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特別な日を一緒に過ごしたい、特別な誰かが、あなたには存在しますか?

高く青い空の向こうに見つけた太陽 17


病院のベッドの上で、眠れなくてゴロゴロしていたら、枕の下に隠してあった携帯が震えた。

『誕生日おめでとう。これでお前もやっと16歳だな』
毎年毎年マメなやつ。こっちから、6月26日に何かをしてやったことなんて、多分ない。

8月10日という日は、言うなれば必ず夏休みなわけで。学校がないもんだから、誰かに祝ってもらったなんて記憶はほとんどないのだけれど、この幼なじみだけは別だ。小さい頃から、必ずこの日にはウチに遊びに来てくれた。何かしらのプレゼントを持って。昨年は…そうだ、ここ2〜3年は本なんだ。本を誰かにプレゼントするのって、すごく難しい話だと思うんだけど。

とにかくそんなんだったから、0時ちょうどに受信したメールを見て、本当にアイツらしいと思った。

届けられたメールはその1通だけ。よく考えたら、高校に俺の誕生日を知っている奴がどれだけいるのだろうか。考えるだけ虚しくなってきて俺はまた、マナーモードにしっぱなしの携帯を枕の下に隠した。1年にたった1日しかない日。だけど、だからそれがなんだって言うんだ。ひとつ年を取るだけの、ただそれだけの日だ。

メールが来る前同様に、ゴロゴロしていたら、見回りに来た看護士が氷枕に変えてくれて。ひんやりした感触の中で、ようやく俺は眠りに落ちた。

***

午前中から診察に呼ばれて、診てもらうと、「気をつけてね」と医者に言われた。何のことだかわからない。
喫煙室で煙草を3本吸い溜めしてから病室に戻ろうと5階に上がったら、ナースステーションに辰馬の姿を見つけた。

「辰馬!」
なんで今日はこんなに早いんだ?とか思いながらも、嬉しいのは隠せない。

「おー、今から行くとこだったんじゃあ」
ナースステーションで何種類かの書類をもらった辰馬は、一緒に病室へと歩みを進める。なんか今日の辰馬、すげェラフな格好してるような。

夏休みに入ってからは、ネクタイを締めるようなことはないものの、それでも職場に行くのだから、ある程度キレイ系の服装ではあったんだけど。

いつも通りベッドの周りをカーテンで覆ったら、辰馬が持っていた紙袋を差し出した。

「サイズがわからんかったんじゃけど…」
「は?」
紙袋の中身はジーパンとTシャツ。それから帽子とか、いろいろ。要するに着替え。

「今日の夕方5時まで、外出許可取ったんじゃ」
さっきのナースステーションでのやり取りはそれか?

「なんで…」
まさか、まさかだろう?だって俺は言ってない。

「その…、誕生日じゃろ?今日」
「辰馬…」
照れ臭そうに、だけど辰馬は俺が欲しかった言葉を言ってくれた。

「誕生日おめでとう、晋」
「辰馬っ!!」

紙袋は横に置いて、俺は辰馬に抱き着いた。こんなに嬉しい誕生日なんて、初めてだ、きっと。

「し、晋、あんな、…本当は1時からじゃったんじゃけど、もう出ていいって言うから、とりあえず着替え」
なぜだか辰馬の口調がどもっている。それもそうか。毎日ここで会ってたって、2人でデートなんて初めてなんだから。

俺は素直に辰馬から離れて、紙袋の中の服を取り出した。俺がここに運ばれて来た時の制服は、血まみれになったのと、ザクザクに切られてしまったのとで、今はもうない。退院して家に帰れば、新しい制服が用意はされているだろうけど。病院内では、決められた病院着だったから、俺はその時まで、自分が全く洋服を持っていないことに気付かなかった。

「お前、まさかコレ、買ってきたの?」
「いんや」
「あ、そう?」

買ってきたのだったら悪いなと思った。サイズからして、さすがに辰馬の私服ではないだろうけど、これでも少し大きかったから。ベルトがないと、ジーパンなんて下がりそうだ。

「ソレの、わしが中学の時に着とったんじゃよ」
「………!!」
ちゅ、中学だと??

「なんか懐かしいのぅ」
着替え終わった俺を楽しそうに、嬉しそうに見ている辰馬はたぶん、いや全然悪気はないんだろうけど。

「もうすぐ11時。さ、行こか」
時計を見ながら辰馬が俺を促した。

「言っとくけどっ!!…お前がデカイだけなんだからなっ!!」
立ち上がりながら言ってやると、辰馬は一瞬、驚いたように俺を見て。すぐいつもみたいに頭をくしゃくしゃっと撫でてくれた。

「そんなこと、気にせんでえいがな。晋助は晋助じゃ」
撫でられる感覚の気持ち良さと、その笑顔に騙されてるような気がするけど。こういう風に俺をあしらえるのって、やっぱり辰馬は大人なんだなぁと思った。

(早く大人になりてェなァ…)

***

いつも見ているだけだった高級外国車の助手席に乗り込んだ。

「さて、どこに行こうかの?」
エンジンはかけたものの、車を出さないまま辰馬が呟く。

「何だよ、考えてねェの?」
実は一週間も前から外出許可を申請していたくせに。さっきのナースステーションでのやり取りは、今から出ていいかどうか、だけだったのだ。

「いんや、いろいろ考えては来たんじゃけど」
4時間しかないつもりだったから、軽く食事と買い物だとか、誕生日だから、Hプラザホテルのおいしいケーキを食べに行くだとか。映画に行ってもいいし、とか。辰馬は指折りデートプランを話し始める。

「それか」
最後のひとつになって、急に口ごもった坂本の顔を不思議そうに高杉は見上げた。

「どっか…2人きりになれる場所に行くとか…」
言ってから、口許を手で隠し視線を外に向ける坂本。その、言わんとしていることは、高杉にはすぐにわかった。

「辰馬」
身を乗り出して、運転席の坂本にぎゅっとしがみつく形になる高杉。突然の行動に焦った坂本の手がハンドルに当たって、短くクラクションが鳴った。

「俺、FINEがイイ」
「…!!」
「っつうか、FINEじゃなきゃ嫌だ」
はっきりそう、言い放つ高杉に、苦笑いを隠せない坂本。

「ほんに…おんしは悪いことばっかり知っとるの」
「FINEって言われて、ドコ?って聞かないお前もお前だろ」
自分は大人なんだから、知ってても当たり前なんだけどなァとは、坂本は口にしなかった。

「わかったぜよ。誕生日なんだから、ご希望に応えるろー」
膝の上に乗っかった形の高杉の身体を支えて覆いかぶさるように唇を重ねてやる。いくら3ナンバーでも、運転席に2人でいれば狭くて適わないが全く気にならない。

「晋、愛しとうよ」
「うん、早く行こ、辰馬」
唇を離した後も、首に腕を回したままの高杉。

「そうされてると運転できんのじゃけど」
「このまま運転しろよ」
言いながら頬や首にチュッ、チュッと吸い付いてくる高杉がかわいくて仕方ないのだが。

もうちょっとそうしていたかったけど、時間は限られている。高杉の身体を抱き上げて、助手席に押し返すと、坂本は車を発進させた。

***

平日の昼間だと言うのに、空いている部屋の方が少なかったのはさすが人気ホテルというところか。それにしても世間の人ってエロいのぅ。奮発して一番高い部屋を選んだ。

「空いとってよかったの。できたばっかりの時なんか…」
いつ来ても『満』じゃった、と言いかけて口をつぐんだ。

「いつ通っても、電気消えちょったからのー」
なんとかごまかしはきいただろうか。『一体誰と来たんだよ』なんて、鋭い高杉が突っ込まないわけがない。

「実は俺も来んの初めてなんだけど」
「そうなんか?」
「ヤルだけでこんなイイとこ来てくれる奴いねェもん」
当たり前のように言った高杉の頭を撫でてやった。

「心配しなくても、やるだけなんかじゃないきに、安心し」
むしろ、しなくてもいいかも、なんて思ってるくらいなのに。

おとなしくなった高杉だが、エレベーターを降りて、部屋に入ると、一瞬驚いて足を止め、一直線に風呂場へ向かう。

「辰馬、すげェ!風呂デカイ!サウナついてる!」
部屋の広さもさることながら、風呂場もかなりのものだ。

「晋ー、何飲むー?」
洗面台の前で数種類置いてある入浴剤をひとつひとつ見ていた高杉を、後ろから抱きしめてメニューを見せた。

「とりあえずケーキじゃろ?あとは何飲む?」
「酒、って言いたいけど、辰馬運転だもんな。コーラでいいよ」
「そうじゃな、お酒は、また今度飲みに行こ」
言いながら高杉の顔を上げさせて、そのまま深く口付けた。

立ったまま交わされる激しいキスに、力の抜けた高杉の身体をしっかり支えてやって。途中で唇を重ねたまま向き合って、ゆうに10分はそうしていたと思う。

「…ハァ…、おま、激しっ…」
息が荒い。飲み込みきれなかった2人の細胞が交じりあった液体を、唇の端から垂らして睨み上げる高杉の顔のなんとエロいことか。それだけで、そそられる。

「晋、おいで」
手を引いて抱きしめて。それから、抱いて行った方が早いと思いついて、高杉の背中と膝の裏に腕を通して抱き上げた。もう、ルームサービスもお風呂も後回し決定の方向で。

軽く3人くらいは眠れそうなデカイベッドの上に高杉を降ろしもう一度口付けた。
何の抵抗もせず、キスを受け入れる高杉の腕が首に回って、どうしようもなく愛おしくなって頭を撫でてやる。

「晋、ほんまにえいがか?」
服を脱がせる前に、確認を取った。だって、付き合っているとは言え、一応自分達は教師と生徒で。今ここから、一歩踏み出してしまったら、もう戻れない。

「今更何言ってやがんだ!ここでやめたら殺す!」
言いながら、俺は辰馬の下半身に手を伸ばした。

「もうこんなんなってるくせに、よく言うよ」
辰馬は、照れ臭そうに俺の頭を撫でると、耳元に顔を近づけてきて、『それだけ晋のことが、本気で好きなんじゃ』と囁いた。

まったく、すぐに好き好き言う奴程信用できねぇって知らないのか、この馬鹿は。
だけど、辰馬だけは、信じてみるって、決めたんだ。
起き上がってさっさとTシャツを脱ぎながら、辰馬に言ってやった。

「言っとくけど、良くなかったら二度としねェかんな」
「怖いこと言うのー」
俺の、ジーパンのベルトを外しながら、頬に唇をあてて辰馬が困ったような顔をしてみせた。

「だいたい俺は、1回寝た奴とは2度と寝ない主義なんだよ」
下着ごとジーパンを脱がされながら強がってみても、恥ずかしいだけだけど。

「責任重大じゃな」
俺の身体を倒し、首筋に顔を埋めながら辰馬は器用に、片手だけで自分もジーパンを脱いでいく。

「ふァ…」
首筋を舐められて、何故だか身体が跳ねた。

「晋、カワイイ」
「う、るせっ…」

呟くような声が聞こえて、悪態をついてはみたけれど、なんでか胸のあたりがきゅうっとなった。
肌の上を辰馬の手が、ゆっくり這っていく。まだ脇腹に巻かれたままの包帯のところで、動きが止まった。

「これ、痛くないがか?」
「ん、無茶しなきゃ大丈夫」
「すでに無茶しとるかもしれんの」

痛くなったらすぐ言って、と行為を再開した辰馬の手が、もうすっかり大きくなった俺自身に触れた。

「ァっ…んァっ、ああっ」
やっぱりだ。辰馬に触られるだけで、たったそれだけなのに、声が抑えられない。勝手に漏れて、何も考えられなくなる。
いくら入院生活で溜まってるったって、誰かにしてもらうのって、こんなに気持ちいいものだったっけ?

俺自身を口に含んだ辰馬に、上目遣いで顔を見つめられた。胸が苦しくなる。

「ァァ…たつ…ま…あああっ…」
全身を駆け抜ける電流のような感覚があって俺は、辰馬の口の中に欲を吐き出していた。

「っ…ァあ、信じらんねェ」
いくら溜まってたって、早過ぎるだろ俺。

「晋、カワイイ」
「やめっ!見んな!」
恥ずかしくて死にそうだ。
「晋、苦しくない?」
足を高く持ち上げられて、ちょっと脇腹の傷が痛んだけど、秘部に這わされた舌の感覚に痛みが吹っ飛んだ。

「はァっ!!んくっ…ァあ…」
俺の声と、クチュクチュいう秘部からの音だけが響いていて。

「た…つま…、早く…」
たまらなくなって手を伸ばすと、俺の吐き出した白濁を指に絡め取り辰馬は秘部に押し当てた。

***

「もうこんなんなってるくせに」
とジーパンごしに股間を握られて。全く人の気も知らないで。いつから我慢してると思っとるんじゃ。

高校生の、生徒相手に欲情してるなんて、教師という立場では認めたくないけれど。

「それだけ、晋のことが、本気で好きなんじゃ」
それは、嘘偽りない本当の気持ちで。

さっさとTシャツを脱ぎ始めた晋助のベルトを外して下着ごとジーパンを脱がせてやった。
こないだは、ゆっくり見れなかったけど、やっぱりきめ細かい、きれいな肌だ。細い身体には、それでも程よく筋肉がついていて、無駄な肉が一切ない。

(わしも、鍛えとってよかった)
家で筋トレしてる程度だけれど。

「俺は、1回寝た奴とは2度と寝ない主義なんだよ」
愛情もないセックスしかしてこなかったんなら、そうかもしれないなと、なんだか急に晋助が可哀相に思えてきた。それを言うと、たぶん怒るし、泣かせてしまうから、口には出さないが。

「責任重大じゃな」
愛し合って、抱き合うことがどれだけ気持ちいいのか、幸せなことなのか、晋助に伝わればいいと思った。
肌の上に手を這わせていくと、脇腹に巻かれたままの痛々しい包帯に触れた。
相当深い傷だったから、まだ全然塞がってないはずだ。

「これ、痛くないがか?」
「ん、無茶しなきゃ大丈夫」
怪我も治らないままセックスするなんて行為自体、すでに無茶してるような気もするが。

「痛くなったらすぐ言っての」
なるべく負担にならない体位を考えなければならないようだが、晋助のためだと思えばそれすら喜びだなんて、笑われるだろうか。

すっかり勃ち上がった晋助自身を口に含もうとして、太腿の内側に、平行に走る白い線に気付いてしまった。
もうかなり薄くはなっていて、これだけ近づいて見たからこそ、気付けるようなきっと古いものなのだけれど。

唇と舌を使って刺激を与えながらあきらかな自傷の線の上を撫でてやった。この子はどれだけしんどい思いを抱えてきたのだろうかと思うと、行為にも自然と熱がこもる。

自分が気付いてしまったことに気付いていない晋助を見上げると、真っ赤な顔で、されるがままに喘いでいた。

「ァァ…たつ…ま…あああっ…」
シーツを掴んでいた晋助の手に力がこもり、口の中に熱い晋助の欲が飛び出してきた。

「晋、カワイイ」
イってしまったことを恥ずかしがる姿がまたそそるなんて、自分も相当きてるなと、改めて思う。

「晋、苦しくない?」
脇腹の傷を気にしながら両足を持ち上げてひくついてる身体の裾に舌を這わせた。

「た…つま…、早く…」
もう、そんなに急かされたら。どれだけ我慢して、身体の負担にならないように、ゆっくり行為を進めていると思っているのか。晋助よりは大人だと言ったって、自分だってまだ、20代の若造にすぎないというのに。

指を2本使って、じっくり慣らしてあげた後で、限界まで張り詰めた自身を晋助の中に埋めていった。

「ぅあああっ…、ァあっ…、あっ、あっ、ァ…っ」
晋助の喘ぎ声が部屋中に響く。深く腰を打ち付けて、晋助が一番感じるところを探した。

「晋助…んっ」
入学式で一目ぼれしてから、ここまで長かったと、やっとこうやって、ひとつになれた、その感動と愛おしさが込み上げてくる。晋助が、好きで好きでたまらない。

「ァ…たつ…ま、んァ、…す…き」
「!!」
どくんと心臓が鳴る。なんて嬉しいことを言ってくれるんじゃろうか。

「晋、愛しちゅうよ」
必死で枕を掴んでいた腕を取り首に回して身体を起こしてやった。この方が口付けやすいから。
その時に、チラっと左腕を見たが、手首よりもむしろ、二の腕の方に、白い痕は遺っていた。

「ふァァっ…」
繋がった箇所に体重がかかり、更に奥まで深く内部をえぐられて晋助は身体をのけ反らせた。

「あ、ァあっ…、んぁっ」
銀糸を垂らして喘ぎ声を上げる晋助の唇に吸い付く。もう、いつまででもキスしていたい。

「晋助…、晋助」
名前を呼びながら腰を支え下から突き上げてやると、晋助の声は一層高くなる。赤く染まった身体もその声も、なにもかも全てが愛おしい。

腰を動かしながら、再び熱を持って立ち上がり始めた自身を握り上下に扱いてやると晋助は身体をぶるっと震わせた。

「たつ…、やァ…もう、イ…きそ…」
「ええよ。わしも、けっこう…の…」
絡み付いてくる晋助の内壁の感覚にトロけそうだ。わし、けっこう遅い方なんじゃけど。

「ァァあ…ァあっ…あ…」
背中に思い切り爪を立てて、ぎゅうっとしがみついてきた晋助の身体から、ガクンと力が抜けた。

(わしも、イかせてくれ、の)
坂本は、一段と激しく抜き挿しを繰り返し、がくがく震える高杉の身体の中に、これまでの思いの丈を全て、ほとばしらせた。

***

汗やら何やらで、すっかり汚れてしまった脇腹の包帯を外して洗面所で洗い、干しておく。湯舟にお湯を張ってベッドに戻ると、ぐったりと横になったままの晋助が、頭に巻かれた左目の包帯も外しているところだった。

「それ、外していいんがか?」
「駄目って言われてるけど、うっとおしい」

事件以来、初めて見た生々しく痛々しい傷痕。きっともう、この左目に光は戻らない。そっと、長い前髪を掻き分けて、左目の上に唇を落とした。

「なんでお前がそんな顔すんだよ?」
横に寝転がった坂本の顔を見上げて高杉がぼやいた。

「できることなら変わってやりたいの」
言いながら左腕を両手で取って、自分の右頬にあてる。高杉は、すぐに、坂本が手首に唇を押し当てた意味を理解した。

「…………」
知られてしまった。だけど、なんて言ったらいいのかわからない。黙って反応を待っていたが、坂本はただ、頬ずりするだけだった。

「怒んないの?」
「?…何を怒ることがあるんじゃ?」
本当に、心底不思議そうな顔で見つめられてしまっては、聞いたこっちが馬鹿みたいだ。

「普通は、そういうの見つけたら、怒るだろ?」
「そうなんか?なんで怒る必要があるんじゃろうの〜?」

気付いた時に、沸き上がってきた思いがある。それまでは、好きだからキスしたいとか、抱きしめたいだとか、そんな気持ちの方が強かったというのに、あきらかに今は、それだけじゃない想いが自分の中に存在するのだ。

「これは、晋が頑張った証拠じゃろ?辛くて、苦しくて、それでも死なずに生きてきた証じゃよ」
「お前…馬鹿だろ」

そんな無茶な解釈あるか。だけど、そう言われて、涙が止まらなくなってしまっている俺がいる。頭ごなしに『何やってんだ』って怒られたって、余計イライラが溜まって余計ザックリいっちまうだけなのに。

「泣きたいだけ泣いたらえいよ。ちゃんとここにおるからの」
頭を抱き寄せられて、辰馬の広い胸に顔を埋めて俺は泣いた。こんなに大量の涙、いったいどこから出てくるんだろう。

「晋、いっこだけ約束してくれんかの?」
わんわん泣いている俺の頭を撫でながら、辰馬は囁いた。

「今度辛くなったら、わしを呼んでくれんかの?」
いつでも、すぐに飛んで行くから。

そう、今は、ずっと側にいてあげたいという想いが強い。もう、ずっとこのまま、一生晋助の側にいてあげたいし、側にいてほしい。

「もう、我慢しなくていいから」
鳴咽を漏らしながら、晋助が小さく、コクンと頷いたのがわかった。

***

一緒にお風呂に入って、上がってから、タオル1枚のまま、ようやく頼んだルームサービスで、2人でちっちゃなショートケーキを食べた。『甘いものは苦手だから、これで十分だ』と晋助は笑ってくれて。コーラとジンジャーエールで乾杯したら、まぁ、それなりに誕生日らしくはなった。

「昼ご飯どうする?」
「んー、俺、カルボナーラでいい」

メニューを見ながら晋助が答える。ホテルのものにしては、相当ケーキが美味しかったから、そのままここで、全て済ませてしまうことにした。

「そんなんでえいがか?もっと食べんと」
「俺はそれくらいが普通なんだよ」
だからちっこいんじゃ、と思ったが、怒られそうだったから言うのをやめた。

「わしは、豚の生姜焼き定食…と」
リモコンでのオーダーにも慣れてきて。まぁ、きっとホテルのフロントでは、まとめて頼めよ、なんて思われてるだろうけど。

万斉とまた子があれから1回しか来てないだとか、夏休みの補習を、今日だけは休みにしてもらっているだとか。ソファに並んで座って、他愛のない話をしていたら、急に高杉が、腰のあたりにぎゅっとしがみついてきた。

「辰馬…時間あるなら、もっかいしよ」
「え…!!」
ドクンと、胸が高鳴った。

「駄目…?」
そんなかわいい顔で見上げられて、駄目なんて言えるはずがない。

「わし、さっき余裕なくて、全然駄目だったと思っとったんじゃけど」
良くなかったら2度としない、なんて宣言されたのに、やっと晋助を抱けるという嬉しさが勝ってしまって。本当はもっと、全身舐めてあげたいとか、もっと感じさせてあげたいとかあったはずなのに。

「あんなの、初めてだったんだよ」
勝手に声が出るとか、触られただけで身体が反応するだとか、舐められただけで簡単にイっちゃったとか、行為の最中にドキドキするだとか、名前を呼ばれるのが嬉しいだとか。

そうそう、だいたいヤってる最中にキスしたのだって初めてだし。辰馬は知らないだろうけど。
「好きな人とするのって、特別じゃろ?」

お腹のあたりにしがみついて、顔を見せてはくれない晋助の頭を撫でながら囁いた。小さく縦に揺れた晋助に、ますます込み上げてくる愛おしさを感じながら、「じゃあ、ご飯食べてからするぜよ、アッハッハ」と、声を上げて笑ってやった。


続く



本当はお風呂の中でチュッチュッ、チュッチュッしてるところも書きたかったけど、何Pになるかわかんないから断念(汗)既に今までで一番長いのにι




















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