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細雨の朝


ニュースで梅雨入りの発表があったというのに、何日も雨は降らなかった。本当に、天気予報はアテにならないなァ、なんて思い始めた矢先の今日、朝から細い雨が静かに降りしきっていた。
おかげで空が暗い。今日は1日中、ずっと雨だろう。

「晋、起き」
「ぅ…ん…」

湿気のせいで、いつもより一層収まりがつかない髪の毛を、なんとか乾かしながらベッドに丸まっている恋人に声をかける。
付き合い始めてから、毎日のように泊まりに来る恋人は、自分が教えている紛れも無い生徒。教育委員会やなんかにバレたら、本当はヤバイのだろうけれど。

「晋、起きんとチュウするよ」

ものすごく寝起きの悪い恋人は、毎朝毎朝何度起こしてもなかなか起きなくて。この子に、あまり体力がないとわかっていながら、毎晩眠る前に抱き合ってしまうこっちが悪いのも知っているのだけれど、好きだという感情が収まることはなかった。

「ん…っ」

雨のせいで寒いのか、布団の中で小さく小さく丸くなった恋人の顔を上げさせて口づけを落とす。
そのまま抱き上げると自分の肩に頭を預けながら、されるがままに上体を起こす晋助。裸のまんまの背中には、昨夜自分が付けたキスマークが点在していた。

「晋、遅刻するぜよ」

この子が、遅刻もせずに学校にちゃんと来ることの方が珍しいのだが。

「やだ…。休む」
「晋助」
「辰馬、寒い」

そのままぎゅうと抱きついてきた晋助はまた、安心しきったような顔ですぅすぅ寝息を立て始めた。条件反射で、頭と背中を撫でてしまう。
こんな雨だというのに、さらさらと髪の毛は指を流れてゆき、すべすべの肌の触り心地も自分を落ち着かせてしまう。我を忘れそうになる程に。

「晋、わしは行かんと駄目なんじゃけど」

このまま甘えさせてあげたい気持ちはやまやまなのだけれど。教師である自分まで遅刻するわけにはいかないし、何よりいつものように置いて行ってしまえば、今日のような雨の日は、この子は絶対に学校に来ない。

「はい、起きる」

心を鬼にして、晋助を引きはがし、制服のシャツに袖を通させる。ボタンを1つ1つ閉めていって下着とズボンを履かせたら靴下も履かせてやる。
自分の鞄と晋助の鞄を2つ持って抱きかかえるように外に出た。
サァーという音が一帯に響いていた。

「…雨かよ?」

自分に体重を預けて引きずられるようにモタモタ歩いていた高杉が不機嫌極まりない声でぼやいたのが聞こえた。

「じゃから、こうやって、連れて行くんじゃよ」
「ヤダ!休む」
「駄目じゃ」
「雨は嫌いだ」
「晋が嫌いなら、わしも嫌いじゃよ」

雨が降ったらおやすみなんて、どこかの王様の子じゃないんだからと思いながら、部屋に戻ろうとする晋助を、無理矢理抱き抱えるようにエレベーターに乗せた。
マンションの駐車場に降り立ち、車の助手席に晋助を乗せて自分は運転席に回る。
学校までは車で20分程度の距離なのだが、晋助は助手席に座るなり、すうすう寝息をたててまた眠りはじめた。
雨のせいで道路はかなり混んでいた。長い信号待ちの間に前髪をかきわけて覗き込んでやると、あんまり可愛いい顔で眠っているものだから。

(もう、このまま2人でどこかへ行ってしまえたら良いのに)

無理だとわかっていながら、そんなことを考えた。自分が、普通のサラリーマンだったら、今すぐ有休を申請しているところだ。
頭の中で、素早く今日の予定を思い浮かべる。職員会議も何もなかったはずだ。

(学校の後、2人でどこかへ出掛けよう)

ドライブして食事して。制服のままの晋助は嫌がるかもしれないけれど。
渋滞を見越して、早く出てきたおかげで、いつもよりかなり早く学校の近くまで到着してしまった。

「晋助、起きて」

学校からは少し離れたコンビニの駐車場に車を停めて、助手席のシートを倒して晋助に覆いかぶさった。

「ん…、ァ、ふぁっ…」

目論見どおりキスで目覚めた晋助がしがみついてくる。
散々口腔内を貧るように舌を絡めて吸い付いて、長い口づけを味わって。ようやく唇を離してやると、荒い息遣いのまま晋助は隻眼を吊り上げていた。

「ばっ、馬鹿っ!!」
「目覚めのキスじゃろー?」

潤んだ瞳で怒っている顔も可愛いと思ってしまうだなんて。

「じゃなくてっ…、責任、とれっ」

恥ずかしそうに晋助が目を反らす理由がすぐにわかって、時計を確認した。あと15分、学校までの移動を考えたら、10分しか使えない。なんとかなるだろう。

「いいよ」

運転席のシートをいっぱいいっぱいまで下げて、デカイ自分の身体をなんとか丸めこんで。
恥ずかしそうに両腕で顔を隠す晋助の制服のベルトを外して下着をずらし、キスだけで感じてしまったそこに唇を押し当てた。


END



え?ここで終わりなの?的な(汗)2人とも遅刻しなかったらいいね(苦笑)






















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