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どうせ大人はなんにもわかってくれない。
そんな、使い古されたダサい言葉を言うつもりなんてサラサラないんだけど。

高く青い空の向こうに見つけた太陽 01


目的とか、そんなモンがあったわけでもなく入学した高校はつまらなくて。あんまりいい天気なもんだから、早速屋上でサボっていたら3年(たぶん)に絡まれた。

あぁ、なんかこういうの面倒くせェ。たかだか2年早く生まれてきたってだけで、なんでこんなに偉そうにされなきゃならねェんだ?

思ったら、返事より先に足が出ていた。

「て…テメェ!!」
生意気だ?って?そんなこと、今更何の感動も与えられないくらい言われ慣れてんだよ。

相手はあと3人。勢いで敵に回しちまったけど、こんな、仲間作ってないと何にもできないような奴らなら、なんとかなるだろう。
奴らみんな、俺が1人だって、しかも自分たちが俺よりデカいって、それだけで優越感に浸ってるように感じたから。

「かかって来いよ、センパイ」
見上げる視線で挑発してやると、馬鹿共はすぐに乗ってきた。
1人目の腹に肘を突き立て、2人目は足を引っ掛けて転がったところを殴り飛ばす。

(あと1人)
振り返った俺の目の前にソイツの拳が迫っていた。

(油断したか?)
避けられないであろう衝撃を受けるために、顔の前で両腕を組んでガードを作った。

が、いつまでたってもそれは襲ってこなかった。

「全く、無茶する奴でござる」
代わりに聞こえてきたのは、俺に襲いかかってきてたセンパイがコンクリートの上に倒れる音と、のんびりとして、特徴のある話し声。

「なんだよ、お前」
背が高くて、ツンツンに立てられた髪の毛。既にボタンを全開に着くずされた制服。そして、何でかよくわかんないけど、背中にギターを背負っていた。

でもコイツ、よくよく見たら、俺と同じ1年じゃねェか。

「拙者も屋上でサボりたかっただけでござるよ」
最後の1人をのしたのであろう右腕をひらひらと振りながら、なんでもないことのようにソイツは言った。

「ああ、いい天気でござる〜」
そう言うと、奴は胸ポケットからサングラスを取り出して、すっかり静かになった屋上の端の方へと移動し、ギターを置いてその場に座り込んだ。

「お前なんてんだ?」
「拙者、河上万斉でござるよ」
「河上…?ああ、お前」
さっき俺の2つ前の席に座ってた奴じゃねェか。

「お主は?」
「俺は高杉晋助。クラス、一緒だぜ」
「そーでござるか」
俺は、河上の隣に座り込んで、嫌味な程青い空を見上げた。

なんだか、俺以外にもこんな入学早々はみ出しちまった奴がいるんだという、安心感みたいなものはあったけど、それでも、これから3年間、ここで過ごすのかという憂鬱感は拭えない。

青空が憎いって、歌ってたのは誰だっけ。

春眠暁を覚えず、とはよく言ったものだと思いながら、春の陽気に誘われてウトウトしていると、けたたましく屋上の扉が開く音で意識が引き戻された。

なんだよ、もう先公が駆け付けてきやがったのか?と思って見たら、そこにいたのは自分と同じ生徒だった。しかも金髪の女。

「万斉!!初日くらいは出るって言ったッス!」
未だ転がったままの3年には目もくれず、だーっと駆け寄ってきた女は、河上の隣にいる俺に目をやって黙り込んだ。河上の知り合いらしい女もさすがだ、今日が授業初日だってのに既にスカートが短い。

「無理でござる。あの国語教師のやる気のなさにあてられたでござる」
「違ェねェや」
河上の言い分に、ついつい笑って口を挟んでしまった。

『坂田銀八』とか言ったか?死んだ魚のような目で、ダルそうに煙草くわえながら自己紹介した国語教師。学校崩壊もいいとこだろ、と思ってすぐに出てきてしまった。もっとも、教師になんて、今更何の期待も抱いてはいないんだけど。どこに行ったってあんなモンだろう。 あれならまだ、昨日までのオリエンテーションをやっていた、変なしゃべり方の担任の方がマシかもしれない。

「おい、お前…」
俺は、いつまでも目の前に立っている女に言った。

「何なんスか?」
「パンツ見えてんぜ」
「!!」
途端に座り込んで手で裾を押さえる女。

「嘘だよ」
その反応がおかしくって、俺はくくっと喉を鳴らして笑いながら、からかっただけだと教えてやった。

「あんた性格悪いッス!」
「そりゃどうも」
性格悪いだの捻くれてるだの、生意気だ、と一緒くらい言われ慣れすぎていて何とも思わない。

「また子、こっちは高杉晋助」
河上が間に入る形になって、俺を見た。

「こっちは来島また子でござる。拙者ら、3人共クラスメートでござる」
「へェ」

よろしくなんて言うつもりはない。俺は、誰かと常に行動を共にするってやつが大の苦手なんだ。1人の方がずっと気が楽だ。そうやって、今まで生きてきた。用がある時だけ話せば済むことだ。

いくら俺が、ずっと側にいたいと願ったって、どうせみんな、いつかは離れていくんだから。
…俺はずっと独り、独りでいるって、そのはずだったんだけど。

それから、何故か俺がサボろうとすると、こいつら2人がついて来るようになって。そのうち、万斉と仲良くしてた平賀三郎って奴まで時々ついてくるようになって(三郎は真面目な奴だから毎日じゃないけどな)。

3年を倒して奪い取った屋上は、すっかり俺達専用のサボりスペースとなってしまっていた。


続く



青空が憎いと歌っていたのはhideちゃんですョ、高杉君。
なんだろ、坂本先生に落ちるまでの高杉君が書きたいんです(長くなりそうよ…)






















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