、今度は逆にオオクニヌシの首の下と背に腕が回る。スクナヒコの小さくて薄い胸板に、オオクニヌシの頭を抱え込むように。
「明日のことなんかわかんねーけどよ。きっと、明日のおれも、お前のこと好きだと思うぜ。こうして、肌を合わせて一緒に寝たいと思えるくらいにはな」
真夜中の静寂は漠然とした不安を連れてくるものなのかもしれない。
けれど、こうやって、スクナヒコはいつも、オオクニヌシが欲しい言葉をくれた。
「嬉しいな」
「心配しなくていいから、寝ろよ。明日も弁当、頼むぜ」
「玉子焼き、ハートにする」
形のないものに愛なんて名を付けたのは誰なんだろう。
出会ったばかりの頃のような、胸を締め付けるような苦しさや、会いたくてたまらないといった激しい心の震えは今はない。
だが、愛する人に今日も明日も、明後日も愛されているという確かな実感に包まれて、オオクニヌシはとろとろとした甘く、暖かい夢の中に落ちていった。
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