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「ぎ、ぎぎぎぎぎぎ、ぎんさぁああああああああああああああんっ!!」

ある江戸の午後で


玄関チャイムが鳴って、『久しぶりに依頼ですかねー』と、喜んで出て行ったはずの新八の悲鳴が鳴り響いたのは午後のことだった。

(うるさいねェ、なんだってのよ?)

一度はそう思い、ソファに寝転がった体勢のまま、再び読んでいたジャンプを顔の上に乗せて、『新聞ならいらねェって言っとけ』なんてまた惰眠を貪ろうとしたのだけれど。

「ぎ、ぎぎ、ぎ、ぎ、ぎんさんーーーーーっ!」

どうやら新八の声が尋常じゃない。なんだってんだ、誰が来たってんだよ?

「ちょ、ちょ、ちょちょ、ちょっとおおおお!困りますぅぅぅぅっ!」
「うるせェ、上がるぜ」
(あれ?この声?)

ジャンプをずらして玄関の方を見やると。どうやら新八は腰を抜かしてしまっていたようだ。
そして、傍若無人にずかずか入ってくる派手な着物。

「相変わらず昼間っからゴロゴロして、駄目人間の見本だな、テメェは」
「ってゆーかー、テロリストに言われたくないんですけど?」

どっかりと、俺の向かいに座って早速煙管に火をつけたのは。まぁ、はっきり言って、あんまり会いたくない人物だった。

「おい、眼鏡!茶ぁくらい出せや」
「客でもねーやつに出す茶なんてねーよ」

俺はそう言い放ったけど、新八は怯えてあっさりとお茶を運んできた。ちなみに、神楽は定春と散歩に行ったまま。頼むから当分帰ってこないでね。

「ってゆーか、俺さぁ、今度お前に会ったら、叩っ斬るって言わなかったっけぇ?」

新八じゃ相手にならない、っていうか、相手できないだろう。だから仕方なく、銀さんはソファから起き上がって、ソイツの前に座り込んだ。

「そうだったか?」

いけしゃあしゃあと言ってのけるのは、今江戸中で最も恐れられている過激派攘夷志士、鬼兵隊の総督高杉晋助。
まぁ、これが、不本意なことに、銀さんとは幼なじみってか、昔からの知り合いだったりなんかするわけですよ。

「お前、こんな昼間っからよく堂々と出歩けるよなー。真選組に捕まんぞ」
「なんだお前、心配してくれてんのか?気持ち悪ィ」
「別に心配なんかしてませんけどっ?」

な、なんなのこの言い種!銀さんはただ単に、ここに土方君とか来ることもあるんだから、そうなったときに面倒くさいって思っただけだっつーの!
ツーンと煙を吐き出しながら、『相変わらず金のなさそうな部屋だな』って。悪かったな貧乏で!育ち盛りの子ども2人も抱えてお父さんは大変なんですよ!って、俺いつからお父さんになったんだ?

ってか、こんな最悪なのが可愛いって本気で言えちゃうだなんて、今更だけど、辰馬って尊敬に値するわ。
と、そこまで考えてから、フト思い出したことがあった。

「新八ィ、今日って、何日だ?」
「えええええ、えっと、10日、ですけど」

江戸中を騒がせるテロリストの突然の訪問に、相変わらずビビったままの新八は、部屋の隅で小さくなったまんま、声だけで答えた。

「晋ちゃん、誕生日じゃねーの?」
「誰が晋ちゃんだ、誰が!」

包帯に覆われていない、左目でギロっと睨みつけてくる高杉。泣く子も黙るって、あの顔ね。なんか、その話題にだけは触れて欲しくなかったって顔だなぁ。

「っつーか、なんでテメェが俺の誕生日覚えてんだ?」
「なによ、ソレ!ちょっとひどくない?銀さんが覚えてたら駄目だってゆーの?」
「テメェなら、脳味噌まで糖分になっちまって忘れてると思ってたぜ」

ひどい言い方。言っときますけど、銀さん、まだ糖尿になってなってないんですからねー。まぁ、危険信号はバリバリ出まくってますけど。
ってゆーか。

「誕生日なら、なんで俺んとこなんか来るわけ?辰馬はどーしたのよ、辰馬は?」

一瞬、ほんの一瞬だけど、その名前を聞いて高杉がピクッと反応を見せた。

「あんなヤツぁー知らねェ」

あれ?………なに、これ?もしかして、誕生日なのに、辰馬と喧嘩しちゃった?それとも、辰馬が帰って来なかったとか?いや、辰馬のことだから、もしかして忘れてるなんて可能性も否定できないぞ?

うーん、でも、待てよ。辰馬って、馬鹿だけど、晋ちゃんに対してはホント、有り得ないくらい可愛がってるってか、溺愛ってか、まぁ、平たく言うと性別も宇宙と江戸っていう距離も超えて愛してるっていうか、さ。まさかそんな晋ちゃんの誕生日を忘れるわけはないか、いくら馬鹿でも。ってことは、可能性として、帰ってこなかったってのが一番大きいのかも?…でも、それじゃあ、晋ちゃんがわざわざウチなんかに来た理由にならないよね?アジトでも隠れ家でも、何処でも行ってふて腐れててくれればこっちだって迷惑かかんないんですけど。

そこまで色々考えた俺だけど、そこで思考をストップしてしまった。だって、『で、結局どうなのよ?』なんて、晋ちゃんに尋ねたところで、コイツが素直に返してくれるだなんて思わないんだもん。

「新八ぃ、お前、もう、今日は帰っていいぞー。ついでに、神楽見かけたらお前んとこ連れて帰ってくれやぁ」

どっちみちコイツがいたら依頼なんか受けらんねーから。待ってましたとばかりに新八は、自分の荷物をもって猛ダッシュで玄関から出て行った。

「晋ちゃん、別に、いるならいてくれてもいいけどぉ、暴れたりすんのだけは、ホント、勘弁してよね」
「アホか、誰がこんなシケた部屋で暴れるかよ」
「シケた部屋とはなんですかシケた部屋とはっ!今すぐ出て行けっ!真選組に突き出すぞコラぁ!」
「やれるもんならやってみやがれコラァ!」

お互いに刀(って言っても銀さんは木刀だけど)を抜いて、真剣な睨み合い。暴れるなって言った矢先にこれなんだから。
そんな、一触即発の雰囲気をブチ壊したのは、これまた玄関から聞こえた間延びした声だった。

「すんませーん、坂田金時くんいらっしゃいますかぁー?」
「なっ…」

突き合わせていた刀を引いた晋ちゃんの明らかな動揺を見るまでもない。俺の名前をこんな風に間違えるやつなんて、宇宙は広しと言えどもたった一人だけだ。

「すんませーん………。ありゃ、留守じゃったかのぉ?出直すかのぉ、アッハッハ」
「待てぇええええええええいっ!」

俺は、木刀を投げ捨てて玄関に走った。ってか、出直すとか言っといて、入ってきてんじゃん、この馬鹿辰馬っ!

「おお、金時!やっぱり居留守じゃったかのー」
「銀時だっつってんだろーがよぉっ!!」

走っていった勢いそのままに、両脚で飛び蹴りを決めて。でも、そんなことくらいじゃあ、この男はへこたれない。

「アッハッハ、手荒な歓迎の仕方じゃのう、金時」
「銀時だっつーの」

盛大に頭から玄関扉に突っ込んだせいで、ダラダラ血を流して、それでも笑ってるもじゃもじゃの髪の毛を引っつかんで俺はそのまま、応接間に引きずっていった。

「おっ?晋!ここにおったがかー!」
「て、テメェ、なにしに来たっ!」

さっき抜いた刀をそのまま俺らの方に向けて、すごい形相で高杉が立っていた。
あー、これでさっきの銀さんの中での自問自答は解決ね。コイツら、絶対、高杉の誕生日だってのに喧嘩したんじゃん。

「晋、ごめんの。許しとうせ」

銀さんがひっつかんでいた髪の毛の手を離すと、『痛いのう』なんてガリガリ掻きながら辰馬は高杉と向き合った。

「うるせぇっ、テメェなんざさっさと宇宙でもどこでも行っちまいやがれっ!」
「晋!」

刀を向けられてるってのに、辰馬は臆することもなく高杉にゆっくりと歩みをすすめていく。

「近寄るんじゃねェっ!」
「晋、ごめんの」

あと少しで辰馬の手が高杉に届く、ってところで、高杉は刀を振り上げた。

「危ない、辰馬っ!」

いくら辰馬でも真剣で斬られちゃぁ死ぬでしょう?って思って、銀さんは反射的に木刀に飛びついた…んだけど。

「馬鹿野郎………」

高杉が刀を振り下ろすより早く、辰馬が抱きしめていた、みたいだった。

「うん、ごめん、ごめんの、晋」

震える高杉の手から刀が落ちる。辰馬は、そのまま、高杉の両頬を、そのでっかい手で覆って。

(あー、新八帰らせて正解だったなー、こりゃ)

男同士のキスなんて、子どもに見せるわけにはいかないでしょーが。しかもアレだよ?少女漫画に出てくるようなキレイなBLとかじゃないんですよ?大の大人ですからね、2人とも。

「晋、ごめん、ごめんのぅ」
「………………」

あーもう、土方君に通報してやろうかなー。江戸最凶のテロリストは、只今頭撫でられてますーって。

「あのさぁー、仲直りしたんだったら、出てってくんないかなー?」

何回も何回も、唇を重ねてとうとう座り込んだ2人に、銀さんは言ってやったんだ。だって、迷惑じゃないですか。そろそろ『うるせぇ』って、下からババァが飛んできそうな勢いですよ、コノヤロー。

「おっ、すまん、すまんのー、金時!アッハッハー」

高杉を抱きかかえて膝に乗せたまんま辰馬が笑う。もう、名前を訂正する気にもなれねェよ。当の高杉は、あれだけ意地張ってたくせに、辰馬の胸に顔埋めてしがみついてんだから。表情が見えたら、どうせ赤くなってんだろーから、末代まで語り継いでやるってのによぉ。

「晋、いこか」

辰馬に促されて無言のままの高杉も立ち上がった。落としていた刀を拾って、そのまま玄関に向かう。

「金時、お邪魔したのー」
「おー、お前ら、もう2度と来んなよー」

わずか1時間かそこらだったけど。嵐のような時間はこれで終わりを告げた。

後で、ヅラ経由で聞いた話によると、あの馬鹿ップルの喧嘩の理由は、『高杉の誕生日に辰馬が帰って来れないかもしれない』と言い出したことに端を発していたらしい。
『だったらもう帰ってくんな!』と、高杉がいつもの調子で突っぱねた直後に『じゃあ今から帰る』と辰馬が言い出して。『来んなったら来んな!』って意地を張ってしまった高杉は、アジトや隠れ家じゃあ辰馬にすぐ見つかるからってウチに来たらしい。
だけど、結局、仕事放り出して地球に戻ってきた辰馬にあっさり見つかったってこと。ホント、辰馬すげェわ。あいつ、高杉感知センサーでもついてんじゃねェの?辰馬以外の人間には、全くなんの役にも立たないシロモノですけどね。

っていうか、さー。そんなくだらない喧嘩に巻き込まれた銀さんの気持ちにもなってみてよ、誰か。
ヅラに愚痴ったら、『貴様の日ごろの行いが悪いからだろう』なんて言われちゃった。
そんなのって、銀さん、可哀相すぎね?


END



暇だったもんで、急に書けたシロモノですw自分が一番ビックリ!だって、相当久しぶりの原作ベースですよ!
余裕があったら、この続きで坂高がイチャコラしてるところも書きたいなぁ…なんて思うのですが…。無理かもな…(泣)






















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