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占い、信じる?


「はい、恋愛に効くお守り!1つ600円よ!」
地図を見ながら恐る恐る、歩いていた俺にかけられた声。

「阿音サン…?」
占いの館と書かれた阿音の模擬店は、食べ物屋ではなかった。

「ハイ、彼氏の浮気防止のお守り。高杉君はこっちの方がいいかしら?」
巫女の衣装に身を包んだ阿音は、平然とそんなことを言ってのける。

「どんなお守りでも、辰馬には効かないような気がするんだけど?」
「もー、高杉君がそうやって、諦めてるから駄目なんじゃないのー?」
「だってさ」

それにしても巫女の衣装が似合うなと思ったら、阿音の実家は本当に神社らしかった。奥で、怪しげな祈祷を上げているのは、阿音いわく引きこもりの専門学校生で双子の妹、百音らしい。確かに、見分けがつかない程、そっくりだ。

「阿音さんって、双子だったんだぁ…」
「んー、まぁね。お悩み相談は、30分5千円だけど。まァ、高杉君ならお金はいいわ」

30分5千円って、ずいぶん高い金取るんですね阿音サンって焦ったけど、どうやら本物の巫女だけあって、ボロ儲けしているみたいだ。

阿音に言われるがままに右手を前に出す。
「ねー、高杉君。本当のこと言っていい?」

笑いが消えた阿音の表情が、すごく気になった。

「な、何…?」
言いにくそうに答えた阿音の言葉。

「あなた達、最大の危機が迫ってる暗示よ?…それを乗り越えられたら、安心しても良さそうだけど」
「最大の危機…?」
まァ、所詮占いだろうなんて、思ったのは思ったんだけど。

「ライバル出現の予感。マメに坂本君と連絡取った方がいいわよ。今、坂本君がどこにいるか、把握してないでしょう?」
どうしてわかったんだろう、って思いながら、俺は素直に頷いた。

「それじゃあ駄目よ!ちゃんと、何時から何時はココって把握するべきよ!」
それ以外に、危機を回避する可能性は見えないと阿音は言った。

でも、占いなんだから、本当に当たるとは限らないんだけれど、友達の阿音が、わざわざ嘘をつくとも思えなかった。
とにかく俺は、その場から辰馬の携帯に電話をかけた。だけど、東城も言ってた通り、辰馬は電話に出なくて。

どうしたらいいのか、わからないまま俺はフラフラと剣道部のブースに戻る。
結局幾松さんのラーメンしか食べれてなかったけど、空腹なんてどうでもよかった。

「どうしたんだァ?高杉。真っ青だぞ?」
休憩なのか、後ろに持ち込んだ椅子に座ってフランクフルトを食べていた近藤が俺を手招きする。

もっとゆっくりしてきてもよかったのに、と笑いながら近藤は、俺にもフランクフルトを1本買ってくれた。自分のとこの売上に貢献するなんて、さすが部長だなぁなんて、ぼんやり思ったんだけど。

「あ、アリガト」
「ほい。なんか面白そうなことやってたかぁ?」
近藤に尋ねられて、俺はぶんぶんと首を横に振った。正直、それどころじゃなかった。

「東城は幾松さんとこ手伝ってる」
「お礼のタダラーメン狙いか?東城らしいな」

お昼をちょっと過ぎた今の時間、ピークは過ぎていて、食べ物を探している人の数もまばらだった。まったりした雰囲気が流れているから、俺はこうやって座っていていいわけで。

「近藤、阿音さんがさ、占いの館開いててさ」
「おー、今年も巫女さんかぁ!後で俺も見に行こう!」

俺が尋ねるより早く、近藤が俺に聞いてきた。占ってもらったか?と。俺は無言のまま頷く。

「阿音さんの占い、かなり当たるらしいからなぁ、俺も見て貰おう」
俺が聞きたかったことは、近藤が先に教えてくれた。やっぱり当たるんだ。ってことは、俺と辰馬に、最大の危機が訪れるって、きっと本当なんだ。どうしよう?

マメに連絡を、って言われたって、辰馬が全然電話に出れないようじゃどうしようもなくて。

食べ終わったフランクフルトの棒を持ったまま煙草も吸わずにへこんでいたら、突然俺の携帯が鳴り出した。画面なんか見なくてもわかる、これは、辰馬からの着信。
俺は急いで通話ボタンを押す。

「た、辰馬っ!」
『おー、晋、ごめんのぅ!見回りしちょったら、着信に気付かんくてのぅ』

辰馬の声の後ろに流れているのは学生がDJをやって、校内中に流れている大江戸ラヂオだった。

「お前、今日は…?」
『1日中見回りっちゅーか、警備みたいなモンじゃのう』
後でそっちにも行くからと、辰馬はいつもと変わらない声で笑っている。

『そーそー、さっき無許可の模擬店見つけてのぅ。怪しげな占いやっちょったから、捕まえたんじゃけど』

誰だったと思う?と笑う辰馬。占いって言われたら、さっき行った阿音のところが真っ先に浮かんだけれど、あそこはパンフレットに載ってるんだから、無許可じゃないはずだった。

『銀時だったんじゃあ』
いっそう、声を上げて笑う辰馬の口から出た名前。

「…へ?」
辰馬に言われるまで、俺は、先に休憩に出たはずの銀時が、そういえば戻っていないことに気付かなかった。

「近藤、銀時は?」
まだ隣で休憩を取っていた近藤に尋ねると、一旦帰ってきたものの、この時間は見ての通りだからって、もう1回出掛けて行ったらしい。

(そして怪しい占い師かよ)
『怪しい変装脱がせたら、中はナースのまんまでのぅ!みんなあまりにも面白かったから、お咎めナシじゃて』
どんな変装をしてたのかは知らないが、脱いだらナースって、相当間抜けだな、銀時のヤツ。

『とりあえず、今から桂の運動会見てくるぜよ〜』
「ああ、わかった」

俺はそこで、辰馬との通話を終えたんだけど。声から判断するに、特別いつもと違うようなことなんてなかった気がする。

(あんまり占いの結果ばっか気にしてても仕方ないか)
携帯の画面を見つめながら煙草を吸っていたら、陸奥に引っ張られた銀時が帰ってきた。

「近藤、おまんが保護者じゃろ?しっかり働かせとけィ!」
銀時が無許可の怪しい占い師をやっていた話は陸奥の口からも説明されて。辰馬、本当に今日は見回りなんだなぁって、安心してしまった俺がいた。

「銀時ィ、お前なんでまた、占い師?」
「だってなんかさァ、阿音さんボロ儲けしてるって聞いたからさー」

あれは本物の巫女さんだからなんじゃないのか?って言ってやったら、本物かどうかなんて証明できねェだろ?上手いこと言えば騙される奴くらいいるだろ?…なんて、銀時は全然反省してない様子。

「まァ、いいじゃないか!」
陸奥に軽く怒られていたと言うのに、全然元気な近藤が俺達の間に入ってきて。

「夕方に向けて、もうひと踏ん張りしてもらおうか」
「はーい」
セーラー服の俺とナースの銀時。俺ら2人は、また前に立って歩いてゆく人に声をかけ始めた。近藤も、休憩を終えて炭の状態をチェックしている。

銀時と、くだらない言い合いをしながら売り子をやっていたら、だんだんと占いの結果なんて、気にならなくなってきた。

それに、阿音は、乗り越えたら大丈夫だとか、言ってたような気がするし。

***

展示も何も、行われていない9号館の3階、空き教室。1階では、軽音部のライブが行われているが、9号館は全て壁が防音になっているため、ほとんど聞こえては来ない。

校内を流れる、大江戸ラヂオに教室のスピーカーを合わせて、坂本は電話をかけていた。

「おー、晋、ごめんのぅ!見回りしちょったら、着信に気付かんくてのぅ」
相手は高杉みたいだ。机の上に、脚を広げて座る坂本の足元に、縛られたままうずくまってる俺。総悟の命令で、口だけで坂本をイカせなければならない。どのみち、手首は膝に括りつけられていて使えなかったけれど。正直、坂本のはめちゃめちゃデカくて、口に入れるだけでもかなり苦しいってのに。

俺が、坂本の中心をきつく吸おうと激しく唇で扱こうと、坂本の声が乱れることはなかった。

剣道場でばかりやっていては、模擬店を終えてから戻ってくる部員に、臭いでバレてしまうのではないかと、提案したのは坂本だった。当然、坂本にとっては学祭は3回目。ひとけのない場所など、知り尽くしているようだ。

俺は、メイド服をきっちり整えられ、バイブを突っ込まれたまま、ここまで歩かされた。歩いてる最中、総悟がバイブのスイッチを弄くる度に、感じてしまって悲鳴を上げて座り込みたくなったけど、俺を蔑んだように見下ろした総悟の目を見たら、身体の奥が痺れたように熱く凍り付いて。総悟のその視線だけで、あれだけイカされたってのに、まだ勃ちそうになる俺は、心底淫乱なんだと思う。総悟が言うように。

途中、何度も何度も模擬店に寄り道して、掠れた声で買い物をさせられて。ようやく辿り着いたココ。いくら泣き叫んでも、どれだけ喚いても悲鳴を上げても、防音壁では俺の声なんかここにいる2人以外の誰にも聞こえやしない。

「そーそー、さっき無許可の模擬店見つけてのぅ。怪しげな占いやっちょったから、捕まえたんじゃけど」
俺に奉仕させながら、坂本の声色は全く変わらない。スゲェ、と思う。

総悟は、少し離れて坂本の電話に音が入らない場所で、腹ごしらえに途中で買ってきた焼きそばや焼きもろこしを頬張っていた。何しろ、200人は入れるかという大教室に、今はたった3人しかいないのだ。

「とりあえず、今から桂の運動会見てくるぜよ〜」
そこで坂本は、高杉との通話を終えた。

「見回りなんざ全くしてないくせに、よく言いまさァ」
「サボるつもりはなかったんじゃけどのぅ」

沖田君に呼ばれるまでは、と笑う坂本。銀時が無許可で模擬店を開き、占い師をやっていた話を、坂本は全て他の執行委員から受けた報告で知ったのだ。

「銀時も呼んじゃろーか思ったけど、今日は無理っぽいのぅ」
「あー、別に輪姦してェわけじゃねェからいいでさァ。…考えてもいいけど」

何気なく交わされる2人の言葉に、青ざめる。けれど、奉仕をやめて口を出すことは許されていない。そもそも俺の意見なんか求められていない。総悟と坂本2人の相手だけでも限界を感じているというのに、これ以上誰か呼ばれたら…。延々と失神寸前の激しい痛みと快楽を与えられる続けるこの地獄のような時間が、いつまで続くのか。

「それに、明日以降のことは、全然考えてないんでさァ」
腹ごしらえを終えた総悟が、剣道場から俺に運ばせていた鞄の中から取り出したバラ鞭を持って近づいてくる。

「さて、この痛み、どこまで我慢できますかねィ、トシ。お前の皮膚なんか裂けちまうだろうなァ」
見下ろす総悟の冷たい瞳。総悟が鞭を使うことは滅多にない。いつも、俺の身体に傷をつけるのは嫌だって。それなのに。

「でもトシは、痛いのが気持ち良い変態野郎だから、嬉しいんだろィ?血が出るまで可愛がってやりまさァ」
坂本のモノをくわえさせられ、それでも総悟の言葉に身体が疼くのを感じながら、俺は泣くことしかできなかった。

「失神なんかしねェで、ちゃんと痛がりなせェよ」


続く!



土方君の受難はいつまで続くのでせう…(苦笑)






















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