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1学期が、終わっちまった。

駆けていく短い季節


高校2年が中2の次に一番馬鹿だ、なんて言うやつがいるけど、それって絶対当たりだと思う。別に受験で切羽詰まってるわけじゃねェ、1年の時みたく慣れてないわけでもねェ。

でも、実は、だからこそ、これから始まる1ヶ月半の休みをどう使ったらいいのか、俺にはわからなかった。

昨年の夏休みは補習がいっぱい詰まっていたんだけど(単にサボりすぎた)、今年は回数を数えながらサボっていたから、補習は無し。期末テストの点数も、さほど悪くなくて、担任の銀八にどれだけ嫌味を言われたか。
まぁ、こういうところが高校2年なわけだけれども。

早く帰ったって、別にすることもなくて、俺は1人教室に残っていた。もちろん、もう、生徒なんて誰もいねェ。下手したら、教師だって帰ったやついるんじゃねェの?

仕方ない、どっか遊びに行くか。行くっつったってどこへだよ?そんなことを考えながらとりあえず教室を出たら、廊下の向こうの端から歩いてくるデカイ姿が見えた。

「ぉぉ、まだおったんか、高杉」

俺を見つけて駆け寄ってきたのは、今年から同じクラスになった坂本。なんだろ、たまたま同じ授業を同じ場所でサボっているうちに、なんとなくつるむようになった。昨年は、全く接点もなくて知らなかったヤツだけど、コイツと一緒にいるのは、別に嫌な気はしなかった。

「お前こそ、まだ残ってたのかよ?」
「わし、古典と数学、補習じゃき」

ほんで、呼び出しくらっちょってのぅと、照れ臭そうに頭を掻いた坂本。

「高杉、もう帰るんか?一緒に帰ろう」

バタバタと足音を響かせて坂本が廊下を駆けて行った。俺は、一緒に帰るだなんて一言も言っていないのに。…ま、いっか。アイツなら。

なんでかわからないけど、普通、俺の性格なら、アイツと同じ態度取られたらキレてるはずなんだ。だけど、なぜか、坂本だったら許してしまう、そんなことが多々あった。今だってそうだ。あんまり誰かとつるむのは得意じゃないのに、坂本となら一緒に帰ってもいいかと思って、しまった。

「待たせたのぅ」
行った時と同じように、バタバタ足音を響かせて戻ってきた坂本は。俺と同じで、ほとんど何にも入ってやしない鞄を小脇に抱えていて。

「高杉、ご飯でも食べて帰ろう」
「あー、そうだなぁ」

ほらな。ここで断りもしない自分なんて、どうかしている。だけど、何故だか、坂本ならいいような気がしてしまう。
俺自身、そんな感情の正体が自分でもわからないのだから困ったもんだ。

別にこう、普通の友達でも、クラスメートでもいいはずなんだけど、それだとなんかこう、むずかゆいと言うか。わかんねェんだけど。

坂本と俺は、普通に並んで正門から学校を後にして。行き先なんてどこでも良かったから、黙っていたら、坂本の方から、駅の近くのファミレスでいいか?と尋ねてきた。

「別に、なんでもいい」
俺の言葉を肯定と受け取ったか、坂本がそのまま、1階が駐車場になっているファミレスの階段を昇ってゆく。2人共、制服のまんまだったから、問答無用で禁煙席に案内された。

「わしはヒレカツ定食。ご飯大盛りで!」
身体の分だけは食うんだなって感心しながら、俺はエビグラタンを一つ。そんな、坂本みたいにたくさんなんて食べれねェ。

「もっと食べんと、おっきくならんぜよぉ」
「うっせ!」

身長のこと、言われるのは一番嫌なはずなのに。いつもの俺なら、とっくに殴り飛ばしてるはずなのに。

どうも坂本と一緒だと調子が狂う。
そんなこんなで、出てきたものを特に会話もなく食べ終わって。俺は、食後の一服を吸いたくなって、坂本より先にファミレスを出たんだ。

「高杉ィ」
「んァ?」

ファミレスの1階の駐車場の陰に座り込んでタバコをふかしていたら、食べ終わったのか坂本が降りてきて、当たり前のように俺の隣に腰かけた。

「のぅ、高杉ィ」
「…?なんだよ」

短くなった煙草をアスファルトに押し付けて見上げたら。目の前に坂本の顔があった。唇に、柔らかい感触。
目を見開いたまま、動けなかった。

「すまんのぅ、我慢できんかったぜよ」
「……なっ、な」

アッハッハといつものように笑いながら頭を掻いた坂本をポカンと見上げていたら、ようやく思考が目の前の現実に追い付いてきて。

「テメ、な、なにしやがっ…」
「嫌じゃったかの…?」
「…っ」

途端に笑顔が消えて、傷ついたような表情を見せる坂本。なんだそれ、俺が悪いみたいじゃねェかっ!

…って言うか。
一番問題なのは、今、坂本にされたキスが、嫌じゃなかった俺自身。
っつぅか、今のキスで、俺の中にあったモヤモヤした気持ちみたいなもんの、答が見つかってしまった。そんな気がして。

「…のぅ、高杉…?」
わざわざ背中を丸めて、下から俺を見上げるように、顔を覗き込んでくる坂本。

「わし、ずうっと、おんしのこと、好きじゃったんじゃ…」
「な、な…っ」
お、俺はっ!

退屈で、どうやって過ごしたらいいのかわからなかった夏休みが、違う色に見えてきた終業式の午後。
まだ、恋人とは呼べないかもしれないけれど。


END



鐺様に捧げまする。友達以上恋人未満のもどかしい坂高です。本当はお互い両想いなくせに、ヘタレとツンデレでお互いに言い出せないもどかしい坂高が、高階は大好きだったりするのです(苦笑)






















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