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朝から、騒々しいヤツが、帰ってきた。

ずっと2人で


「コラっ、馬鹿本っ!!晋助様はまだ寝てるッス!」
「大丈夫じゃ大丈夫じゃあ〜!ちっくと噛まれるくらいじゃろーて」
「アンタ晋助様の寝起き知らないんスか?」
「だーいぶ前から知っとるよ」
「お前、ムカつくッス!」
「また子、相手にするだけ無駄でござる。晋助に斬られたらいいんでござるよ」
「おーおー、おんし怖いこと言うのー?」

朝から部屋の前が異様にやかましい。

テメェら、俺の寝起きをなんだと思ってやがんだ?って言うか、こんな日くらいゆっくり寝かせてやるとか思わねェのかアイツらは?
辰馬の馬鹿野郎が、『一番にお祝い言いたいから』って言ってたのが、3ヵ月くらい前か。とにかく、前に帰ってきた時の話だ。
だから、日付が変わる前に辰馬は帰って来るもんだと思って、ずっと寝ないで待ってたってのに。
結局、空が白み始めて俺が待ちくたびれて眠ってしまうまでには、あの馬鹿は帰ってこなかった。何が一番だ、馬鹿野郎。
そんなわけで、俺は昨夜ほとんど寝てないんだっぅの。

「ウルセェっ!テメェらあっ!」

もー眠いし辰馬は帰って来なくてイラついてるし(あ、これは八つ当たりか?)で。俺は枕元の刀を取って、うるさい声の3人と俺を仕切っている襖ごと、一刀両断にしてやった。

「晋助様っ!」
「晋助」
「晋…」

3人3様に、寝起きの俺を見つめていて。

(アレ?)

3人って、誰と誰と誰だ?
また子と万斉はいるような気がする。ああもう、寝起きは頭が働かないから嫌なんだ。

「遅くなってごめんの、晋」

焦点が定まらないまま突っ立っていたら、いきなりデカイ奴に抱きしめられた。視界には、赤い色しかなくなったけど、俺はこの匂いを知ってる。

「晋、誕生日おめでとう」

抱きしめられているのが心地よくて、刀も収めずそのままになっていたら、顔を上げさせられて、唇を塞がれた。

「たつま」

馬鹿野郎、遅ェじゃねぇか。もう、どうせ今日は来ないと、思ってた。

「遅ぅなってごめんのぅ!ターミナルで事故があってのぅ」

寝ないで待っとってくれたんじゃろ?なんて一発で見透かされて。悔しいから『違ェよ』って返してやった。

「晋、寝かせてあげたいんはヤマヤマなんじゃけど、出かけるぜよ」
「……………ハァ?」

まだ、誕生日なんだから今から記念にヤろう!…って言われた方が納得したような気がする。お前さ、俺がテロリストだってわかってんのかよ、毎度毎度のことながら!

「どーしても今日じゃないといかんのじゃ!ホレ行くぜよ!」
「お前なァ…」

呆れたけれど。寝起きで半分した働かない頭じゃ、上手く文句も言えなくて。
辰馬の手で、着替えさせられた俺は、腕を引かれて、されるがままに外に連れ出された。

***

「…で、どこ行くんだよ?」

いくら俺が女物の着物だからって言っても、女じゃないわけで。そこらのバカップルみたいに、昼間っから手を繋ぎたがった辰馬を一発殴って、とりあえず並んで歩いていた。

「大江戸市役所じゃよ」

(…………ハァ?)

役所って。そんなとこに俺を連れてって何がしたいんだ、コイツは?俺に捕まれって言うのか?

「お前、何考えて…」
「コレ、今日出したかったんじゃ」

辰馬が上着の内側から取り出したのは、1枚の紙切れ。いや、それには見覚えがあった。

「お前、ソレ」

だいぶ前に、飲んだ勢いでふざけて書いたやつ。

「晋とわしの、婚姻届」

あの後、全然見当たらなかったから、とっくに捨てたんだと思ってた。

「わし、どーしても結婚記念日は、晋の誕生日が良かったんじゃア」
「お前…」

コイツ、馬鹿だろ。あ、馬鹿なんだった。俺とお前が結婚したって、お前はまた宇宙に行っちまうから、結局今までと何にも変わらないのに。なんだよ、新婚早々別居か、俺ら?
だけど、それでも。酔っ払った勢いで書いただけの物を、辰馬がずっと大事に持っててくれて(しかもなぜか勝手に印鑑が押してある)わざわざ俺の誕生日に籍を入れたいだなんて。そんな誕生日プレゼントもアリかなぁと思った。
もちろん、コイツのことだから、他にもプレゼントは山のように用意してるんだろうけど。
…アレ?そういえばさっき、襖斬った時、なんか大量に床に散らばってたよなァ…。
まぁ、いいか。


END



オマケ



大江戸市役所からの帰り道。

「高杉ィ〜!!ここで会ったが100年目ェ!」
「観念しなせィ!」

チッ、ああー全くもう、面倒なヤツらに会っちまった。
真選組の、よりによって土方と沖田じゃねェか。だから昼間の外出は面倒なんだ。

「おい、辰馬」

さっさと逃げるぞ、相手するのも面倒臭ェ…って言おうとしたんだけど。

「ちっちっち」

辰馬は人差し指を振りながら、わざわざあいつらに近づいて行く。

「違うぜよー!わしら、たった今、婚姻届出して来たんじゃ!」

ほら、コレが婚姻届のコピーでェ、これが戸籍謄本で…ってわざわざ全部を2人に見せてる辰馬。
お、お前、何言ってんだよ?さっさと逃げんぞ!

「じゃから、晋は、今日から坂本晋助じゃ」

満面の笑みで説明する辰馬に、土方と沖田の2人は呆れてる。

「じゃから、手配書も全部作り直し…」
「いいっつってんだろっ!!」

俺は辰馬の頭を思い切り殴りつけて、そのまま襟首を掴んで引きずった。

「そんなわけじゃからのー、今日はわしに免じて見逃してのう〜」

引きずられながら、辰馬はまだ声を張り上げている。2人共、本気で呆れたのか追っては来ないみたいだった。

「さっさと帰るぞっ!」
「そんなにえっちしたいがかァ?」

ようやく自分の足で隣を歩き始めた辰馬をもう一度殴ってやった。

(それはテメェだろうがっ!)

***

呆れた、というか、驚いたままに取り残された真選組の2人。

「…土方さん、手配書直すのはアンタが手書きでやりなせェよ」
「はァ?なんで俺なんだよっ!」
「土方さん以外に誰がやるってんでさァ?俺は面倒ですぜィ」
「総悟、お前なぁっ!」

いつものように喧嘩が始まった土方と沖田の2人。だが、土方が振り上げた拳をかわした沖田が不意打ちに、顔を近づけて囁いた。

「ねぇ、土方さん。俺らも婚姻届出しに行きやしょうか?」
「は?……ええっ?」
「土方さんとなら、結婚してやってもいいですぜィ」

あまりに突然の沖田の告白にパニック寸前のまま、『ふざけんじゃねェ!パトロール続けるぞ!』と歩き始めた土方は。思い切り上から目線で言われてることには、気付かなかったらしい。

沖田の、告白と同時の関白宣言。






















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