いつものように、午後から学校に行って、適当に終わらせて、辰馬の車で一緒に辰馬の家に帰る。
それから2人で夕食を食べて、俺はいつも通り、リビングのソファに横になってテレビをつけた。
片付けなんてしない。もちろん、料理だってしない。それは全部辰馬の仕事。
こうやって、入り浸るようになってから、それはずっと変わってなんかない。
「晋〜、お風呂沸いたぜよ〜」
「後でいい」
視線はテレビに向けたまま、素気なく答えると辰馬が目の前の床に来て、俺を覗き込んだ。
「珍しいの、バラエティなんて」
「見えねェ」
別に、見たくて見てるわけじゃない、なんて言えないから。俺は少し頭の位置をずらして、またテレビの画面に視線を戻した。
(あー、くだらねェ)
それでも、あと1時間。あと1時間だ。
「じゃ、わしも後でいいきに」
辰馬はドカっと、俺が寝そべって独占しているソファの前に座った。
「なんでだよ?温くなんぞ?」
「晋と一緒に入りたいんじゃ」
「馬鹿、狭いだろ」
いくらなんでも、男2人で、しかも身体のデカイ辰馬と一緒なんて、一般家庭の風呂場では狭すぎる。
「どうせくっついてるから平気じゃよ〜」
「馬鹿」
なんだかんだ言いながら、結局いつも一緒に入ることにはなるんだけれども。
俺は手を伸ばし、辰馬のからテレビのリモコンを取りあげて、チャンネルを回した。
いくらダラダラしてるだけとは言え、見たくもないテレビを何時間も見続けるのはけっこう苦痛だった。
数字を順番に押して行く指をニュースで止めた。
「またいじめかの」
ニュースの内容に反応した辰馬が呟いている。そう言えば、本当に最近多い。教師という仕事柄、この手のニュースがどうしても気になるんだろうと思った。
いつも生徒と一緒になって、担任が先頭になってガキみたいにはしゃいでる辰馬のクラスには、幸い関係ないだろうけど。
でも、俺が見たいのは、必要な情報は、今日のニュースなんかじゃなくて、画面の左上の数字。
あと少し、あと少しで日付が変わる。
ようやく明日の天気予報。
「晋、明日雨じゃって。屋上でサボれんのぅ」
「じやぁ明日行かねェ」
「たまには授業に出ぇ。銀八が嘆いとったき」
「知らねェよ」
俺の担任の銀八と辰馬は同僚で元々知り合いかなんかで仲は良いらしくて。俺達のことは普通に知ってるけど、そんなこと俺には関係ない。
ようやく、待っていた時間になる。俺は、辰馬に気付かれないように、静かにソファの上で上半身をだけを起こした。
あの数字が4つとも変わったら。変わったら、その時がくる。
「辰馬」
俺は、辰馬の首に後ろから腕を回して名前を呼んだ。
「晋…?」
不思議そうに辰馬が俺の腕の上に、自分の手を重ねてきた。
頼むから振り向くな、辰馬!俺は腕の力を強めた。
視界の端で、ついに4つの数字が全て変わる。
「誕生日おめでとう」
あまりに恥ずかしくて、辰馬の首に顔を埋めたまま呟いた。
「………んぜ」
好き放題にハネた辰馬の髪の毛がくすぐったいけど、今はとてもじゃないけど、顔なんて上げられない。
「晋…覚えとったがか?」
(当たりめェだ)
思った言葉は声にはならなくて。
「晋、こっち向いて」
「嫌だ」
俺の顔が、赤くなってるのがわかってるくせに、いや、わかっているからこそなのか辰馬が言う。
無理矢理顔をこっちに向けようとしてきたもんだから、首を絞めてやった。
「く…苦しいぜよ、晋っ!」
「お前が悪ィんだ、馬鹿」
そんなやり取りをしていると、テーブルの上の辰馬の携帯がやかましく鳴り始めた。
今は、まだ11月15日0時00分。マメなやつも、やっぱりいるもんだな。
一番最初に言いたかった。辰馬に誕生日おめでとうって。だからずっと、見たくもないテレビで時間とタイミングを計ってた。
どうやら、誕生日になった瞬間に辰馬にメールを送ってくる奴は1人2人じゃないらしい。
「お前の携帯うるせェよ」
コイツの誕生日を祝って、メールする奴がこんなにいるのかと思うと、なんだかだんだん腹がたってきた。
「わしの誕生日じゃからのー。でも」
一瞬の隙を突いて、俺の両腕を振りほどいた辰馬が後ろを向いた。
「なっ…」
慌てて顔を背けたけど、今のは絶対に見られただろう。
ふわっと、辰馬の両腕が俺の頭を包み込んで、俺はすっぽり、辰馬の腕の中に収まって。
「晋に言ってもらえたのがワシは一番嬉しいぜよ」
(馬鹿ヤロー)
辰馬の心臓の音がひどく俺を安心させる。
「晋、さっきのもっかい言ってくれんかのー?」
(…!!)
さっきの。
「ぜってェ言わねぇ!二度と言わねェ!」
「晋〜」
「うるせェ」
顔を上げて怒鳴りつけたその口を塞がれた。しかも、脳みそがトロけそうな程の深くて甘い口付けで。
「晋、ワシもう我慢できん」
「ちょっ、おまっ、風呂は?」
「後回しじゃ、後回し」
軽々と抱え上げられて、やっと降ろされた先はベッドの上。
「明日もまだ平日だからな、俺は知らねェぞ」
「晋が悪いんじゃよ。あんなかわいいコト言うから」
辰馬の口付けが降ってくる。
「晋、愛しとるよ」
そんなことわかってる。わかってるけど、辰馬はいつも言ってくれる。
(愛してんぜ)
俺は、心の中でだけ、さっきの言葉をもう一度言ってやった。
END
誕生日おめでとう
→オマケ。銀八先生からのメール
11/15(水) 0:01
⇒:銀八
Sb:(non title)
今日お前に頼んだプリント間違えたわ。明日正しいの渡すな。
そー言えばお前今日誕生日じゃねぇの?おめでとうさん!誕生日だからって明日休むんじゃねぇぞ。
ついでに隣にいるバカにも、たまにはマジメに来いって言っといて。提出物たまってんだろーって。
銀八先生には全部お見通し(笑)ちなみに、狙ったわけでもなんでもなく、たまたま用思い出したらしたらこの時間で、メール打ちながら日付見たら、辰馬の誕生日になってた、くらいの感じ。
銀八先生はね、高杉が全然学校に来ないから、進路希望の調査用紙かなんかを渡しといてくれって坂本先生に頼んだんですよ、きっと。
高杉は俺の手には負えないけど辰馬の言うコトなら聞くみたいだから、まいっかー、みたいなユルいノリで2人を放置する銀八先生。
温かく見守る…って程ではないな、たぶん。
でも、電話じゃなくて、わざわざ苦手なメールなのは「イタしてる最中だったらどうしよう」ってゆぅ優しい配慮(笑)
反省文
失礼致しましたー!!!
なんだコレ?無駄に長ェ〜!!!
1pで収まるはずだったのに!なんなのコレ、どういうコトよ!?(←知るか)
これが駄文ってやつなのね♪
辰馬の土佐弁に玉砕です。油断するとすぐ、偽関西弁か偽博多弁になっちまいます。
(でも高階、地元は北海道)
あ〜、それから、友達に突っ込まれる前に自分で言っておきます。
「シャワー○○はしなさいっ!!」
ハイ、意味のわからない方は、わからないままでいいでございます。ってか、たぶん知らないほうが普通だとおもいます(爆)
…とにかく、あんだけ主張してるんで、坂本先生×不良生徒高杉を書きたかったのですよ。
更に言うなら、晋ちゃんが後ろから抱き着いて「誕生日おめでとう」って、一番最初に言うってのが書きたかったんですー!
明日、坂本先生はちゃんと学校に行けるのかなー(笑)晋ちゃんは起きないよ、絶対(笑)
とりあえず、そんなこんなで、辰馬誕生日おめでとう〜★★
2006/11/15 高階千鶴
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BIRTHDAY EVE
片付けなんてしない。もちろん、料理だってしない。それは全部辰馬の仕事。
こうやって、入り浸るようになってから、それはずっと変わってなんかない。
「晋〜、お風呂沸いたぜよ〜」
「後でいい」
視線はテレビに向けたまま、素気なく答えると辰馬が目の前の床に来て、俺を覗き込んだ。
「珍しいの、バラエティなんて」
「見えねェ」
別に、見たくて見てるわけじゃない、なんて言えないから。俺は少し頭の位置をずらして、またテレビの画面に視線を戻した。
(あー、くだらねェ)
それでも、あと1時間。あと1時間だ。
「じゃ、わしも後でいいきに」
辰馬はドカっと、俺が寝そべって独占しているソファの前に座った。
「なんでだよ?温くなんぞ?」
「晋と一緒に入りたいんじゃ」
「馬鹿、狭いだろ」
いくらなんでも、男2人で、しかも身体のデカイ辰馬と一緒なんて、一般家庭の風呂場では狭すぎる。
「どうせくっついてるから平気じゃよ〜」
「馬鹿」
なんだかんだ言いながら、結局いつも一緒に入ることにはなるんだけれども。
俺は手を伸ばし、辰馬のからテレビのリモコンを取りあげて、チャンネルを回した。
いくらダラダラしてるだけとは言え、見たくもないテレビを何時間も見続けるのはけっこう苦痛だった。
数字を順番に押して行く指をニュースで止めた。
「またいじめかの」
ニュースの内容に反応した辰馬が呟いている。そう言えば、本当に最近多い。教師という仕事柄、この手のニュースがどうしても気になるんだろうと思った。
いつも生徒と一緒になって、担任が先頭になってガキみたいにはしゃいでる辰馬のクラスには、幸い関係ないだろうけど。
でも、俺が見たいのは、必要な情報は、今日のニュースなんかじゃなくて、画面の左上の数字。
あと少し、あと少しで日付が変わる。
ようやく明日の天気予報。
「晋、明日雨じゃって。屋上でサボれんのぅ」
「じやぁ明日行かねェ」
「たまには授業に出ぇ。銀八が嘆いとったき」
「知らねェよ」
俺の担任の銀八と辰馬は同僚で元々知り合いかなんかで仲は良いらしくて。俺達のことは普通に知ってるけど、そんなこと俺には関係ない。
ようやく、待っていた時間になる。俺は、辰馬に気付かれないように、静かにソファの上で上半身をだけを起こした。
あの数字が4つとも変わったら。変わったら、その時がくる。
「辰馬」
俺は、辰馬の首に後ろから腕を回して名前を呼んだ。
「晋…?」
不思議そうに辰馬が俺の腕の上に、自分の手を重ねてきた。
頼むから振り向くな、辰馬!俺は腕の力を強めた。
視界の端で、ついに4つの数字が全て変わる。
「誕生日おめでとう」
あまりに恥ずかしくて、辰馬の首に顔を埋めたまま呟いた。
「………んぜ」
好き放題にハネた辰馬の髪の毛がくすぐったいけど、今はとてもじゃないけど、顔なんて上げられない。
「晋…覚えとったがか?」
(当たりめェだ)
思った言葉は声にはならなくて。
「晋、こっち向いて」
「嫌だ」
俺の顔が、赤くなってるのがわかってるくせに、いや、わかっているからこそなのか辰馬が言う。
無理矢理顔をこっちに向けようとしてきたもんだから、首を絞めてやった。
「く…苦しいぜよ、晋っ!」
「お前が悪ィんだ、馬鹿」
そんなやり取りをしていると、テーブルの上の辰馬の携帯がやかましく鳴り始めた。
今は、まだ11月15日0時00分。マメなやつも、やっぱりいるもんだな。
一番最初に言いたかった。辰馬に誕生日おめでとうって。だからずっと、見たくもないテレビで時間とタイミングを計ってた。
どうやら、誕生日になった瞬間に辰馬にメールを送ってくる奴は1人2人じゃないらしい。
「お前の携帯うるせェよ」
コイツの誕生日を祝って、メールする奴がこんなにいるのかと思うと、なんだかだんだん腹がたってきた。
「わしの誕生日じゃからのー。でも」
一瞬の隙を突いて、俺の両腕を振りほどいた辰馬が後ろを向いた。
「なっ…」
慌てて顔を背けたけど、今のは絶対に見られただろう。
ふわっと、辰馬の両腕が俺の頭を包み込んで、俺はすっぽり、辰馬の腕の中に収まって。
「晋に言ってもらえたのがワシは一番嬉しいぜよ」
(馬鹿ヤロー)
辰馬の心臓の音がひどく俺を安心させる。
「晋、さっきのもっかい言ってくれんかのー?」
(…!!)
さっきの。
「ぜってェ言わねぇ!二度と言わねェ!」
「晋〜」
「うるせェ」
顔を上げて怒鳴りつけたその口を塞がれた。しかも、脳みそがトロけそうな程の深くて甘い口付けで。
「晋、ワシもう我慢できん」
「ちょっ、おまっ、風呂は?」
「後回しじゃ、後回し」
軽々と抱え上げられて、やっと降ろされた先はベッドの上。
「明日もまだ平日だからな、俺は知らねェぞ」
「晋が悪いんじゃよ。あんなかわいいコト言うから」
辰馬の口付けが降ってくる。
「晋、愛しとるよ」
そんなことわかってる。わかってるけど、辰馬はいつも言ってくれる。
(愛してんぜ)
俺は、心の中でだけ、さっきの言葉をもう一度言ってやった。
END
誕生日おめでとう
→オマケ。銀八先生からのメール
11/15(水) 0:01
⇒:銀八
Sb:(non title)
今日お前に頼んだプリント間違えたわ。明日正しいの渡すな。
そー言えばお前今日誕生日じゃねぇの?おめでとうさん!誕生日だからって明日休むんじゃねぇぞ。
ついでに隣にいるバカにも、たまにはマジメに来いって言っといて。提出物たまってんだろーって。
銀八先生には全部お見通し(笑)ちなみに、狙ったわけでもなんでもなく、たまたま用思い出したらしたらこの時間で、メール打ちながら日付見たら、辰馬の誕生日になってた、くらいの感じ。
銀八先生はね、高杉が全然学校に来ないから、進路希望の調査用紙かなんかを渡しといてくれって坂本先生に頼んだんですよ、きっと。
高杉は俺の手には負えないけど辰馬の言うコトなら聞くみたいだから、まいっかー、みたいなユルいノリで2人を放置する銀八先生。
温かく見守る…って程ではないな、たぶん。
でも、電話じゃなくて、わざわざ苦手なメールなのは「イタしてる最中だったらどうしよう」ってゆぅ優しい配慮(笑)
反省文
失礼致しましたー!!!
なんだコレ?無駄に長ェ〜!!!
1pで収まるはずだったのに!なんなのコレ、どういうコトよ!?(←知るか)
これが駄文ってやつなのね♪
辰馬の土佐弁に玉砕です。油断するとすぐ、偽関西弁か偽博多弁になっちまいます。
(でも高階、地元は北海道)
あ〜、それから、友達に突っ込まれる前に自分で言っておきます。
「シャワー○○はしなさいっ!!」
ハイ、意味のわからない方は、わからないままでいいでございます。ってか、たぶん知らないほうが普通だとおもいます(爆)
…とにかく、あんだけ主張してるんで、坂本先生×不良生徒高杉を書きたかったのですよ。
更に言うなら、晋ちゃんが後ろから抱き着いて「誕生日おめでとう」って、一番最初に言うってのが書きたかったんですー!
明日、坂本先生はちゃんと学校に行けるのかなー(笑)晋ちゃんは起きないよ、絶対(笑)
とりあえず、そんなこんなで、辰馬誕生日おめでとう〜★★
2006/11/15 高階千鶴
No reproduction or republication without written permission.