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放課後になっても仕事が残っていて。どうやら今日は、かなり遅くなりそうだ。

保健室の眠り姫


新学期が始まって、全校生徒の健康診断が終わったばかり。ここ数日は全生徒の診断結果を細かくチェックしてやることに追われていた。
急に視力が落ちた生徒、昨年と比べて体重や血圧に急激な変化が見られた生徒。
特に、3年生は内申書にも関わってくる問題だから、丁寧にチェックしてやらないと。
今日は、このクラスまで終わらせて帰ろうと、1クラス分の書類を机の上に乗せた時、保健室の扉がノックされた。部活で残っていた生徒が怪我でもしたのだろうか?

「高杉センセ」

扉を開けて、ひょっこり顔を見せたのは、社会科教師の坂本だった。

「俺はまだ仕事だ」

帰ろう、と言われる前にキッパリ言ってやる。毎日一緒に帰っているコイツは、誰にも秘密だけど、本当は俺の恋人。

「そんなの明日にするぜよー!わし、お腹空いたんじゃあ」

机に向かって仕事を再開した俺の首に腕を回して身体を密着させてきた坂本には、机の上から1冊適当に取った本で鉄拳を見舞ってやった。

「痛いっ!ヒドイぜよ晋!」
「高杉先生、だろ!俺はまだ仕事残ってんだよ!」

公の場では、きっちりけじめをつけるやつなのに、2人きりになるとすぐコレだ、坂本は。
いくらここが、放課後の保健室で、今は2人きりだとは言っても、ここは学校で、職場で、まだ部活動で残ってる生徒もいるわけで。

「その本でも読んでろ」

適当に取った本だったから、なんだかわからなかったけど。

「高杉、なんでこんなん読んどるんじゃ?」

坂本が心配そうな顔で差し出したのは、さっき俺が投げ付けた『リストカットする少女たち』。

「借りたんだよ、気にすんな」
「じゃけど…」
「…うるせェっ!」

ゴチャゴチャ話しかけてくる坂本を俺は振り返って怒鳴り付けた。

「いつまでも仕事終わんねェだろうがァっ!」

一緒に帰りたくて、わざわざここまで来たんじゃないのかよ!

「スマン…。わかったぜよ」

しょんぼりと肩を落として保健室の中程に置いてある長椅子に座る坂本。ちょっと言い過ぎたかな?

***

やっとのことで、1クラス分の書類を見終わった頃には、もう日はとっぷりと暮れ、外は真っ暗になっていた。
座ったまま身体を伸ばして、ずっと待たせていた坂本を振り返る。

「坂本、帰るぞ…坂本?」

コイツにしてはずいぶん静かだなと思ったら、坂本は長椅子に横になって眠っているみたいだった。
すぅすぅ寝息をたてて、長い脚をを長椅子からはみ出させて眠る坂本。新学期はバタバタするから、きっとコイツも疲れが溜まっているんだろう。それでも毎日、俺を家まで送ってくれて、朝は迎えに来てくれて。時々、坂本の家に連れて行かれるけど。

昨年の春、新任でこの学校に赴任してきてから、ずっと坂本には好きだ好きだと言われ続けてきて。最初はウザイ奴だなと思ってたけど、いつの間にか俺も好きになっていて。
もちろん、坂本は男だし、俺も紛れも無く男なのだけれど。

「坂本…坂本っ」

デカイ身体を揺すってやっても、坂本は全然起きる気配がない。
自分より背が高くて、肩幅が広くて手足も長くて大きくて。悔しいけれど、俺とは全然違っていて、悔しいけれど、それが全部、とてつもなく好きで。

「起きろよ、坂本」

長椅子の横に膝をついて、顔にかかっている前髪を掻き分けて顔を覗き込む。

「あー、意外と睫毛長ェ」

いつも見慣れているはずなのにな。

「さーかーもーと」

チュッと軽く、本当に触れるだけのキス。これで目覚めたら、コイツは眠りの森の美女か?いや、いくらなんでもこんなデカイ眠り姫、世間が許さねェだろう。
チュッチュッと啄むように口づけを重ねていたら、いきなり頭をぐっと押さえ付けられた。

「ふァっ…」

深く重なった唇を割って、坂本の舌が口の中に入ってくる。強く吸われて絡め取られて。頭を押さえられていなくても離れたくないと思った。

「ァっ…ふっ…」

ようやく唇が離された時にはもう、体重を支える膝に力が入らなくて。坂本の太い腕が身体を支えてくれた。

「ずいぶん積極的じゃの」
「う、るせ…!お前いつから起きてた?」
「睫毛長ェ、からじゃよ」
「!!」

言葉も出ない俺を軽く抱え上げて、坂本はベッドへと移動した。

「馬鹿かお前っ!ここは学校だっ!」

保健室のベッドは1人用なんだよ!大人2人、しかもお前みたいなデカイ奴が乗るようにはできてないんだよ!第一ここは学校で、俺達の職場でっ!

「大丈夫じゃろ」

喚いていたら、もう一度、唇を塞がれてしまった。

ベッドに押し倒した俺に口づけながら、坂本は俺のシャツのボタンを1つずつ外して行く。
馬鹿お前、学校だって!さすがにこんな遅い時間じゃ、自分達以外には、もう警備員しか校内には残ってないだろうけど。それでも、警備員が見回りに来るかもしれないじゃないか。

「んァ…っ、…んふっ…ァアッ」
「いつもより興奮しとるの?」

はだけさせられた胸の上を坂本の指が這って行くだけで、身体がピクンと跳ねる。

「違ェよ…っ!」

いつ警備員が見回りに来るんじゃないかって、ビクビクしてるだけだっつぅの!

「待ちくたびれて、もうわし我慢できんぜよ」
「ふざけんなっ!見回りがっ」
「大丈夫じゃよ」

ベルトに手をかけた坂本にスーツのパンツを引き下ろされた。

「おまっ、何が大丈夫なん、んんーっ!!」

また唇を重ねられて。ヤバイ、坂本のペースに完全に飲まれてる。だんだん気持ち良くなってきちまった。
まさかそんな、タイミング良く警備員が見回りに来ることなんてないかな、たぶん大丈夫かな、少しくらいなら、なんて思いたくなる。

手を伸ばしたら、坂本のベルトに当たって。俺はキスを受けたまま、夢中で坂本のベルトを外して下着に手をかけた。坂本も完全に大きくして、興奮してる。

「本当に今日は積極的じゃの」
「言うなっ、馬鹿」

坂本の首に腕を回してしがみついたら、下着を降ろされて中心を口の中に含まれた。

「んァっ…ぁアっ」

あんまり大きい声を出してしまったら。ここは1階の保健室で、警備員がいる、職員用玄関の隣の部屋からはけっこう近くて。だけど、両手で口を塞いでも声は止まらない。くそっ、上手いんだよなコイツ!

「ちょっと、待っとっての」

坂本は長椅子の下に置いていた自分の鞄の中から青いチューブのゼリーを持ってきた。

「お前、いつもそんなの持ち歩いてんのかよっ?」
「いんや」

今日はどうしてもしたかったもんじゃから、と坂本は照れたように笑って。俺は胸のあたりがきゅうっと苦しくなった。
確かに最近忙しくて、土日も仕事や部活でお互い学校に来ていたから、ゆっくり2人で過ごす時間は取れていなかったから。
脚を抱え上げられて、ローションを取った指が、ゆっくり身体の中に入ってくる。

「ア、んァっ、はァっ…」

静かな保健室に響く俺の喘ぐ声と秘部からの音。

「ァっ、坂本っ、俺も…っ」

なんとか身体を起こして、胡座をかいて座っていた坂本の股間に顔を埋める。限界まで張り詰めた坂本のモノを両手で取って唇を押し当てた。

(相変わらずデケェ…)

じゅぶっとか、ずちゅって音を立てて舌を這わせていくと、坂本が左手で俺の頭を撫でてくれた。
コレが俺の中にって、手と口を動かしながら考えるだけで身体の奥が熱く火照ってくる。

「晋、もうえいよ」

名前で呼ばれたことに反応して顔を上げたら、そのまま抱き上げられて唇を塞がれたまま、ベッドに仰向けに倒された。

「ほんに今日は積極的じゃの〜」
「ァっ、うっ、るせっ…」
「晋、えいか?」
(聞くんじゃねェよ馬鹿っ)

またキスされて、脚を抱え上げられて。指が引き抜かれる代わりにゆっくりゆっくり坂本のデカいモノが入ってくる。

「んアア…っ、…ァァァァァっ」

横を向いて、枕に顔を押し当てても保健室中に俺の声は響いてしまう。

「ァァ、た、つまァっ…」

普段学校では絶対呼ばない下の名前で呼ぶと、坂本はぎゅうっと抱きしめてくれて。

「奥まで全部入ったぜよ」
「ゃあっ、言う、なっ、…バカっ」

始めはゆっくりと慎重に様子を窺うように。だけど、次第に辰馬の腰を動かすスピードは早くなっていって。

「ァあっ、たつっ、…熱い…っ」

熱い、熱い、熱い。身体ん中が熱い。

「ヤっ…、なんかっ、ヘンっ」

いつもと違う。なんだコレ?

「晋…?」

耳元で名前を囁かれて。ビクンっと身体が反応してしまった俺は、そのまんま腹の上に白濁を撒き散らしてイってしまった。

「うわっ、なんでっ、俺こんな早くっ」
「久しぶりじゃからの」
(晋、カワイイ)

恥ずかしくて顔を隠していた両手を辰馬の首に回されて、繋がったまんま2人共起き上がる。

(晋のその顔見てるだけでわしもイキそうじゃよ)

身体がベタベタになるのも構わずぎゅうっと俺を抱きしめた辰馬に囁かれて。座位の体勢のまま揺さぶられて、深く深く中を突き立てた辰馬の熱いモノが脈打ってほとばしるのを、俺は身体の中に感じていた。

***

しばらくベッドの上で抱き合った後、後処理をしてスーツを着て。ベッドはあまり汚れていなかったからとりあえず今日はそのまま帰ろうと思う。

「よく見回り来なかったよな」

保健室を出る時にポツンと呟いたら、2人きりなのをいいことに、俺の鞄を持って手を繋いできた辰馬がいつものデカイ声で笑いながら応えた。

「実はのう、保健室行く前に警備員室寄ったんじゃァ」
「…はァ?」

意味がわからず口をポカンと開けたままの俺に、更に辰馬は続けた。

「今日は高杉先生遅いじゃろうから、邪魔せんでやって、って。仕事溜まっとるみたいじゃからっての」
「て…テメェっ!」

おもいっきり確信犯じゃねェか!そうか、だから俺が警備気にしてた時も何回も『大丈夫』だって。

「溜まってたのはテメェの下半身だろうがっ!」

俺の仕事なんかじゃなくて!

「じゃけど」

真っ暗な職員専用玄関で。靴を履き替えようとした俺の腕を引いて辰馬は囁いた。

「おかげで晋も興奮したじゃろ?」
「バっ…馬鹿野郎っ…」

誰かに見られるかもしれないって、興奮しちまったのは認める。だけど、なんだかそれに上手く乗せられてしまったような気がして。

「晋、帰ってご飯食べたらもう一回…」
「ふざけんなッ!!」

擦り寄ってきた坂本の顎に肘をお見舞いして。さっさと靴を履き替えた俺は先に玄関から出てやった。

(あ、俺の鞄持ってんのアイツじゃん…)
「待つんじゃ、晋っ!」
すぐに辰馬は俺を追い掛けてきて。

結局いつも通り、俺は辰馬の車の助手席を陣取って、俺達は一緒に帰った。
坂本の広いマンションに行くのでさえ久しぶりで、本当に最近忙しかったんだなって、そんなところでも実感してしまった。


END



大変お待たせ致しました(>_<)設楽様に捧げマス






















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