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パンフレットを広げて、現在位置を確認するのだけれど、全くわからない。なんたって人が多すぎるのだ。

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普段ならきっと、こんなことはないんだと思う。だけど今日は、人が多すぎて、建物の前まで行かないと、そこが何号館であるかがわからない。そうやって、一つ一つ建物と現在置を確認しながら人ごみの中を歩まなければならないから、どうやったってなかなか進めない。

「これ、絶対迷ったッス」
いつまで経っても第一体育館が見えてこない。体育館というからには、それなりにデカイ建物だろうという目星はつけられても、何たってどの建物も桁違いにデカイ。それに加え、大学構内とは、どうしてこうも、広いのか。

「迷ったッス。兄貴…、コラ馬鹿兄貴っ!」
サングラスとヘッドフォンで、何を考えているのか全くわからないツンツン頭を殴ってようやく、馬鹿兄貴はこっちを向いた。

「体育館がわかんなくなったッス!」
「駄目でござるな、また子」

今まで完全に、地図を見るのはこちらに押し付けて横を歩いていただけのくせに、この馬鹿兄貴は堂々そんなことを宣う。

「じゃあ、お前が地図見ろッス!」
パンフレットを押し付けてやると、涼しい顔で(サングラスだから目元は見えないけど、たぶん)兄貴は首を横に振った。

「拙者なら、地図なぞなくとも晋助を見つけてみせるでござるよ」
「あのねェ…」

確かに、晋助先輩に会えたらいいな、という下心が、兄妹共にあったのは事実だ。だけど、昨年デビューした寺門通バンドのライブが見たいという名目で、晋助先輩には連絡もせずにここまで来て、とりあえずライブ会場の第一体育館を目指していたのではなかったのか。
寺門通と言えば、こないだまでアイドルだったのに、昨年からロックに転向して。兄貴が興味を持ったのも、そのせいだとは思うんだけど。

「晋助が見つかれば、第一体育館は案内してもらえるでござるよ」
何たってここの学生なんだから、と。

そうは言っても、晋助先輩がサークル活動をやっているという話は聞いていない。…というか、あの先輩がサークル活動なんて、想像できない。学祭に来てない可能性だって十分にあるではないか。

「いや、晋助は絶対いるはずでござる」
兄貴のこのたっぷりの自信はどこから来るのだろうか。

「もー、わかったッス!兄貴は兄貴で、勝手に探せばいいッス」

そう言い捨てて、違う方向へ飛び出して来たはいいものの。本気で迷子になってしまっていた。こうなったら、正規ルートなんかじゃ駄目だ、横道に逸れてやろう!と、植え込みの中や校舎と校舎の隙間を思い付くままに進んで行く。自分の居場所がわからない上に、今度は人影もまばらになって、どんどん少なくなって、心細くなってきた。つまらない意地なんか張ってないで、晋助先輩に電話でもしようかなと、角まで歩いた時。

「ァっ、んぁっ、ゃだっ、そうごっ!」
「イキてェんですかィ?」
「も、無理っ、ぅぁっ、ぁっ…」

聞き覚えのあるパンパン肌がぶつかり合う音と、紛れもなく男の声が2人分。

「ぁっ、ぁぅ、総悟、イカせてっ、イキたいっ…」
「知りやせん」
いくら人気がないからって、こんな外でコトに及ぶとは。

壁に押し付けられている『受け』の方は、こちらに気付くどころじゃなさそうだが、『攻め』のアタシと同じ位の年齢じゃないかなっていう金髪の方はチラリと一瞬、斜め後ろで立ち尽くしてしまった自分を見たような気がした。

「し、失礼したッス!」
アタシは、慌ててその場から離れるように走って走って走った。もう、ますますどこにいるのかわからなくなった。建物はいくつか並んでいるが、人影は少ない。しかも、明らかに体育会系のアニキしか歩いてないエリア。とりあえず第一体育館への道を教えてもらおうにも、なんだか恐そうで気が引ける。

携帯の着信が鳴ったのは、その時だった。

「晋助先輩っ!!」
悔しいけど、先輩がアタシに電話してくるってことは、あの馬鹿兄貴が先に先輩を見つけてしまったということなのだろう。

『お前、今どこだ?』
いきなりそう聞かれるだなんて、やっぱりそうか。

「わかんないッスぅ〜!なんか、とにかく、人は少なくて、建物3つあるけど、いかにも体育会系って感じのヤツしかいないッスぅ」

アタシの言葉を聞いた晋助先輩の声に溜息が混じった。

『そこにいろ、迎えに行かすから』
なんで先輩本人が迎えに来てくれないのかと思ったけど、それは顔見てから文句言ってやるッスよ。

***

話は少し遡る。 また子が違う方向へ飛び出して行ってしまってから、仕方なく万斉は適当な道を歩いていた。途中模擬店で買った『たこせん』を頬張って、『腹が減っては戦はできぬでござる』などと余裕風を吹かせていた。

一番の目的のライブは夕方からで、それまではまだまだ時間があったからだ。

「フランクフルトも美味しそうでござるなァ…」
ちょうど『たこせん』を食べ切って、さぁ次だ、とフランクフルトの店に寄って行く。

「いらっしゃいま……………のわあああああっ!!!」
まさかこんな偶然があろうとは。それに、近づいて見るまで、完全に女の子だと思っていた。

「てっ、てててっ、テメェ、なんでこんなとこにィっ!!」
「久しぶりでござるな、晋助」
夏休み以来の再会だった。

***

『今からこいつに迎えに行かすから』

と、晋助先輩から送られてきた写メは。男だか女だかわからない、中性的な顔の銀髪のヤツだった。晋助先輩の携帯を持っているらしいから、それで連絡を取り合えと。そこまで面倒臭い手順を取ってまで、晋助先輩本人がどうして迎えに来てくれないのだろう、何か理由があるのだろうか?と、悩んでしまった。

5分くらいで、どうやら写メの人物だと思われるデカイ女(?)が、キョロキョロしながらこっちに向かって歩いて来て。写メの女顔っぷりから、もっと小さい子を想像していたアタシは、兄貴くらいありそうなそいつのデカさに一瞬戸惑った。

「あぁ、また子ちゃん発見」
身長だけでもわかっていたけれど、チャイナドレスの銀髪の声は、紛れもなく男のモノ。

「なんスかあんた。趣味女ッスか?」
迎えに来てもらっといて…とは思ったけれど、アタシの口からはそんな言葉しか出て来ない。

「あははっ、また子ちゃん、そんな言葉知ってるなんて、おこげ?」
おこげって言えばおこげッスけどねっ!よく一緒にいるゲイは実の兄貴ですけど何かっ?っつぅか、あっさり言葉が通じるなんて、お前もゲイッスね。さっきの青姦してたカップルといい、さすが大学は世界が広いッス。

一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、まさかコイツ、晋助先輩の今彼じゃないだろうなって、体型だけで思ったんだけど。でも、晋助先輩が、平気で彼氏に女装させるとは思えなかった。

「っつーかさァ、また子ちゃんさァ」
坂田銀時と名乗ったそいつは、学祭期間で売り子のために女装してること、もちろん晋助先輩も女装してること。それから、アタシに会ったことがあると話し出した。
6月くらいだっただろうか、渋谷のゲーセンで、アタシと晋助先輩がバッタリ会ってしまった時、先輩と一緒にいたのが自分だと言う。

「なんで先輩が迎えに来てくれないんスか?」
先輩が6月っていう、大学に入ってまだ早い時期から一緒にゲーセンにいたってことは、相当仲のいい友達をわざわざアタシのために遣わせてくれたんだってことはわかったんだけど。

「また子ちゃんがいた、この場所がねェ、…ここじゃなかったら、晋ちゃん自分で迎えに来たと思うよォ」
晋助先輩は、来たくても自分ではこの場所に来れないのだと言う。

「そんなん言ったって、先輩がガチムチ体型嫌いなのって、前からッスよ」
それくらいお前に言われなくたって知ってるッス!…って、上から言ってやったつもりだったんだけど。

「ほんっと、また子ちゃん、おこげ過ぎだよ、ヤバイよまだ若いのにっ」
ひとしきり爆笑した後で、不意に深刻な表情を見せた坂田は。

「晋ちゃんは、さァ。その、元々駄目なタイプのヤツらに、スゲェ酷いことされちゃったんだ」
一瞬、坂田が言ってる意味がわからなかったッス。

あの体型のヤツを目の前にすると倒れちゃうとか、錯乱するとか、視線が集まるのが駄目で昨日も倒れてるとか、電車には1人じゃ乗れないなんて、坂田の言葉が頭の中に入って来るんだけど、理解できない、したくない?あの、恥ずかしがりやでアタシなんかよりもずっと繊細で女の子っぽくてカワイイ晋助先輩に、一体何があったのか。先輩は、口下手だから、誤解されることはあっても、人に嫌われたり怨まれたりするよう人じゃない。断じてない。それなのに?
乱暴されたって、そういうことッスか?あの先輩が。

「まー、だからさァ。晋ちゃんが自分でまた子ちゃんを迎えに来なかったこと、責めないであげてくれる?」
坂田の言葉に、ただただ、あたしは頷くことしかできなかった。それ以上聞いたら、泣いてしまいそうだった。

「ところでまた子ちゃん、話し込んだついでに、もう一つ話していい?」
あの、サングラスにヘッドフォンでツンツン頭のお兄さん、晋ちゃんの元彼でしょ?って。やっぱり馬鹿兄貴は先に、どういうわけか偶然にも晋助先輩のところに辿り着いたらしい。

「先輩は何て言ってるッスか?」
「高校の時の友達だって。でもあれじゃ、俺らには完全にバレバレだけどね」

バレバレってことは、晋助先輩は自分自身のことを、ある程度カミングアウトしてるのだろうか?この坂田は、きっと同類だとしても、高校までの晋助先輩は、なるべく人と関わらないようにしてて、必死で隠してて。アタシと一緒にいて、アタシと付き合ってるんだって、噂が流れてることに『また子ごめんな』って言いながら安堵してたような人だったのに。

「先輩、変わったッスね」
お前の言う通り、兄貴は先輩の元彼だと。高校までの先輩は、自分と兄貴以外には完全にクローゼットだったのに、変わったッスって言ってやったら、『そう、そこで問題が一つ』と坂田が言い出した。

「俺達は別に、お兄さんが元彼でもなんでもいいんだけどさ。まー、いろいろあって、俺らの回りはゲイとかバイばっかりで、むしろノンケの方が少ないんだわ」

晋助先輩が、先輩らしくあれることの意味が、そこにあるのだと、先輩は本当に、大学に来て良かったんだと、心から思った。

「でねェ、たった1人だけ、それじゃ良くないヤツがいるんだわ」
坂田が本当に言いたかったのは、その話らしい。

「…それって、晋助先輩の、今彼ッスね」
「大当たり」

別に、アタシも兄貴も。晋助先輩の、今の幸せをブチ壊しに来たわけではなかったから。そんなこと簡単だと、思っていた。この時は。

***

「そうかァ、高杉の、高校の友達かァ!」
だったら休憩してていいから、中でしばらく話してろって。近藤は万斉を模擬店の中に招き入れてしまった。

近藤が悪くないのはわかってる。近藤のことだから、100パーセント好意で、そう言ってくれてるんだってのもわかる。だけど。

「……………」
何を話せってんだよ一体っ!!

一番奥に行かされた俺の隣に座る万斉。あー、早く戻ってこいよ、銀時。また子連れてさァ。
万斉も黙ったまんま、ただ隣に座って、ブースの中をぼんやり眺めてる。腕組と足組はどんだけ偉そうなんだと思うけど。

「ここのブース、全員いい身体してるでござるなァ」
「ぁあ、そりゃな。剣道部だからよォ」
いきなり万斉が口を開いたかと思ったら、そんな言葉だった。

「晋助は、いつから剣道部に入ったでござるか?」
「ハァ?」

俺とさっきの銀髪のやつは、売り子を手伝うためだけの俄か部員だって言ってやった。部長が友達の友達だから、頼み込まれて仕方ないんだって。いやホラ、近藤は土方の友達なんだから、間違ってないだろ?

「なるほど…。確かにこの中では、あの顎髭の部長が、第一候補でござるなァ」
「なにがだよっ!」
「顎髭がなくて、Tシャツの袖捲ってなければもっと有力。タオルも減点」
「あのなァ」

万斉が変なことを言い出さないかってヒヤヒヤで。俺はとにかく煙草に火を点けて自分を落ち着かせようとした。

「晋助の今彼でござるよ。…でも、残念ながら彼はノンケでござるな」

もったいない、とぼやいた万斉の声は近藤には聞こえなかっただろうけどさ。お前の言いたいことはわかるよ。だけど、そういうモンなんだよ、世の中って。上手くなんかいかねェの。お前だってわかってんだろーが。

だって、俺だって、本当はお前と、別れたくなんかなかったし。

(…え?)

そこまで勝手に思考がいってしまってから、俺は、今自分が考えたことの重大さに気がついて心臓が痛くなった。

別れたくなかったのは事実だ。ずっと一緒にいたいと、本気で思ってた。だけど、あの時出した答が、間違ってるとは、今も思ってない。だけど、俺は?

(今でも、万斉が好き…?なのか)

嫌いになって別れたわけじゃない。そんなの今更だ。
万斉だって、ちゃんと受け入れてくれて、だから万斉は、俺の期待通りプロのミュージシャンとしてデビューしてくれてさ。おまけに俺が辰馬に告白するための、後押しまでしてくれたんだ。
俺は万斉がプロになって良かったって本気で思ってるんだ。だってコイツ、知り合った時から音楽のことしか考えてなかっただろう?真剣だっただろう?再来年になったら、万斉は専門学校を卒業して、きっとこっちに帰ってくる。そうしたら、またいつでも会えるのか?でも、それじゃあ、辰馬はどうなるんだ。辰馬に会わせる顔がないじゃないか。
いや、待て。そんなこと、考えるまでもない。わざわざ考えなくたってわかりきっている。今、俺が、毎日会いたいのは辰馬だ。いつも側にいて欲しいのは辰馬の方だ。眠る時に抱きしめて欲しいのは辰馬の方だ。万斉じゃない。
だけど、俺は万斉を忘れられていない。俺は…。

「おー、武市、似蔵!買って行ってくれよォ」
「最終日だからねェ、余っても仕方ないだろォ」
「買ってあげますよ、近藤さん」

急に、前の方が賑やかになって、思考が途切れさせられたと思ったら、武市と岡田の2人が来てた。ああ、誰にも見られたくないって時に限ってこれだからな。

「ぁあ、高杉の、高校の時の友達らしいぞォ」

近藤が信じやすい性格で良かったと、この時ほど、思ったことはなかったかもしれない(だから女に騙されるんだろうなァ)。近藤が勝手に説明してくれるから、俺は黙ってさえいれば、ボロは出ないはずだった。

「2人共ストライクゾーン。…でも、あれはカップルでござるなァ?」
「お、お前なァっ!」

ボソッと万斉が呟いた声は、多分俺にしか聞こえていない。まだやってたのかよ、万斉のやつ。俺の好みのタイプの男分析。

「晋助」
「な、なんだよ?」
いきなり、それまでずっと、正面を見ていた万斉がマジマジと俺の顔を見つめて。

「女装もカワイイでござる」
突然の言葉に、俺はその場にぶっ倒れるんじゃねェかと思っちまった。

「あーっ、馬鹿兄貴っ!」
けたたましい声と一緒に、ようやく銀時がまた子を連れて戻ってきた。

「銀時お前、遅ェよ」
「ごめんごめん、またちゃんと話し込んじゃってさァ」
「先輩、超久しぶりッスぅ〜!超カワイイ〜!」
すげぇハイテンションで中に駆け込んできたまた子に抱き着かれて、俺は固まってしまった。

「晋ちゃんさー、そうやってっと、ビアンのカップルにしか見えないねェ」
「テメェだって女装だろ!俺より女らしいくせにっ!」

ただちょっと、銀時はやっぱりデカすぎるから、どうしたってニューハーフにしか見えないだろうけどさ。ってか、それじゃあ俺がちっこいみたいじゃねェか!

「っつかテメェ、ちょっと来いっ」
携帯を交換するついでに銀時を外に連れ出す。また子に余計なことしゃべってないだろうな、ってのを確認するために。

「何も言ってないってェ!銀さん、またちゃんと会ったことあるよォってのと、晋ちゃんも女装だよォって言ってただけだしィ」
「だったらいいんだけどよ…」

また子のことだから、てっきり俺が自分で迎えに行かなかったこと、怒るんじゃねェかと思ったのに。

「しーん、見ィつけたぜよォ」
銀時と話していて油断した。いきなり後ろから抱き着いてきたのは、今一番剣道部のブースには近寄って欲しくない、辰馬だった。

「なんじゃなんじゃ、友達来ちょるそうじゃのう?」
紹介してと、俺に抱き着いたまま話す辰馬。一体どこで聞いたんだ。でも、情報の出所は、すぐに判明した。

「似蔵と武市がのぅ、剣道部のブースで見たって言うちょったんじゃあ」
(あいつら…)

と言っても、あの2人を怒ることはできない。ちゃんと説明していない俺が悪いんだから。

「晋、どの子じゃあ…?お、女の子なんか?」
銀時は肩を竦めてお手上げポーズだし、辰馬に抱き着かれたまま、俺は3人でまた剣道部のブースに戻ってしまう。

「あー、帰ってきたッスぅ」
明らかに、俺に後ろから抱き着いた辰馬と、目の前の万斉、視線がマトモにぶつかり合っていた。
この時ばかりはさ、神様でも仏様でもなんでもいいからさ、助けてくれって、祈っちまったぜ。頼むから、頼むから万斉、余計なこと言わないでくれってさ。

「拙者、河上万斉でござるよ。こっちは妹のまた子。妹が晋助とはクラスメートで」

(えっ?)
今万斉、何て言った?

「ほーかほーか、で、河上君はどこの大学なんじゃあ?」
「専門学校でござるよ。妹も。晋助とは頭の出来が違うでござる」
「そうなんスよー。せ…、晋助、サボってばっかのくせに真面目だったッス」
2人共、上手いこと『友達だ』ってことで、話合わせてくれてるのか?

「サボってばっかりなのに真面目って、なんじゃ、晋らしいのぅ」
おいコラ辰馬!ってか、その前にまた子。どういう意味だそれは!

「ところで、失礼ではござるが」
つつと寄ってきた万斉が俺の頭の遥か上の方で辰馬に耳打ちした。

「そちらは晋助の彼氏さんでござるか?」
「アッハッハ、バレてもーたかのぅ」
そりゃお前、堂々抱き着いてりゃ誰だってわかるだろうが。ほんっとに馬鹿だな。

「やっぱりそうでござるかァ!いや、大学でいい人と巡り会えたとは聞いてたでござるが、なかなか会わせてくれなくて」
「わしの方こそ。晋はのぅ、あんまり高校の時の話してくれんからのぅ」
ええ友達おるじゃなかかと辰馬に頭を撫でられて、なんだか複雑な気分だった。

「わしは経済学部3回の坂本辰馬じゃき!よろしゅうのぅ、河上君」

おもいっきり、握手なんか交わしちゃってる辰馬と万斉の姿。ついでに電話交換まで始めちゃってさ、止めたいけど俺にはハッキリ言える理由がない。まさかこんな日が来るなんて、夢にも思わなかった俺としては、ホントにスゲェ複雑としか言いようがないんですけど。

「ところでのぅ、晋」
結局ずっと抱き着きっぱなしの辰馬が、情けない声を出して腕の力を強くした。

「一緒にあちこち回る予定じゃったけどのう、わしのー」
ビンゴ大会の司会に回らなきゃいけなくなったと。その後は、ダンスパーティーの手伝いにも行くらしい。

「でも、これで晋は河上君とあちこち回れるのう?」
本音を言えば、辰馬と一緒だから、あちこち回りたかったんだけどさ。委員会の仕事なら仕方ないよな。

「辰馬、全然時間ないのかよ?」
「うーん、厳しいのう。時間作れたら、電話するぜよ」
チュッとひとつ、額にキスを落として辰馬は剣道部のブースから出て行った。実のところ、それを言いに来たらしかった。

「晋助先輩、ラブラブじゃないッスかァ」
「まぁ、うん…」

結局、学祭期間中、辰馬と一緒にいれたのって、前夜祭の花火の時だけじゃねェか。なんか、それってすごく寂しくて、素直になれない自分がいて。

「おーい、高杉ィ!トシが戻ってきたから、お前休憩行っていいぞォ」

奥の方で突っ立っていた俺達に、近藤が声をかけてくれた。戻ってきた土方は、明らかにどっかで一発ヤってました(ってかヤラれてました?)って真っ赤な顔で、ちょっとフラフラしててさ。時間差で、1分くらい遅れて沖田も到着。こっちはやけにサッパリした表情。

「あっ!」
沖田の顔をみた瞬間、また子が声を上げた。

「なんでさァ?…あ、お前!」
「わざとじゃないッス!!」

走って逃げ出したまた子を追い掛けようとした沖田を止めて、アイツ俺の連れだから!って話してやった。何があったかわかんねェけど許してやってくれ、って。

「まァ、俺は別にいいんですけどねィ」
外でヤってたら見られただけだって。お前な、それな。外でやる方が悪ィだろうが。

「十四郎がえらい興奮するもんでねィ」
「総悟っ!…もういいだろうがっ!」

俺らと一緒で、色違いのチャイナドレスを身につけた土方だけどさ。きっと、あの調子だと、また無茶苦茶ヤラれたんだろうなって思う。
でも、それで幸せ感じてるんだからいいのか、こいつらは。

むしろなんだか羨ましいと。こうやって一緒にいれる2人がいいなって思っちまった。俺はどうだ?今日だけは辰馬と一緒に回るって約束してたのにさ。

沖田が模擬店を手伝うことになって(それだけ上機嫌ってことだ)、銀時も休憩に出た。怪しい占い小屋なんかやるんじゃねェぞ。

万斉と、また子が走って行った方向に模擬店を出たら、そのまた子から着信があった。

「おーい、お前また迷子じゃねェだろうなァ?」
『先輩先輩、桂さんッスぅ!桂さんに会っちゃったッスぅ!』

兄貴も早く来てよぅ、8号館の前だからって、ハイテンションのまた子に急かされて。俺と万斉は2人で8号館を目指した。

万斉の隣に立ってる自分ってものに、全く違和感がないのが不思議だった。1年以上前の時が戻ってきたのかと、一瞬思ったけど、それは違うとわかってる。時間は確実に流れてる。

俺の横に立っていても、万斉が手を繋いで来ないのが、何よりの証拠だった。


END



まだ続きます!

タイトルはTommy hevenly6です。

♪ためいきの中で
いつからかあなたばかりを見てた
瞬きするたびに恋をした
Baby,you're so cute sunny light
後悔は今も
ハート型に崩れた壁の中
素直になれないの気がついて
Like a Candy Day Dream
I'm feeling so high

これ、好きなんでよねェ!!(アルバム曲ですが)書いてる最中ずっと、頭の中でヘビロテでした!
坂高→万引きずりまくりsongだと思います!!(いいのかそれは…)






















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